山靴

廃道や林道を歩くときの靴は普段履いているスニーカーで、足場の悪いところを歩き続けることから足への負担が大きく、ガレ場を突破するときは足首が大きく曲がることが多々あり、ケガの危険性が常に高かった。山屋のY氏からも「最低限、靴は買いましょ」と言われており、これからも足場の悪いところを徘徊するつもりなので、装備を整えることにした。

この手の装備は未知の世界だ。足の形状やどういう領域を歩き回るかで、買う靴の方向性が決まるらしく、実店舗で店員と相談しながら決めていく。ガレ場攻めから始まり、廃道や林道といった単語が次々に出てくる店員は、私と同じニオイがするぞ。あの道がいいとか、そんな雑談をこなしながら決まったのが、berghaus エクスプローラートレックプラス GTXという靴だった。

買っていきなりのデビュー戦は足を壊すので、まずは近所を一時間ほど歩き回って馴染むことからスタート。今日は夜勤明け、今週は二回も夜勤をやっていい具合に疲れており、だんだん歩くペースが落ちていくのは仕方ない。

berghaus エクスプローラー トレック プラス GTX

中敷や土踏まず周辺の形状が足裏にぴったりで、直立状態で立っているのがまずラク。スニーカーと違って足首までカバーするので拘束感が強く、独特の動き辛さに慣れるまでが勝負。平地を歩き回るだけでなく、無駄に歩道橋を経由して上り下りの練習も兼ねる。歩き回って家に着き、靴を脱いだ瞬間の足の開放感が最高だった。思った以上に足の疲れが感じられるので、もう少しの歩行練習が必要と判断した。

ストレステストやってます セイコー 38クォーツQR編

秒躍制レバーの扱いには非っっ常に苦労させられたが、だんだん具合が分かってきた(と思う)。コツを掴んでモノにする感覚こそが機械いじりの醍醐味なわけで、微調整がより楽しくなってくる。おかげで19日に調整方法を理解して以降、止まることは基本的にはなくなった。

そうなると、次は実使用を想定したテスト。まずは耐振動性調査だべ…ということで、さっそく4月21日の青森日帰り弾丸ツアーのタイムキーパーとして携行したが、出発前の荷物積み込みのときの衝撃で、いきなり秒躍制レバーが噛み込んだらしく、30秒程度の狂いが出た。ここは慌てず騒がず、後日…23日に再調整を行っておき、24日からの夜勤を含めた通し勤務で左腕に装着して、仕事の現場という過酷な環境でのテストを行った。

始業前の準備体操から始まり、左手で機器を引っ張っていたときに滑って弾かれ、でこぼこ路面で自転車に乗って無駄にハイペースで走り回り、缶コーヒーを左手で振る。普段から左手の使用率が地味に高いおかげで、典型的なストレステストだ。それらの衝撃には全て耐えて正常な運針を続けていたが、帰り際の自動改札機で左手の甲をぶつけたときに、とうとう狂ってしまった。あれだけ振り回して耐える場面が多かったのだから、ずいぶんと上々の結果になった。

そして精度。一日1秒以上の進みは、機械式時計なら無視できるが、クォーツだとそうもいかない。製造された1970年代前半当時は高級腕時計だっただけに、しっかりした精度まで仕上げないと格好がつかない。

セイコーCal.3862Aのトリマコンデンサ

高周波数化された38クォーツの回路ブロックには、トリマコンデンサが内蔵された(赤い矢印)。オリジナルの交換式と違って、経年に伴う水晶振動子の変化具合をカバーできるが、回す角度は僅か1度単位の精密さが要求され、これはこれで難しい。返却まであと少しなのだから、しばらく続くストレステストを無事にクリアして欲しいところ。

2017年度青森日帰り弾丸ツアー

だんだん毎年恒例になってきている、東京(羽田)青森日帰り弾丸ツアーを実行した。今回はソロドライブに戻り、燃費よりも諸事情で時間を一分でも縮めるべく、速めのペースを意識したドライブを続けることになった。まずは実走行の時間状況について。

自宅出…0334
川口JCT…0443
岩手山SA(下り)…1036/給油1回目
青森出口…1248
青函連絡船メモリアルシップ八甲田丸着…1314
青函連絡船メモリアルシップ八甲田丸発…1335
青森入口…1351
前沢SA(上り)…1601/給油2回目
川口JCT…2132
自宅着…2211/給油3回目

仕事に疲労を当日に残し、眠気を催さないために、昨夜の時点で睡眠薬を服用して強制的に身体を眠らせ、6時間半の睡眠時間を確保。これが当たりで非常に体調が良くなり、羽田空港から最初の休憩地点となる那須高原SAまで210kmを一気に走り、復路の蓮田SAまで眠気が全く出ず、腰痛も復路にて軽度。今後のドライブ対策に役立ちそうだ。

那須高原SAと38クォーツ

最初の休憩地点、那須高原SAにて。振動と熱に対するストレステスト、そしてタイムキーパー担当の38クォーツも携行。視界内に、正確なアナログ時計が見えているというのはとても心強い。肝心のストレステストの結果は…振動に対する耐久性がまるでなく、さらなる追求が必要みたい(=つまり、返却延期…)。

青森方面の看板

福島JCTで早くも青森の文字が出てくる。往路復路共に工事による車線規制があちこちにあり、作業者に対する注意を要することから緊張を強いられる場面が数多く、考え方によっては適度にいい刺激になっていた。

盛岡IC付近の巨大スイカ

名物、盛岡IC付近の巨大スイカ。その正体はガスホルダー(いわゆるガスタンク)で、滝沢市の名産品であるスイカにちなんだもの。実は二代目だそうで、高速道路からも見て楽しんでもらう意図があるそう。

EK9リアハッチのクラック状況

岩手山SAに到着。EK系シビックといえばルーフモールからの鋼板にヒビが入ることが持病で、雨漏りによってスペアタイヤ置き場に金魚が飼える池ができる。雨漏り対策として、大胆にシール剤を塗ると効果があるようで、合わせ目をとにかく塗っていくといいようだ。

B16B新品ヘッドカバー

ヘッドカバーは新品で出るようだ。くすみのない、きれいな赤ヘッドを中心に無限のエアクリーナー、タコ足やラジエターも入っている。各配管系もリフレッシュされ、見ていて気持ちのいいエンジンルーム。

驚異の手曲げ板金

フロントホイールのオフセット変更で、フロントフェンダーも広がっている。なんと手曲げ板金で、手で自然と仕上げるスキルは、新幹線の鼻ツラを手で仕上げる板金職人に通ずるものがあり、驚異そのもの。すげーすげー!と連発。

前期と後期

というわけで、「普段参考にしてます。近くに来るなら連絡ください!」とお声を掛けてくれた、月に向かっている真っ最中のA様の後期型EK9シビックRを事細かに見ていたのだった。純正エアロの良さを活かし、ツインリンクもてぎのJOY耐からそのまま出てきたような、レーシングカーのシビックのイメージそのままでとてもカッコイイ。センスのない私には絶対にできない仕様なので、本当にいい勉強になった。1時間半もあれば四本の脚の交換ができるとか…。

今回の、この岩手山SAでの面会において、一分でも長い時間を確保できるよう、往路の走行ペースを上げ続けていた。それでも時間にして僅か50分程度となってしまい、もっと話をしたかったし、急ぎ足になってしまったのが心残り。わざわざ岩手山SAまで来ていただき、本当にありがとうございました。またどこかでお会いしましょう!>A様

雪が残る東北道

給油して再出発。安代JCTを過ぎて、青森ICまで残り100km程度。法面には雪が残っていて、気温もずいぶん下がって過ごしやすい。あちこちのサクラも咲いており、いい景色の中での走行となった。

青森ICの『おつかれさま』

出発してから9時間で、東北道680km全線を走破。ここから青森駅/青函連絡船メモリアルシップ八甲田丸までは20分程度。

EK9と八甲田丸

八甲田丸に到着したその瞬間から、大急ぎで帰宅準備だ。まず撮影、そして30分まで無料の送迎用駐車場に車を止めておき、土産物を一気に購入し、無料時間内に退出。青森駅周辺に滞在していた時間は、20分だ。

青森IC上り突入

早くも復路スタート。日没時間までに距離を稼いでおきたいところだが、通り雨が相次いでしまい、その度にペースダウンを強いられることになった。

輸送中の誘導人形

荷台に人が立ってる!?と驚いたが、よく見ると工事現場用の誘導人形だった。この手の人形は、荷台に放り投げて『犬神家』状態で輸送すると思っていたが、実際は立った状態で輸送するようだ。ちょっと怖いが。

東京方面の看板

富谷JCTの看板には東京の文字。それでも起点の川口JCTまでは350km、実際の東京となればもっと先の距離になる。この時点で集中力の切れや疲労感は覚えておらず、まだ余力がある。

上り中間地点

雨に降られながら、上り線の中間地点の看板をパスする。17時42分、日没までは残り40分程度。

日が暮れ、夜の訪れ

夕日は厚い雲に遮られてしまい、一足早く暗くなってこれが最後の撮影となった。以後、帰宅までの350kmは本日二度目の夜間走行だ。復路では仙台周辺での渋滞を覚悟していたが、予定よりも早い時間に東北道に入り、ペースを上げたまま走ることなって、結果的には一時間も早く帰宅することができた。

スタートからゴールまで渋滞はなく、天候は復路における通り雨程度があったくらいで、全体を通してスムーズな走行だった。セクション毎の燃費は給油1回目が15.2km/L、給油2回目は14.1km/L、給油3回目は16.1km/Lで、総走行距離が1,463km、総合燃費は15.2km/hと、ペースを上げていた割りにはずいぶんと好成績を収めることができた。

復路、最後の休憩地点となる蓮田SAで疲労感を覚え、さすがに眠気も出てきた。おまけに低血糖の症状なのか、視界が歪みがち。食事らしい食事は昨日の夕食からずっと摂っておらず、かと言って揺られ続けているため食欲はないし、食べると眠くなる。飲み物とサンドイッチで最低限の糖分を摂取し続け家まで走りきったが、1.5kgの体重(筋肉)を失う結果となった。

ただ単に走るだけとは異なる、今回の弾丸ツアー。EK9シビックRの維持に関し、参考にしてくれているというありがたさだけでなく、情報を発信する責任の重さも痛感することになり、慎重なサイト経営をしなければならないと再認識することになった。今後ともよろしくお願いします。>A様

秒躍制レバーの調整 セイコー 38クォーツQR編

夜勤明けでの秒躍制レバーの扱いに苦労して、ようやく直ったと思っていたのが13日の出来事。なお不安定だった。運針が止まることはなくなったものの、止まる前兆は残っている。

四番車の歯に秒躍制レバーの爪が噛み込んで止まろうとするが、トルクが打ち勝って爪を弾き出すことで、正常運針に戻る現象が続く。これが起きると、一回で5秒程度の遅れになり、24時間で15秒程度の遅れが残る。

まだ何かやり残していることがあるはず。そんな考えで部品取り用のCal.3862を見直してみると、触っていない部分があった。

秒躍制レバーの調整

これまでは偏心ピンを左右に回すだけだったが、秒躍制レバーの反対側にはカシメ加工された関節部分があり、尾部に至ってはピンセットで掴んで動かしてくれと言わんばかりの形状だ。

いやまさか?と思いつつ、動かしてみると歯と爪の当たり具合が大きく変わる。こいつだ!とさっそく動かして、歯と爪の当たり具合を再調整を施したのが昨夜のこと。つまり、偏心ピンを回すと、四番車に対する爪の位置が前後し、尾部を上下に動かすと、シーソーの如く爪が上下するのだった。

四番車の歯に対し、爪の掛かりがあまりにも浅かった。ピンッと弾かれた拍子で振動し続け、その状態のまま次の歯に触れてしまうと、ガッチリと深く噛み込んでしまう。そこで、爪を歯に軽く押し当てる感じの位置にしてみると、弾かれても次の歯で振動が適度に抑えられ、正しい位置に保持されるようだ。歯と爪の当たり具合が良くなったせいか、1秒ペースとはいえ、機械式時計と同じチクタク音が鳴るようになった。

今朝の時点で、机の上に並べられている他の腕時計とほぼ同じタイミングで運針しており、帰宅直後の再チェックでも同様だった。電波時計と高精度機械式時計、時報と比較して、感覚的には24時間で0.5秒の遅れ。ようやく秒躍制レバーを克服できそうで一安心。

残るはトリマコンデンサによる精度の追求とストレステストで、所有者への返却できる目処がやっと、やっとついた。

イマ車のエバポレーターを洗浄する

イマ車となるスバル レヴォーグに乗るサボリーマンから「エバポレーターの洗浄を手伝ってくださいよー」と作業依頼だ。さっそく来てもらい「まずグローブボックスを外して」「このナットを取る」と次々にアドバイスをしながら、エアコン関係の部品をどんどん取り外していく。ホンダ車ばかり診ているわけではないので、別メーカーでも作業やアドバイスは難しくない。

スバル車のエバポレーターの位置

グローブボックス、防音カバー、ブロワーダクトユニットASSYを外したところ。今時の車のエアコンはダッシュボード裏側に組み込まれているため、エバポレーターを見るまでにはかなりの部品を取り外さなければならない。すっかり分解し、ようやくダクト内を目視できる環境が整い、頭を突っ込んでダクトの中を見る。

レヴォーグのエバポレーター

見えた。手前のヒートシンクはレジスターユニット、そして奥にエバポレーターがある。進行方向に対して正面を向くような配置になっている理由はいくつか考えられるが、運転席側と助手席側の個別空調の都合、インパネのデザインから内側の空間にゆとりがあり、グローブボックス背面に大きなエバポレーターを置かなくて済んだ、他車種との構造共用化…こんなところだろうか。進行方向と平行に置くと、それだけグローブボックスの容量が圧迫され、ダッシュボード内側の部品配置がしにくいのかもしれない。

エバポレーター本体が見えてしまえば、後は定例作業の洗浄液の直接吹き付けだ。一缶使い切ったら外した部品を元通りに取り付け、エンジンを始動して乾燥工程。異音や動作の点検、エラー表示がないかチェックして、全て良好なら作業完了となる。一度やってしまえば慣れて覚えてくるので、来年度もぜひどうぞ。

秒躍制レバーに一苦労 セイコー 38クォーツQR編

素人の手によるオーバーホールを終え、組み立て後の後検査と歩度調整を続けているセイコー38クォーツQR。組み立てて、再び時を刻み始めたのが4月8日、それから現在まで安定した運針を続けてはおらず、まず精度が悪い。手持ちの機械式時計並の精度となってしまい、計算上は週差1分以上は進み、当時の高級クォーツ時計らしからぬ酷さ。これはトリマコンデンサを動かして、精度を追い込むことになった。

そして大問題になったのが、秒針が動かなくなり、時計として止まってしまう点。ケースに対して指でトントンと軽く弾くと再び運針を開始するが、しばらくすると秒針がプルプル震えて止まる。洗浄や注油は念には念を入れたし、衝撃で一時的に回復するならば粉塵を噛みこんだものとは違う。原因は、四番車に接触している秒躍制レバーと呼ばれるブレーキで、調整が悪いために四番車の歯に噛み込むためだった。絶妙な接触具合でないと正しい運針には至らず、この当時のセイコー製ムーブメントでは、難所の一つだったようだ。

秒躍制レバー

秒躍制レバーの様子で、紫色の爪が四番車に接触しているのが分かるはず。噛み込んで止まっているところに、軽い衝撃を受けて一時的に爪が正しい位置に戻って運針を再開、ところがまた歯に噛み込んで停止。ここのところ、早朝に起きて出社時間ギリギリまで微調整を行い、帰宅してからも微調整を繰り返していた。今日に至っては夜勤明けで時間があり、昼間なので部屋も明るい。一気に追い込むぜ!と精度調整、秒躍制レバーの位置調整をずっと行っていた。拡大鏡でギリギリ見える接触具合を探りつつ、電波時計と高精度機械式時計、時報をベースにトリマコンデンサを回し…、おかげで目は疲れて、今はとにかく眠い。

作業場

本日の作業デスクの様子。ムーブメントはケースに収めて実使用に近い環境に設定し、微調整を継続していた。それでもなお満足できる仕上がりには程遠く、秒躍制レバーの調整方法が見つかったのは一週間後のことだった。

ムーブメントの組み立て後編 セイコー 38クォーツQR編

ムーブメントの組み立ては、疲れによる集中力の散漫や不注意で失敗しないよう、適度な休憩が必須。こんなときの甘い飲み物が、普段よりもおいしく感じるのは、それだけ神経を使っている反動なのかもしれない。ある程度回復したら、ムーブメントの組み立てを再開する。素人作業だけに、組み立てまで何日掛かってもいいのだから。

前編のレポートはこちらにて。

日車(=カレンダーディスク、日本車両の略称ではない)の取り付けから、作業再開。

日車を取り付ける

日車は二箇所の押さえで浮き上がらないようになっており、外していない押さえ側から、スライドするようにしてセットする。

日車の爪をかける

すると日ジャンパーが少々隠れた状態になるので、ピンセットで引っ張り出して日車の歯にかけてやる。これが日付表示の固定金具であり、竜頭で回したときに、カチカチとしたクリック感の源となる。

日車押さえでカバー

日車押さえで日車をカバーする。第一の難所がここで、日車押さえの左右にある皿ネジが、卓上塩の粒程度のサイズしかなく、インスタントコーヒーの粉末のほうが大きい。飛ばしてしまうと見つけ出すのが絶望的になることから、息を殺した作業になる。

四番車と三番車を載せる

地板を再びひっくり返し、今度は輪列側だ。三番車、四番車を載せる。見えない部分の受け石に軸のホゾを挿すことから、ピンセットを通じた感触が頼り。受け石のホゾ穴は、鼻の角栓の穴より小さい。

輪列受けを装着

第二の難所となる、輪列受けの装着。三番車、四番車、ローターの軸のホゾを受け石に挿さなければならず、これまた見えない部分。ホゾが刺さっていない状態でネジを締めてしまうと、ホゾや軸の折れ、受け石の割れに繋がるので、少しでも違和感を覚えたら一旦外して関係部品をチェックする。同時にマイナス電極も付けておく。

日付調整テスト

無事に輪列受けが装着できたら、竜頭を回せば日付変更が可能になる。日付セット用歯車と日車の接触具合をチェックする。

午前0時前のカレンダーレバーの動作テスト

午前0時近くになると、日車の歯とカレンダーレバーが接触し始め、日付を送るようになる。竜頭を回して擬似的に時間を進め、レバーと歯がしっかり当たって、確実に日車を送るかチェックする。

文字板の装着準備

動作に異常がなければ、文字板のセットだ。外周の固定リングには凸状に加工された部分があり、地板にも対応した凹みがあるので、間違った装着はできないようになっている。

文字板装着

文字板を装着。長年に渡ってメンテナンスをしなかったことから、文字板の塗装に剥離が見られ、指標も傷みが見られる。しかし、全体的にはキレイな状態を保っており、SEIKOのエンブレムや水晶マークは金色に輝いていて美しい。

針を打ち、電池をセットして駆動テスト

日付変更のタイミングを見つけて、それを基準に秒針、分針、時針を取り付ける。いよいよ電池を取り付けて、駆動テストだ。分解前の事前調査ではパルス電流が触れ、制御回路は生きていた。問題があるとすれば歯車系統。歯車の軸にダメージはなく、歯欠けもなかった。しっかり油を差して、滑らかに動くことは確認した。電池をセットすると…秒針が1秒毎にピクピクと動き始め、各歯車もしっかり回っている。「動いたー!!」アナログ時計の表情を決める午前10時8分42秒にするため、42秒で電池を抜き、10時8分で記念撮影だ。

運針しなかった原因は、油切れだった。全ての受け石とホゾ、同軸状になっている部分、駆動部品が接触する部分に油を差しているので、電池切れるまでの一年間は時を刻むはず。製造は1973年12月、それから現在に至るまでタンスに片付けられていた年数がかなりの割合を占めているので、回路の経年劣化はそこまで進んでいないと思われる。この先、3年から4年が経過したあたりで、再オーバーホールを行えば、長らく使うことができるはずだ。今週いっぱいの時間をかけて歩度調整し、週末には所有者に返却することになった。

ムーブメントの組み立て前編 セイコー 38クォーツQR編

輪列側、文字板側共に分解し、部品の損傷状態のチェックを終えたセイコー38クォーツQRの組み立て作業をスタートする。所有者へのレポートも兼ねているので、写真中心の記事となった。

セコンドセッティングクラッチとツヅミ車を載せる

セコンドセッティングクラッチとツヅミ車を載せる。セコンドセッティングクラッチは竜頭を引っ張ったときに秒針を止めるストッパーの役割を担っており、これのおかげで秒針が目盛りにぴったり重なるようにして止まる。ツヅミ車は竜頭と繋がる歯車で、時間調整とカレンダーの調整用となる。

左右のローターステーターを載せる

ローターステーターを載せる。左右のステーターは僅かにギャップが存在し、磁界をしっかり保てるように調整できるようになっている。くっつき過ぎず、それでいて離れ過ぎない位置に再調整しておく。

駆動コイルブロックを載せる

駆動コイルブロックを載せる。コイルには保護用カバーが装着されているが、僅かにエナメル線が露出している部分があり、超極細…顔の産毛並みかそれ以下の細さしかないので、扱いには神経を使う。これ以降、一工程毎にテスターを当てて、断線していないかチェックを繰り返す。

制御回路を載せる

制御回路ASSYを載せる。38クォーツ系といえば、大型の水晶振動子と外付けの調整用コンデンサを載せているが、このムーブメントでは小型化された水晶振動子とトリマコンデンサを内装していた。所有者に尋ねてみると、過去にセイコーへ電池交換に出したことがあり、その際に密かに交換されていたのかもしれない。オリジナルでは16,384Hzだが、小型化に伴い32,768Hz化されて精度が良くなった。その代償として燃費が悪化し、公称電池寿命は僅か一年だ。

ローターを載せる

ローターを載せる。磁石なので左右どちらかのステーターにくっついて、軸のホゾを受け石に収めるのが一苦労。ここまでくると誘導モーターらしい見慣れた姿になってくる。ここで地板をひっくり返し、反対側の作業に入る。

二番車と日ノ裏車を載せる

一時間に一回転する分針用の二番車、そして時針用にトルクを伝える日ノ裏車を載せる。

日回し車を載せる

カレンダーディスクを回す、日回し車を載せる。

カレンダーレバーを載せる

日回し車の上にカレンダーレバーを載せる。プラスチック製の柔らかいレバーで、しかもラチェット機構まで備わっている。華奢なレバーを使って、大きく重たいカレンダーディスクを送る仕組みだ。時間を掛けて少しずつ噛み合っていく歯車やレバーに対し、竜頭側から大きな力が加わると、大変なストレスになってしまい、損傷する可能性が増えてしまう。こんな事情があるために、夕暮れ以降から夜明けまで、時間調整は禁忌とされている。

曜日レバーを載せる

さらに曜日レバーを載せる。Cal.3863ならばデイデイトモデルになるのでこのレバーが意味を持ってくるが、このCal.3862はデイ機能がないので、日回し車とカレンダーレバーを押さえるだけの役目になっている。

二番車押さえでカバーする

二番車押さえでカバーし、やはりプラスチック製の日送り中間車を載せる。三本の溝が刻まれたネジは、逆ネジを示している。一旦覚えてしまえば、この目印は分かりやすい。過去に機械式時計のセイコー5で練習しておいて助かった。

ツツ車を載せる

一日で二周する歯車…時針用のツツ車を載せる。

ツツ車押さえでカバーする

最後にツツ車押さえでカバーすれば、歯車がバラバラに落ちてしまうことはない。

ここで一旦区切り、続きは後編で。

文字盤側の分解 セイコー 38クォーツQR編

本来なら、今日は社内チャリ部のツーリング。だが朝から大粒の雨で、しかも日中時間帯はずっと雨模様となることから、順延となった。

予定が全てトケ(=取り消し)になってしまい、その代わりに時間がたっぷりある。昨日諦めた、38クォーツの文字板側の分解作業を再チャレンジしてみた。手持ちの剣(針)抜きは大きく、時計の針が細いためうまく掴むことができなかった。しかし、何度かやってみると引き抜ける位置が見つかり、スポッと抜くことができた。これで文字板が分解できて、カレンダー関係や分針、時針の歯車に注油することができる。

分解されたcal.3862Aの文字板側

ここまで分解すれば、歯車の軸への注油も確実に行うことができる。1970年代の時計で、過去のオーバーホール歴が一切不明だけに、しっかりとした整備を行っておきたいところ。取り外した全ての歯車を点検した結果、歯や軸に損傷もないことがほぼ確認できた。

時計の部品はケースの中へ

外した部品は、ケースの中に順番に収めておく。ケースは100円ショップで売られている小物入れで、仕切り板のない一体モノタイプ。ホームセンターや釣具屋に売られているような仕切り板が動かせるタイプの場合、僅かな隙間からネジや部品が移動してしまい、混ざる可能性があった。写真のような一体モノタイプはなかなか見つからず、散々探し回って自宅近くの100円ショップで発見できた。いよいよここから折り返しで、分解したムーブメントの組み立てとなる。

時計修理の気分転換で、久しぶりに近所のホンダディーラーまで出かけて部品注文。ついでにフロントタイヤのサイドスリップを測定してもらったところ、検査は良好だった。

輪列側の分解 セイコー 38クォーツQR編

ようやくムーブメントの分解ができる環境が整ったものの、剣抜き(針抜き)が大きくて秒針しか抜くことができなかった。これでは文字板側の分解ができず、カレンダー関係の歯車に注油がしにくくなってしまうが、なんとかやってみるしかない。

秒針が抜けたことで、輪列側の分解はできるようになった。一つひとつの部品を確かめながら取り外していき、あっという間に地板部分全景が見れるようになった。

分解されたcal.3862A

分解前の写真は、3月12日付けの記事にて掲載している。運針しない原因は、第一の予想としてローターの軸受けが油切れ。長年の使用の中で、落下等の強い衝撃で軸がブレていることが第二の予想だ。このあたりの精査には少々の時間が掛かりそうだが、可能な限りの原因を追究したいところだ。

歯車の大きさ

外された歯車を見る。長い軸を持つのが秒針用の歯車で、四番車と呼ばれるもの。短い軸を持つのが三番車で、小さい歯車から分針と時針を回す。軸受けのサイズが、写真右側のスケールの表記…最小0.5mmよりも小さく、実際のところヒゲよりも細い。組み立てるときにはこの部分へ油を注すことになるが、このサイズに適した量は本当に極少量なので、気の抜けない作業が続くことになりそう。

当初は勉強用に借りたもので、所有者からも「壊しても構わない」と言われていた。しかし、ここまで手を付けているのだから、どうにかして直せないか?と意識が変化していた。部品の損傷が見つかった場合、そこでお手上げになってしまうことから、正常動作品のCal.3862を万一の部品取り用として手配、共食い整備に備えることになった。