ムーブメントの組み立て後編 セイコー 38クォーツQR編

ムーブメントの組み立ては、疲れによる集中力の散漫や不注意で失敗しないよう、適度な休憩が必須。こんなときの甘い飲み物が、普段よりもおいしく感じるのは、それだけ神経を使っている反動なのかもしれない。ある程度回復したら、ムーブメントの組み立てを再開する。素人作業だけに、組み立てまで何日掛かってもいいのだから。

前編のレポートはこちらにて。

日車(=カレンダーディスク、日本車両の略称ではない)の取り付けから、作業再開。

日車を取り付ける

日車は二箇所の押さえで浮き上がらないようになっており、外していない押さえ側から、スライドするようにしてセットする。

日車の爪をかける

すると日ジャンパーが少々隠れた状態になるので、ピンセットで引っ張り出して日車の歯にかけてやる。これが日付表示の固定金具であり、竜頭で回したときに、カチカチとしたクリック感の源となる。

日車押さえでカバー

日車押さえで日車をカバーする。第一の難所がここで、日車押さえの左右にある皿ネジが、卓上塩の粒程度のサイズしかなく、インスタントコーヒーの粉末のほうが大きい。飛ばしてしまうと見つけ出すのが絶望的になることから、息を殺した作業になる。

四番車と三番車を載せる

地板を再びひっくり返し、今度は輪列側だ。三番車、四番車を載せる。見えない部分の受け石に軸のホゾを挿すことから、ピンセットを通じた感触が頼り。受け石のホゾ穴は、鼻の角栓の穴より小さい。

輪列受けを装着

第二の難所となる、輪列受けの装着。三番車、四番車、ローターの軸のホゾを受け石に挿さなければならず、これまた見えない部分。ホゾが刺さっていない状態でネジを締めてしまうと、ホゾや軸の折れ、受け石の割れに繋がるので、少しでも違和感を覚えたら一旦外して関係部品をチェックする。同時にマイナス電極も付けておく。

日付調整テスト

無事に輪列受けが装着できたら、竜頭を回せば日付変更が可能になる。日付セット用歯車と日車の接触具合をチェックする。

午前0時前のカレンダーレバーの動作テスト

午前0時近くになると、日車の歯とカレンダーレバーが接触し始め、日付を送るようになる。竜頭を回して擬似的に時間を進め、レバーと歯がしっかり当たって、確実に日車を送るかチェックする。

文字板の装着準備

動作に異常がなければ、文字板のセットだ。外周の固定リングには凸状に加工された部分があり、地板にも対応した凹みがあるので、間違った装着はできないようになっている。

文字板装着

文字板を装着。長年に渡ってメンテナンスをしなかったことから、文字板の塗装に剥離が見られ、指標も傷みが見られる。しかし、全体的にはキレイな状態を保っており、SEIKOのエンブレムや水晶マークは金色に輝いていて美しい。

針を打ち、電池をセットして駆動テスト

日付変更のタイミングを見つけて、それを基準に秒針、分針、時針を取り付ける。いよいよ電池を取り付けて、駆動テストだ。分解前の事前調査ではパルス電流が触れ、制御回路は生きていた。問題があるとすれば歯車系統。歯車の軸にダメージはなく、歯欠けもなかった。しっかり油を差して、滑らかに動くことは確認した。電池をセットすると…秒針が1秒毎にピクピクと動き始め、各歯車もしっかり回っている。「動いたー!!」アナログ時計の表情を決める午前10時8分42秒にするため、42秒で電池を抜き、10時8分で記念撮影だ。

運針しなかった原因は、油切れだった。全ての受け石とホゾ、同軸状になっている部分、駆動部品が接触する部分に油を差しているので、電池切れるまでの一年間は時を刻むはず。製造は1973年12月、それから現在に至るまでタンスに片付けられていた年数がかなりの割合を占めているので、回路の経年劣化はそこまで進んでいないと思われる。この先、3年から4年が経過したあたりで、再オーバーホールを行えば、長らく使うことができるはずだ。今週いっぱいの時間をかけて歩度調整し、週末には所有者に返却することになった。