電池の除去で防御!

昨日記事にしたDIESELの腕時計、DZ-1208の電池交換依頼より数日前、EK9で快適生活(現BRZで快適生活)の管理者様から、時計の点検やムーブメント保護対策の依頼があった。

その時計とは、2017年10末の「時計を放置すると怖いよ、というお話」という記事でアップされていた四本の時計たち。カシオ データバンク・テレメモ30、データバンク・ツインセプト、シチズンアテッサ、セイコーシャリオ。それぞれに依頼があって、それに沿ったカタチで作業を行うことになった。まずは一本目、データバンク・テレメモ30の電池除去=ムーブメントの保護となる。

BRZで快適生活様の記事に書いてあったとおり、カシオ データバンク・テレメモ30は加水分解によりバンド、ケース共に崩壊してしまっている。これは加水分解という現象で、ケースに使われているウレタン樹脂が、空気中の酸素や湿気、熱により、少しずつ分解されていくもの。基本的にはウレタン樹脂の特性で、止める術はないようだ。時計の世界では古いG-SHOCKで見舞われることが多々あって、私が持っていたモデルも加水分解で崩壊。他では、スニーカーで発生することがあるようだ。

カシオ データバンク テレメモ30 DB-31

バンドは加水分解により完全に崩壊してしまったので、残っているのは本体部分だけ。ケース部分の加水分解も、止まることなく進行中。

加水分解による崩壊その1

ケースを開ける前に、外観のチェック。あちこちに加水分解によるヒビが入っており、割れ目の方向から裏蓋のネジ穴近くまで達していることが予想される。蓋を閉じるときに、ネジ穴に大きな力がかかることから、割れ目が広がる可能性が極めて大きい。

裏蓋を開けたところ

裏蓋を開ける。データバンク・テレメモ30の依頼は、内蔵電池を除去だ。寿命が尽きた電池からの液漏れでムーブメントの基板を損傷させないための、防衛手段となる。

DB-31の使用電池はCR1616

データバンク・テレメモ30の電池は、リチウム電池のCR1616。リチウム電池なら、すぐに液漏れに至ることは無いとされるが、安全を考えれば切れた電池は除去しておくほうが正解。電池ボックス部分にはダメージはなく、キレイな状態が保たれていた。

電池のすぐ下に、マイナスのネジ頭のような部分があって、この正体はトリマコンデンサ。水晶振動子の精度を微調整することができる部分で、製造上の誤差を均一化、使用特性を考慮した再調整が可能となっている。安価なクォーツ時計では装着されていない。

よく見るとマイナスドライバーで回した痕跡が残っており、過去のメンテナンスで動かして精度を微調整していたのかもしれない。

加水分解によるドロドロ

懸念したとおり、ヒビ割れはネジ穴に向かっていた。溝に広がる液状のドロドロは、ウレタン樹脂から染み出てきた油分。ウレタン樹脂に配合された油で弾力性を維持しているが、これが表面に移動してくれば不気味な液体として見えてくる。様々な物質が結合している樹脂から油が失われ、空気中の酸素や湿気で結合が解かれてしまえば、崩壊に至ってしまう。

大きく割れたケース

ネジを締め込むとケースの割れ目が大きく広がってしまい、崩壊を遅らせるためギリギリのところで止めておく。データバンク・テレメモ30のムーブメント保護対策は、これでOK。

DB-31の取扱説明書

参考資料として同封させていただいた、取扱説明書。郵便番号が三桁、東京のサービスセンターの電話番号についても、市内局番が三桁(03-XXX-YYYY)という、歴史を感じさせるものだった。

万一、誤ったボタン操作をしても製品に障害を与えることは一切無い…という文章は、初めて扱う時計に対する強い安心感を与えてくれる。扱っていたG-Shockにもこの一文は添えられていて、データバンク・テレメモ30の取扱説明書にも記載があったことから、古くから使われている決め台詞なのかもしれない。