特急仕上げ

「久しぶりに使おうと思ったけど、動いてなくて…」と持ち込まれたのは、カジュアルウォッチ、D&G DW0492だ。どうやら放置期間が長かったために、いつの間にか電池切れを起こしていたようだ。

D&G DW0492

レディースモデルは、小さいサイズの中にインパクトのあるデザインをどう仕上げるか。このあたりのセッティングが、とても興味深い部分だ。

電池交換一つにしても、裏蓋開けて電池交換し、はい終わり…という10分程度の作業ではない。街の時計屋さんではないので、電池の在庫はない。裏蓋を開けて、ムーブメントと使用電池の特定からスタートし、実時間を掛けて運針チェックすることから、三日くらいは要する。

ところが、今回はいつもの流れにすることはできず、使いたい日があるということで、特急仕上げの希望だった。となると、各行程を詰めて、翌日には返さなければならない。幸い、デイデイトモデルではなかったので、一晩の運針を診ればOK。修理道具を持参して、預かったその場で開腹調査することになった。

分解して簡易清掃

写真は既に新しい電池がスタンバイされているが、電池切れを起こしていたボタン電池は、RENATA 379がセットされていた。液漏れしやすい電池というイメージが頭の中にあったために、電池を見た瞬間にゾクッと寒気がした。液漏れは起きておらず、恐らくは単純な電池切れだろう。

ケースとムーブメントを分離して、ケースに付着している手垢や汚れをサッと落としていく。風防の裏側も汚れで曇っていたので、しっかりと拭いてあげて、文字盤が映えるように仕上げておく。

SII Cal.VC00E

ムーブメントはSII…セイコーインスルツ VC00Eだ。電池は、ムーブメントの指定品となっているSR521SWをチョイス。電池をセットしてみると、チッ…チッ…とローター(モーター)が回る音が小さく鳴り、運針が再開。ブロワで埃を飛ばし、パッキンへのシリコングリスの塗布を行い、ケースを閉じる。

一晩の運針チェックを行って、無事に出勤時刻を示していたため、検査良好。所有者へ無事に返却となった。

本来は電池交換だけに留めておくのがスジか。リスクの高い竜頭抜きをやってまで、ケースのクリーニングまでやってしまう行為は、壊してしまう可能性を秘めている。預かった時計を返すまで強い緊張状態が続き、終わると同時にヘトヘトになることが殆どだ。

無理な作業に御用心

ケースの側面と裏蓋に著しいキズがあり、本人曰く「ぶつけた」とのことだが、時間や日数に猶予があり、希望があれば目立たなくする加工も不可能ではない。