精度調整、どうしろと?

シチズン ホーマーの精度を調整するには、テンプの緩急針調整装置を動かす必要がある。タイムグラファーでの計測では進み傾向があり、ついでに片振りも出ていて、調整は必須。

ホーマーのテンプ周辺は、いまどきの機械式時計では見られない構造をしている。

シチズン ホーマーのテンプ

よく見る構造に思えるが、別の機械式時計と見比べると、よく分かる。

鉄道時計のテンプ

このように緩急針とヒゲ持ちは、共にスライドさせて動かすことができるが、先のホーマーでは緩急針はあるものの、ヒゲ持ちがテンプ受けに固定されていて、スライド調整ができない構造だった。

さらに調べてみると、片振りの調整をするにはテンプの軸に備わっている『ヒゲ玉(テンプの中心部)』をmm以下のレベルでズラしていくそうだ。ヒゲ玉をズラす?

ヒゲ玉をいじれというのか!?

ここか!テンプだけをバラして、ヒゲ玉の溝を発見することになった。調整するにはテンプをいちいち取り外してヒゲ玉を動かし、再び組み込んでチェックし…という正規手段か、待ち針レベルの薄いマイナスドライバーを自作し、隙間に突っ込んで捻るような手段しかないらしい。

さすがアンティーク時計。完全に参った。

ホーマーのムーブメント、組み立て完了

一ヶ月ぶりのシチズン ホーマーの記事。分解したホーマーのムーブメントはサビと摩耗が見つかり、歯車のホゾ(軸)が折れているという、散々な状況だった。そこで部品取りとなるムーブメントを入手し、使える部分とダメな部分をチェックして、一つのムーブメントに仕立て上げる、ニコイチ作戦を実行することになった。

部品取りとなったホーマーのムーブメントは、19石仕様。オーバーホール中のムーブメントは17石仕様なので、石の数が違う。セイコーと違ってシチズンのモデルは妙に資料が少なく、部品の選別中は石の数が異なれば、歯車の違いもあるのではないか?という懸念を抱き続けることになった。万一歯車が違った場合、改めて17石仕様のムーブメントを探すことになる。

分解して比較した結果、石の数の違いは、ムーブメント上の耐震装置の有無によるもので、歯車そのものは17石と19石で共通品だったことが分かった。

17石仕様の輪列受け

まず、こちらはオーバーホール中の17石仕様の輪列受け。紫色のパーツが、歯車のホゾがセットされる石…軸受け。

19石仕様の輪列受け

部品取りとなった19石仕様の輪列受け。写真中央の石に、金色の輪が装着されている。先の17石仕様と比べても、見た目からしても大きな違いがある。これがシチズンのパラショックという耐震装置で、二つの石とバネを組み込むことで、振動を吸収するようになっている。

この耐震装置で保護される歯車は、ガンギ車。規則正しい運針を作り出す歯車で、機械式時計特有のチクタク音が鳴り響く源。衝撃に耐えるため、テンプだけでなくガンギ車まで耐震装置を組み込んでくるとは、ヘリコプターから落としても壊れなかったという伝説が納得できる。

17石仕様の地板

続いて地板、17石仕様。写真中央の石にガンギ車がセットされるが、こちらは普通の石。

19石仕様の地板

19石仕様になると、耐震装置付の輪列受けに対応して、地板側にも耐震装置が組み込まれる。もしもオーバーホールをしているのがこの19石仕様、さらに上位機種の21石仕様だった場合、これら耐震装置まで分解して洗浄、注油をしなければならず、この点では17石仕様で助かった。

17石仕様と19石仕様のムーブメントをそれぞれバラし、耐震装置のメカニズムに感動したところで、ニコイチ組み立てとなる。テンプに組み込まれているパラショック…耐震装置も分解して、しっかりと注油する。セイコーのムーブメントに比べ、歯車のホゾが石の穴にスポッと入る感触がハッキリと伝わって組み立てやすく、輪列受けの装着も一分と掛からなかった。棒状のモノが穴に入る感覚は、何事も快感が伴うもの。

ニコイチで復活したホーマーのムーブメント

こうして組み立てられた、シチズン ホーマーのムーブメント。さっそくゼンマイを巻いて、一発目のランニングテストを行う。鈴のような澄んだ音色を発しながら、心地いいビートを刻むテンプは、スポークが写っていない。このまま数日間掛けて連続的に動かし、各歯車やゼンマイに負担が掛かっていないか、チェックを続けていく。

ラグ穴の修繕

シチズン ホーマーの外見上における不具合は、風防の割れ、カン穴(ラグ穴とも、以下ラグ穴)にバネ棒の先端が詰まっていること、そして文字板表面の損傷といったところ。文字板の修復、リダンは完全に専門外なので、除外するとして。

今回は、ラグ穴にバネ棒の先端が詰まっていて、ブレスやバンドのバネ棒が装着できない状態を修繕することになった。まずは作業前の状況から。

折れたバネ棒の先端が穴の中に!

このとおり、穴の中に金色に輝くバネ棒の先端がハマっている。折れた破片が穴の内側に刺さることで、それが釣り針のかえしと同じ状態になってしまい、突いたりする程度では取ることができない。

仕事上では、折れてしまったネジやボルトを抜き取る作業が日常的にあり、穴の修正は慣れているが…。時計の穴になると、実測1.02mm程度で、応じてドリル刃も細いものになる。もしも刃を穴の中で折ってしまえば、ますます困難な事態に陥ることは目に見えているが、手を出した以上は覚悟を決めてやるしかない。

傷防止の養生テープ

刃物を扱うことや切り粉が出てくるので、養生テープを貼っておき、余計な傷を入れないように防御しておく。ドリル刃を装着するピンバイスは、RCカー用の工具箱の中にある。車(四輪二輪)、自転車、RCカー、時計、それぞれが必要とする工具は、相互に使うことが多い気がする。

詰まった穴を再確認

もう一度、穴に詰まったバネ棒の先端を確認する。以前のような金色の輝きがなくなっている背景として、ケースを水で洗浄しており、異種金属の接触と水分による、電食が考えられる。良くない状態に陥っていることは間違いないので、慎重にドリル刃を当てて、少しずつ穴をもんでいく。

金色の細かい切り粉がポロポロ出てきて、順調に進む。ある一定の深さまで達したところ、急に手応えがなくなった。詰まっていたバネ棒の先端は、全て切り粉として粉砕したようだ。

破片除去完了

このとおり、無事にラグ穴から詰まっていたバネ棒の先端を除去することができた。穴の中をブロアで入念に清掃し、破片や切り粉をしっかりと除去する。写真をよく見ると、穴の中に残る円形の破片が撮影されており、これはバネ棒先端のメッキ部分。ブロアでクリーニング中に、ボロッと出てきた。

バネ棒をセットして、固定を確認

バネ棒をセットしてみて、大きなガタつきや抜けがないか何度も確認し、正常な状態、将来的にブレスやバンドをセットできるところまで修繕することができた。

時計修理における、数ある山場をまた一つクリアし、同時にリペアスキルもゲット。これが面白い。

ホーマー、分解完了

いよいよシチズン ホーマーのムーブメントを分解することになった。リューズが固まって動かず、ゼンマイを巻くことができない原因は見つかるだろうか。

日ノ裏車の錆

分解する前から分かっていたが、日ノ裏車が変色している。この状態でもリューズを引いて時間調整はできていたので、固着はないようだ。

地板とツツ車にも錆

日ノ裏車を外すと、地板にも変色がある。錆の粉を巻き込んだまま、石臼のように粉砕しながら回転したことで、変色が広範囲に広がることになった。ツツ車にも変色がある。

なお、分解前は錆と思われていたこれらの変色は、どうやら汚れ由来の錆だったらしい。筆による洗浄、歯の隙間の変色は針で突いて除去することで、ほぼ元通りに戻すことができた。

日ノ裏車押さえは使用不能

ただ、いくつかの部品はダメになっているのが見つかり、例えばこれは日ノ裏車押さえ。錆で鉄の表面が破壊され、欠けている。

三番車のホゾ折れ

こちらは三番車。ホゾ(軸の先端)が折れてしまい、正しい回転ができなくなっていた。折れたホゾは軸受けとなる石から出てきて、幸いにも他の部分へ悪影響を及ぼすようなことは起こしていなかった。

本場の時計師は、歯車の折れた部分の根本を研磨して穴を開け、ホゾ用の素材を圧入、軸の整形にて修正を行うそう。開ける穴は0.1mmレベルの小さなもので、圧入も緩くなく、キツくなく、ちょうどいい状態を見つけ出すという。

錆の粉

シャーレの中でムーブメントを洗浄していると、錆がどんどん出てくる。洗浄油を揮発させ、残った錆を集めてみるとこの量だ。分解と洗浄が終わったムーブメントはしばらく乾燥させて、後の各歯車の点検と組み立てに備えておく。

ダメな部品が見つかったため、予定通り部品取りのムーブメントも分解することになった。ドナーとなる以上は、問題がないことを願うばかり。

swatchの電池交換

朝っぱらから「腕時計が止まってました」と持ち込まれたのが、swatchの腕時計だ。

swatchは、スイスThe Swatch Groupのブランドの一つで、このグループ内にブレゲやオメガ、ロンジン、ティソといった聞き覚えのあるブランドが属しており、このスウォッチもブランドの一角となっている。私もThe Swatch Groupの時計を使っているだけに、妙に親近感を覚えるもの。「こいつはいい時計だぞ!」とすかさず言ったほどだ。

電池交換を行う前に、問診を含めて状態チェックからスタート。所有者曰く、学生時代から使い続けているとのことで、ケースやブレスは経過年数に応じた傷み具合がある。風防にもクラックが入っていた。日付からして、止まったのは連休中らしい。

Swatch Ironyシリーズ

Swatchの腕時計は、プラスチックのケースで仕上げられたものが主体だ。このSwatch Ironyシリーズは、Swatch=プラスチックという常識を覆して、Iron…メタルでできている。クロノグラフモデルとなれば、決して安くはない。

ケース裏面の電池蓋

ケースの裏面から電池交換することになるが、Swatchの裏蓋側は極めて特徴的。電池ボックス用の蓋があるだけで、それ以外のものはなし。『基本的にSwatchの腕時計は分解修理しない』という、割り切った性格がここにある。

普段の電池交換作業では、ムーブメントとケースを分離して、風防裏側の簡易清掃を同時に行うようにしているが、Swatchの性格に従うようにして、分離作業は行わない。電池交換だけを行う。

電池交換歴あり

Swatchの時計といえば、RENATA製の電池とセットになっていて、電池切れを起こすとあっという間に液漏れし、ムーブメントをダメにするというイメージしかない。最悪の事態を考えつつ、事前診断で電池ボックス用の蓋を開いたところ、マクセル製(日本)のSR936SWがセットされており、この点では一安心。

電池に書かれた28 7.31という表記から、平成28年7月31日に電池交換を行ったことが予想される。それから2年半で電池切れを起こしているとすれば、ムーブメントもだいぶ疲れてきているのかもしれない。

電池蓋の溝の汚れ

ただ単に同じ型番の電池をセットする前に、蓋の溝に大量に付着している垢をクリーニングしていく。蓋のパッキンに垢が噛み込んでしまうと、防水性の低下や湿気が侵入しやすくなる等、ロクなことは全くない。電池交換してハイ終わり!ではない。

清掃完了

清掃完了。新しい電池をセットし、運針とクロノグラフの動作チェック…良好。電池ボックスの蓋の縁に専用グリスを忘れることなくしっかりと塗布し、防水性を確保しておく。

電池交換を終えたSwatch Ironyシリーズ

正常復帰したSwatch Ironyシリーズ。リューズによる時間調整機能とカレンダーディスクの動作チェックを行い、変な感触や異音はなく、全て異常なし。このまま一晩運針させて、返却となる。おまちどうさま。

ドナーがやってきた

現在まで、シチズンホーマーの修理は全く行っていない。ちゃんと理由があり、手を付けていないのではなく、待ち続けていたためだ。

ダメになった部品が入手できないとなれば、時計師なら旋盤で部品を作り出すのだろうが、こちらは趣味の一環、手先をより器用にするための訓練として修理を行っている。ダメになった部品は移植していくしかない。ドナーとなるムーブメントが出てくるまで、ひたすら待つことにしていた。

それこそ、ブラックジャックの『白葉さま』のワンシーンにあるように、期間を設けることなく「待つ」ことを決め込んでいた。

シチズンホーマーは、国鉄時計に採用されていた経歴があるので、中古市場では高値安定の相場となっている。そんな環境の中で、ときどき相場から大きく外れた値段で出品されることがあり、これはヤフオク、メルカリ共に同じ傾向がある。いわばお宝が出てくるまで、何ヶ月でも待つことを覚悟していたら、あれよあれよと物事が進んでしまい、あっという間にシチズンホーマーのムーブメントを入手することができた。

シチズンホーマーのムーブメント

必要となるのは日の裏車、日の裏車押さえ、香箱車。後々、これらの部品を移植するとして、まずは部品取りムーブメントが精度問わず、24時間以上動き続けるか、分解前診断からスタートしたのが、昨夜の出来事。

18,000bphのロービートで、ゆったりとしたチクタク音の中に、微かに「リンリン」もしくは「キンキン」という鈴のような音色が鳴っており、オメガ、グランドセイコー、セイコー、オリエント、ロレックスと機械式時計の音を聴いてきた中では、トップクラスのいい音だ。レシピエントとなる移植先のムーブメントで、同じ音が出せるかどうか。

ケース分解完了

ケースの分解と基本洗浄も完了。アクリル風防は無事に外れたが、代替品の選定をどうするか。

死に至る錆、そして

シチズンホーマーのケースを修復案を考えている一方で、ムーブメント本体の具合も診なければならない。というわけで、針と文字板を外したところ、茶色に変色したギア類…錆でムーブメントが腐食し始めていたことが分かった。

錆まみれの日ノ裏車

錆びている歯車は、日ノ裏車。現状では、リューズによる時間調整は行えることから軸の固着までは起きておらず、表面が錆びているだけと考えられる。さらに、錆の粉がムーブメントのあちこちに飛散していることも判明。

これが車のフレームなら、軽く研磨して錆を落とし、防錆剤と塗装でごまかすのだが、時計の歯車だとそうもいかず。錆を落とそうと下手に研磨すると、ただでさえ薄い歯車本体の痩せや歪みに繋がってしまい、スムーズな運針を妨げてしまう。歯車の状態から、各歯車のほぞ(軸の先端部分)が健全性についても、怪しくなってくる。

17石仕様のムーブメントがあれば、部品取りを行う移植作業で復帰できる望みが出てくる。このムーブメントは19石、21石と派生型があるので、それらの違いを調べることが続きそう。セイコーの古いムーブメントは資料がけっこう見つかるが、シチズンは妙に少ない気がする。

外装の清掃、完了

調査のためにお借りしている、シチズンホーマー。長年の使い込みで、外装には手垢由来の茶色の汚れがたっぷりと付着していた。整備の第一段階は、入念な清掃から。

外装清掃が終わったケースその1

風防の縁に付着していた汚れは、あらかた落とすことができた。

外装清掃が終わったケースその2

ケースのカン部分に積もっていた手垢も、キレイさっぱり。

次は風防の取り外しと、カンの穴に食い込んだままとなっている、折れたバネ棒の先端を除去、エナメル文字板のクリーニング…と、ローペースで作業中。ケースの修復については、無理やり手を出して壊してしまうなら、時計屋さんというプロへ外注するのもあり。

シチズン ホーマー

レイのGP5氏:「ウチにシチズンのホーマーって時計がありまして」
私:「ホーマー?それって確か、えっらい古いやつじゃね?」
レイのGP5氏:「そうです。爺さんの形見なんですが、リューズが硬くて巻けなくて」
私:「なんだそりゃ。ちと診てみようか。持ってきてくれる?」

というわけで、レイのGP5氏の家で保管されていた、シチズンの手巻き式腕時計、ホーマーがやってきた。確かにリューズが凄まじく硬く、ゼンマイが完全に巻き上がった状態のまま固着しているような感覚だ。無理に扱うと、香箱内部のゼンマイが切れてしまう恐れがあり、慎重な初診となる。

シチズンホーマー

裏蓋のシリアルナンバーから読み取れる製造年月は1964年4月。内部が入れ替わっていなければ、54年9ヶ月が経過している。東海道新幹線は開通しておらず、東京オリンピック前。アポロ宇宙船は、まだ一機も飛行していない。そんな時代の腕時計。

シチズンホーマーは、旧国鉄の鉄道時計として制式採用されたモデルがあり、そちらのほうで有名。エナメル仕様の黒い文字板かつノンデイトのホーマーはレアモノらしく、リファレンスの特定ができるような資料は現在のところ全く発見できず。

文字板に『PARASHOCK』と書き込まれている。遡ること1950年代、高度30mのヘリコプターから落として、壊れない構造を国内で初めて搭載したシチズンパラショックに至る。そんな耐震装置を内蔵していることを示している。

カシオのG-SHOCKが、3階の便所(10m)から落として壊れないような耐久性をアピールしていたのが1980年代前半。シチズンは、それよりも30年以上前に、G-SHOCKの3倍となる30m(オフィスビル換算7から8階)の高さから落としても壊れない機械式時計の設計に成功していたあたり、設計と技術の凄まじさがよく分かる。

風防はアクリル製で、さすがに半世紀以上の経過年数で大小さまざまなクラックが入っているが、ガラス風防のように次々に欠けてしまう恐れはない。風防の周囲の茶色い変色は、全て手垢。

折れたバネ棒の先端が穴の中に!

ケースを細かくチェックしていくと、ケースのカンの穴に折れたバネ棒の先端が食い込んでいるのを発見。これを除去するには、ドリルで穿り出すしかないが、極めて厄介な状態に陥っている。

裏蓋にはペルラージュ模様

ペルラージュ模様が施された美しい裏蓋。ケース表面の具合から、ムーブメント本体が錆だらけになっていることも予想していたが、幸いにして金属の輝きを放っている。ただし、固定リングやケース内側に錆が出始めているあたり、軽く研磨して整えてあげたほうが良さそう。

18000bphのロービートムーブメント

ムーブメント本体を目視チェック。手巻き時計の標準的な構造をしており、見慣れた光景。18000bphのロービートで、ガンギ車とアンクルから発せられる音は、本当にいい音だ。ただし、テンプの動きが極めて重たく、油切れを起こしているか、天真(軸)の曲がりや磨耗まで予想される。

なぜ、ゼンマイが巻けないのか。これを解明するには分解して調査するしかないが、巻かれた状態で固着していた場合、ゼンマイにエネルギー(トルク)が蓄積されたままなので、何も考えずに解放すると暴走してしまい、周辺部品を傷めてしまう可能性がある。

直す直さないよりも、初めてのシチズンの時計だけに、耐震装置の構造や時代背景等をじっくり勉強させてもらうことになった。まずは手垢がびっしり付着している、ケースをキレイにすることからスタートだ。

メイクは利かない!

時計修理活動、開始。

いよいよOMEGA DE VILLEの文字板と針をセットする。40年モノのエナメル塗装なのでストレスに弱くなっており、傷なんざつけたら完全失敗となってしまう。文字板は100円硬貨程度の大きさしかないため、一工程毎に小休止を挟み、ここ一発の集中力を最大限に発揮させる。

文字板は時計の表情、そして顔であり、この部分の出来栄えで時計の雰囲気全てが決まる。メイクによるごまかしは一切利かない、すっぴんこそ唯一の生命線。

文字板セット

セット完了。分解前は1970年代当時の設計、加工精度からか、文字板の中心穴が真(軸)と僅かにズレていたが、装着時の位置調整を行うことで、ほんの少しだけズラすことができた。

続いて、太さ1mmもない短針と長針を装着する。針の塗料が弱くなっているため、ピンセットで傷を入れないよう、慎重に、慎重に。

長針と短針を揃えてセット

よしきた。デイデイト仕様ではなく、ついでに秒針もないモデルなので、12時のタイミングで針が完全に重なるようにすればよく、このあたりは少しだけ気楽。

リューズで針をグルグル回転させて、インデックスバーへの干渉や長針と短針が衝突しないか、入念にチェック。具合は良さそうだ。

オメガは10時8分

10時8分にセットして、Vマーク。作業中の緊張から解き放たれた瞬間だった。ケースに組み込んで数日掛けて実際にランニングさせ、スムーズな運針を確認してから返却となる。