この年齢になってくると全員が全員、無事に生き延びているとは限らない。不幸にして事故や病気などで亡くなる者も居ることになり、そんな一報が入ってきたのは昼前のことだった。長らく入院していた会社の同期が亡くなった。身近な人間が死ぬとはもちろんショックだが、それ以前にああやっぱり…という複雑な思いがあり、そもそも親より先に死ぬとはどういうことだ?と、「親より先に死ぬんじゃねぇよバカ!!」。
彼の場合、早くから糖尿病を患っていた。炭水化物が大好きで、もはや依存症に近いものがある。休みとなればどこかのラーメン店に繰り出し、さらにはあちこちの店舗をハシゴするような食生活を何年も続けていた。特に家系ラーメンが好きで基本大盛り、トッピングはしこたまチョイス。これに飽き足らず、持ち帰り用の家系ラーメンセットを自分で茹でるような具合。
医者からは何度も「ラーメンは控えるように」と言われて、それこそ怒られてもいたようだが、「ラーメンがダメならパスタを食べればいいじゃない」とフランス語の有名ジョークを地でいくスタイル。勤務日の昼食は、カップラーメンだったりする。して、急激な血糖値の変動による強烈な眠気で、業務中に寝てしまうことはほぼ当たり前。
糖尿病からくる喉の渇きを要因として、水分補給もまた段違い。甘味がある飲料でないと受け付けないようで、ポカリスエットイオンウォーター、天然水のクリアレモン、ノンシュガーのカフェオレといったものを毎日2~3リットルは飲んでいた。しかし、トイレに行くような素振りは見せず「便所に行く様子は無かったね、そういえば」。
足先を切っているのに気づかないとか、傷口から感染症に陥って発熱が続くといった糖尿病の典型的症状を繰り返していたが、事態が変わっていくのが今年の春。臀部(ケツ)にできたおできを遠因として、細菌による感染症が一気かつ急速に発症。即入院で手術になり、恐らくは壊死性筋膜炎の一種だろうが、肛門を含めた臀部周辺の壊死した筋肉等を摘出。寝たきりのオストメイトになってしまう。
当人は、うまいものや好きなものを食べ、早死にでも構わないという態度を改めなかった。こう口にする人間は、スパッと死ねると捉えがちだが、日本の医療を舐めてはいけない。患者を死なせぬよう、あらゆる手段を使って生かしていく医療技術は世界最高クラスだ。入院と寝たきりで、さらに傷口が塞がらないので輸血が続く。満足にものを食べられない日々に、むしろ苦しむことになる。
0.1tオーバーの体重を誇っていたが、見舞いにいった上司は「骨と皮しかなかった」とあまりのギャップに口数が少ないのが印象的だった。極太だった手や足も、筋肉のスジが浮き上がるほど細くなっている様子だ。
一緒に入社して、一緒に仕事して、一緒に怒られて。夜勤では「夜ダメなんでしょ?寝てていいよあとやっておくからー」と何度も助けられたっけ。立場や組織が違っても誰でも仲良くなってしまう素質は、実に羨ましいものがあった。どうかあの世でも、ラーメン仲間を見つけてずっとずっと楽しんでほしいものだ。今はただ、冥福を祈るのみ。