『ムーブメント』とは時計の機械体をイメージするが、オルゴールの機械体もムーブメントと呼ぶそうだ。ぜんまいを収める香箱があって、いくつもの歯車でエネルギーが伝達され、速度調整機能まであることから、どこか時計の原理に通ずるものがある。
オルゴールを動かすにしても、スムーズな演奏ではなく、ぜんまいや歯車のコンディションから速度が微妙に狂い、櫛歯の当たり具合から音がズレていることなんて珍しくない。その完璧な演奏ではない、機械ゆえのちょっとした個性的なところが、惹かれる部分の一つ。いつのころかは覚えていないが、遠い昔にオルゴールという機械集めに凝ったことがあり、同じ演奏を行うオルゴールでも、ムーブメントの出来によって全く違う演奏になることは気づいていた。
ときどき動かさないと、ぜんまいや歯車たち、櫛歯が傷んでしまうという点では、やはり精密機械の一種。音楽を奏でるために造られた機械なのだから、動かして演奏させることが長期維持の第一歩になるそうだ。振り返ってみれば、集めていた当時はただ単に機械集めの一環であり、維持やメンテナンスを考えるようなことは無かった。時間の経過と共に、櫛歯の錆や歯車の損傷で演奏できなくなり、その殆どが廃棄というオチになった。
現在までに残っているオルゴールを壊すわけにはいかず、さっそくメンテナンスを始めることになった。ぜんまいを巻くタイプは完全に巻いて解けるまで演奏し続け、歯車の回転具合、櫛歯やシリンダーの調子を見ていく。ぜんまいが解けたら、シリンダーの突起がないところで回転を止めておき、櫛歯が触れないようにしておく。

中にはモーター駆動タイプのオルゴールもある。こちらは配線やハンダの具合を含めたチェックが必要となる。シリンダーにセットされている曲はハイケンスのセレナーデで、極めて思い出深い曲が演奏される。櫛歯がシリンダーの突起を弾く際に鳴るノイズも含め、癒しの曲となっている。












