待ちに待ったオイル交換の日。近所のディーラーに出向くと、目の前にはFK8シビックRが鎮座しており、挨拶も早々に「オイル交換中に乗ってみますか?」と誘われて、さっそく試乗となった。まずはボンネットを開けてもらい、ターボエンジンの説明やタイヤ、ブレーキ周りの説明を受け、いよいよ運転席へ座る。

シートに腰掛けた瞬間、そして目の前のウィンカーとワイパーのレバー、ペダルという一つひとつの部品にEK9的な雰囲気があり、これが全く違和感なしで「あ、シビックだわこれ」。電動パーキングブレーキの扱い方を教えてもらい、ディーラーを出発。すかさず担当メカニック氏は「せっかくなんで」と+Rモードに切り替えた。足回りとステアリングに制御が入っているので、サスペンションの硬さとハンドルの重さが変わる。FD2シビックRのようなガンガンした硬さではなく、ダンパーの減衰力制御のおかげか、路面からの衝撃をうまく包み込むロングツアラー的な程良い硬さが心地いい。
「今日は雨なんで走りにくいですが、ちょっとアクセルベタ踏みしてみてください」ということで、ガンッと踏んでみるとレブリミットに向かって、一気にタコメーターの針が上昇していく。ターボラグのようなレスポンスの悪さは感じられず、しかも高回転領域で力が抜けるような感覚もない。ゼロ発進からの強力な加速力がレブリミットまで続き、とにかくぶん回す廃パワー系の性格は、B型エンジンを扱っている人間ならすぐに馴染むはず。こいつはめちゃくちゃはえぇぞ。
上だけのパワーだけではない。街乗りでも強力なトルクは効果的で、渋滞や流れの悪い道路でもラクラク発進が可能。1,500rpmも回せば、周囲の流れに馴染ませることができる。アクセルを踏まず、クラッチだけ繋いで動き出そうとすると、勝手にスロットルが開いてエンストを防ぎつつ、走り出すことができる制御はうれしい。EK9のような、発進かーどっこいしょーというかったるさは一切無し。

▲ドアの内張りの形状、ABCペダルのデザイン、ボンネットオープナーの位置…EK9シビックRをオマージュしていないか?と思わせるデザインだ。
さてサイズ。オープンカーを思わせるほどの、極太サイドシルをまたいで、乗り降りしていた。サイドシルの太さから分かるように、横幅については5ナンバー(1,695mm)のEK9シビックRに対し、FK8シビックRは1,875mmとサイズアップ。その広くなった横幅で、運転しにくいのでは?と思ったりしたが、全く問題なし。左タイヤとフェンダーの位置をすぐに掴むことができて、左寄せには苦労しなかった。今時のホンダ車によくあるのが「助手席側のAピラーの位置が、嫌なところにある」という点。ところがFK8シビックRでは、助手席側Aピラーの位置は気にならない部分にあり、これが左側の車体感覚をあっという間に掴めた要因かもしれない。
取り回しが悪い!と言われるFK8シビックRだが、普段どおりに路地を走り抜けた。実はEK9シビックRもなかなか取り回しが悪く、5ナンバーのくせに、最小回転半径は5.4mもある。それを踏まえている以上は、最小回転半径が5.9mになっても取り回しの悪さは特段気にならなかった(このあたりは、三菱PE8WデリカSGの6.0mが基準値になっている点が大きい)。
トルクモンスターで街乗りで扱いやすく、5ドアで買い物からちょい乗りも便利。アクセルを踏めば、タイプRらしく元気に走り回る。なにかと大きくなったとしても、シビックはやはりシビック、『シビック』ならではの運転する楽しさが受け継がれている点がとても素晴らしかった。各世代のシビック乗りなら、違和感無く扱える。
車体サイズが契約駐車場の規格外なので、残念ながら購入、登録ができない。もしも規格内だったならば、書類に購入のハンコを突いて、改めて月面到着を目指すことになっていただろう。