預かっている鉄道時計の歩度調整を行うため、ついにタイムグラファーを購入を決意。若干、買っちまった…買っちまったぞおい…と後戻りできない部分まで踏み入れている気がしたが、いつかは買うことになると考えており、時計修理を続けるなら絶対に必要になるものなので、夏のボーナスの魔力に捕らわれている今が購入の最適なタイミングだった。

まずは説明書を読みながら、スピードマスターにてタイムグラファーの扱い方を勉強。特に複雑な設定はなく、電源を入れて時計をセットすれば、自動的に計測が始まる。クォーツ時計やスプリングドライブは計測できなかった。
歩度を見るだけでも、時計の様子が見えてくるので、ぜひご相談を。>会社時計部
説明書を読んでいたところ、パソコンと接続することで、モニター上で見ることや、計測データを保存できるという。こんな好都合なシステムはないので、さっそくソフトをインストールして準備よし。いよいよ本番。鉄度時計をタイムグラファーにセットして、計測開始。びぶ朗では二重線が表示されていたが、はたして。

びぶ朗と同じく、二重線で右下がりのグラフが表示されている。

そして数値データ。びぶ朗では分からなかった、振り角や片振りの状況が見えてきた。21,600Hzの振動数は正常ながらも、一日あたり1分41秒の遅れがある。振り角は134°とかなり低く、テンプの修正をするにしても、道具が揃っていない今回は手出しできない部分なので、今後の課題。片振りも1.3msとなっていて、ここを調整で追い詰めていく。

タイムグラファーにセットしたまま、テンプのヒゲ持ちの位置を少しずつ動かしていき、片振りを無くしていく。勉強ネタとしては好都合なので、動かす量と位置で、グラフがどのような変化を示すのか。一つひとつ見ながら調整を続ける。続いて、緩急針を動かして、進み遅れの調整に入る。
調整にエラく時間を食ったのが、この進み遅れの調整。文字板を上にして置いている状態ではプラス(進み)方向で落ち着き始めたが、鉄道の運転台に置いた状態(12時が上で、後方に僅かに傾いた姿勢)では、妙に遅れが出てしまう。急いで調整してもダメなので、文字板を上にした状態と運転台に置いた状態の両方で納得できる精度を見つけ出していく。

僅かばかり、進みの方向に調整してみた。分解前に比べても、ずいぶんとまともなグラフになったと思う。長期的にはプラス側ながらも山と谷が出来上がるグラフが続くので、もう少し直線的なグラフにしたいところ。ここからさらに追い込みを掛けてみるか。

調整後の数値データも、良好な数値が表示されていた。
タイムグラファー、安い買い物ではなかったが、入手して正解だ。計測しながら調整できる点が強く、ずいぶんと作業しやすくなった。遅れや進みといった現在のコンディションが、リアルタイムで目に見えるため、姿勢差を計測するだけでも機械式時計の奥深さをより知ることができる。ますます機械式時計が面白くなってきた。
今まで使っていたびぶ朗では、時計を万力に強く押し付け、マイクのボリュームを調整しながらの計測、時計本体をいじるために万力から一旦外す(万力から外した以上は、マイクのボリューム再調整も有)…ということを繰り返していた。何をするにしても万力から時計を外すために同じ計測条件にならず、データの信頼性も悪くなる弱点もある。特殊な用途において、専用機械を入手して使ったほうが早く済む点は、自動車整備におけるSST(Special Service Tool)と同じかもしれない。
スマホのアプリでもタイムグラファーがあるようだ。ただ、磁気を発しているスマホに機械式時計を載せて(近づけて)計測するなんて、狂気の沙汰にしか見えないのは私だけではあるまい。