表題は、A列車で行こう4/7より。
「古い腕時計が出てきたので、診てほしい」と持ち込まれたのが、OMEGA DE VILLE、レディースモデルだ。デ・ヴィルとは、フランス語で街角という意味であり、相撲と蝋人形が好きな閣下とは全く関係ない。

赤いデザインが印象的で、ただただ美しい。レディースモデルのドレスウォッチだけあって、秒針のない、シンプルな2針式の手巻きの機械式だ。受け入れ時点では、竜頭を回すとガリガリと振動を感じる嫌な感触があったが、巻き真に付着したゴミが原因だった。

まずは歩度調査。文字板上で日差+33秒、ビートエラーは2.0ms。40年以上が経過して、過去のメンテナンス状況が全く不明な状況という点からすると、むしろ良好な成績ではないか。40年以上、そう、1970年代前半のアンティークウォッチだ。

裏蓋を開けて、ムーブメント本体をチェックしていく。OMEGA Cal.625、振動数は21600Hzで、手巻きの機械式時計の見本みたいな分かりやすいデザイン。直径は17.5mmで、とても小さな機械の中に石と歯車がいっぱい。
ムーブメントに刻まれた、『UNADJUSTED』という文字。これは精度が悪い設定ではなく、あえて「未調整」という扱いにすることで、未調整の時計部品として安い関税で輸入された経歴を持つ、ある意味では歴史の生き証人だったりする。高級時計であるオメガの時計を調整済みの完成品として輸入すれば、関税があまりにも高くなってしまうことから、回避策が行われていた痕跡だ。従って、ムーブメント本体にシリアル番号がなく、裏蓋には『金メッキ』『ステンレス』と表記することで、「これはあくまで時計の部品ですよ」というアピールがいくつも施されていた。

文字板の中心穴が、ツツカナの真と一致しておらず、若干ズレた状態で安定している。現物を見ると未塗装の下地が露出しており、時計の表情としてはけっこう目立つ。位置調整は可能だろうか。

ついでに、ムーブメントを側面から見ると、地板と文字板がしっかりと密着しておらず、僅かばかり傾いて浮いている。
さて、アンティークウォッチだけに、姿勢差による歩度の違いやパワーリザーブの調査をしっかりしてから、手をつける必要がある。特にこの1mm以下の細い針。脱着に関しては今から緊張している。