輪列側、文字板側共に分解し、部品の損傷状態のチェックを終えたセイコー38クォーツQRの組み立て作業をスタートする。所有者へのレポートも兼ねているので、写真中心の記事となった。

セコンドセッティングクラッチとツヅミ車を載せる。セコンドセッティングクラッチは竜頭を引っ張ったときに秒針を止めるストッパーの役割を担っており、これのおかげで秒針が目盛りにぴったり重なるようにして止まる。ツヅミ車は竜頭と繋がる歯車で、時間調整とカレンダーの調整用となる。

ローターステーターを載せる。左右のステーターは僅かにギャップが存在し、磁界をしっかり保てるように調整できるようになっている。くっつき過ぎず、それでいて離れ過ぎない位置に再調整しておく。

駆動コイルブロックを載せる。コイルには保護用カバーが装着されているが、僅かにエナメル線が露出している部分があり、超極細…顔の産毛並みかそれ以下の細さしかないので、扱いには神経を使う。これ以降、一工程毎にテスターを当てて、断線していないかチェックを繰り返す。

制御回路ASSYを載せる。38クォーツ系といえば、大型の水晶振動子と外付けの調整用コンデンサを載せているが、このムーブメントでは小型化された水晶振動子とトリマコンデンサを内装していた。所有者に尋ねてみると、過去にセイコーへ電池交換に出したことがあり、その際に密かに交換されていたのかもしれない。オリジナルでは16,384Hzだが、小型化に伴い32,768Hz化されて精度が良くなった。その代償として燃費が悪化し、公称電池寿命は僅か一年だ。

ローターを載せる。磁石なので左右どちらかのステーターにくっついて、軸のホゾを受け石に収めるのが一苦労。ここまでくると誘導モーターらしい見慣れた姿になってくる。ここで地板をひっくり返し、反対側の作業に入る。

一時間に一回転する分針用の二番車、そして時針用にトルクを伝える日ノ裏車を載せる。

カレンダーディスクを回す、日回し車を載せる。

日回し車の上にカレンダーレバーを載せる。プラスチック製の柔らかいレバーで、しかもラチェット機構まで備わっている。華奢なレバーを使って、大きく重たいカレンダーディスクを送る仕組みだ。時間を掛けて少しずつ噛み合っていく歯車やレバーに対し、竜頭側から大きな力が加わると、大変なストレスになってしまい、損傷する可能性が増えてしまう。こんな事情があるために、夕暮れ以降から夜明けまで、時間調整は禁忌とされている。

さらに曜日レバーを載せる。Cal.3863ならばデイデイトモデルになるのでこのレバーが意味を持ってくるが、このCal.3862はデイ機能がないので、日回し車とカレンダーレバーを押さえるだけの役目になっている。

二番車押さえでカバーし、やはりプラスチック製の日送り中間車を載せる。三本の溝が刻まれたネジは、逆ネジを示している。一旦覚えてしまえば、この目印は分かりやすい。過去に機械式時計のセイコー5で練習しておいて助かった。

一日で二周する歯車…時針用のツツ車を載せる。

最後にツツ車押さえでカバーすれば、歯車がバラバラに落ちてしまうことはない。
ここで一旦区切り、続きは後編で。