「タンスの中から出てきた」と持ち込まれたのが、1970年代中盤に製造されたセイコーのアンティークな腕時計『セイコークォーツQR 3862-8000』、通称38クォーツQRだ。この当時、セイコーが引き起こしたクォーツショックの真っ只中で、高級時計こそ高精度なクォーツという時代。流行を的確に捉えた装いは極めて派手で、高級時計特有のオーラは全く失われていない。
動かなくなってからかなりの年数が経過したそうで、さっそくムーブメントの状態検査となった。この時点で恐れていたのは、電池切れ状態で放置し続けたことで液漏れが発生し、ムーブメント全体へのダメージだったが、裏蓋を開けてみると幸いにも無事。ただし、内部パッキンの劣化で汗や水分が浸入し、サビがあちこちに浮いていた。

こんな具合。古いモデルながら、セイコーの時計は現在に至るまで似たような構造をしている部分が多数あり、ある意味では扱いやすい。ケースからムーブメントを取り出すのだが、これが非常に硬かった。というのも、サビが膨れてしまい、ケース、固定リング、ムーブメントそれぞれががっちりと固着していたため。穿り出すようにして、なんとかケースとムーブメントを分離した。ケースとブレスは、後日超音波洗浄に掛けて、垢や汚れを落としてみることにする。
続いて、コアとなるムーブメント本体。ホルダーに固定し、まずは回路系統の検査だ。

1970年代中盤のモデルだけあって、個々の部品は大きめで触りやすい。まずはテスト用の電池をセットしてみたが、動くことはなかったことから、制御部を取り外して外観のチェックから始める。腐食や剥離はなく、見た目上の問題はない。制御部をムーブメントに再装着して電池をセット、モーターへの回路上でテスターを当ててみたところ、1秒毎にパルス電流が触れたことから制御部は生きている!となれば、運針しない原因は歯車系統、ここに問題を抱えていると判断した。
次は歯車系統の分解検査となるが、環境セッティングに時間が掛かることから、手を付けるのはしばらく先の予定。