今日はカシオ データバンク・ツインセプトのチェックだ。このモデルについては「こんな感じの時計がある」という旨で見せてもらうために同梱されたもので、特に点検の依頼は入っていない。ただ「電池の寿命が近いのか、液晶が薄い」と気になる一言もあった。
外観を見直したところでは、20年以上前の時計にも関わらず、キレイな状態を保っており、ケースやバンドの加水分解も起きていない。

裏蓋には手首の垢由来の汚れが溜まっており、これが錆の原因になるのでクリーニング決定。まずは裏蓋をケースから外す。

ムーブメントを見る。データバンク・ツインセプトはデジアナモデルで、アナログ時計用のメカが中央にセットされている。右側にある灰色の円筒形の物体は、ELバックライト用のコイル。1.55Vの電源から、バックライトの発光に必要な電圧まで昇圧する。
ケースからムーブメントを取り出そうと思ったが、ムーブメントとデジタル時計部の接続方法が全く分からず、冒険はしないほうがいいということで、ここで折り返し。
さて「液晶が薄い」とは電池切れが近いのだろうか。念のため電池をチェックする。

ん?誰だお前!!指定品とは異なる電池がセットされていて、二つのSR927SWがあった。一般流通品よりも液漏れしにくいという、セイコー純正の電池(高級品)を使っている点は素晴らしいが、なぜ指定外の電池を使っていたのか。そして気になる部分がもう一つ。

裏蓋の固定ネジが、一本だけ明らかに異なるものがセットされていた。これはどういうこっちゃ?
一般人がセイコー純正電池を買うとなると非常に高価で、販売ルートも限られてくることから、過去のメンテナンスは街の時計屋だったのだろうか。間違ったネジを使って蓋を閉じられている点も気になるところで、いろいろと想像が膨らむ部分。

SR927系だけでなく時計用ボタン電池には、SWとWの二種類が存在する。SWはアナログ時計向きで、低負荷環境を想定。対し、Wは多機能なデジタル時計向きで、時計以外の機能で大電流を要求されるような、高負荷環境を想定している。SWとWを入れ替えると、誤作動や電池寿命が短くなるデメリットがあり、基本的にはムーブメント指定の電池を使うのがベスト。
写真のように、Maxell製のボタン電池のパッケージには、SWならアナログ時計のイラスト、Wならデジタル時計のイラストが描かれているので、用途がイメージしやすくなっている。

指定電池のSR927Wをセットしたところ。「液晶が薄い」原因は、電池の寿命だけでなく、SW仕様のせいで大電流に耐えられなくなっていた可能性も考えられる。
デジタル時計部はともかく、アナログ時計部の時刻合わせ方法は、同梱されていた取扱説明書を参照する。

説明書を読んでいると、ポケベルの文字を発見。50件分の名前、電話マークを設定した電話番号をセーブすることができるそうだ。先のデータバンク・テレメモ30と比べると、カタカナ文字の入力が可能になり、セーブ数が30から50にアップ。

時計を傾けて液晶画面を見ると、固定電話、FAX、ポケベル、携帯電話のマークが浮かび上がった。風防、デジタル時計用の液晶画面、その下にアナログ時計があるという、サンドイッチ構造。分厚いデザインになっていない構造が驚異的。

裏蓋の汚れは除去完了。ケースとバンドの溝もクリーニングし、すっかりキレイになった。

仕上がったカシオ データバンク・ツインセプト ABX-69を眺める。今でこそスマートウォッチとして、スマホとリンクする腕時計が広がっているところだが、カシオは20年以上前の時点で、今に通ずる機能の元祖を組み込んだ腕時計を作り上げていたことになる。