ホテルで夜を明かして、朝は鉄分補給。近くに山陽本線八本松駅と瀬野駅間の『セノハチ』があり、どういう区間か見に行くことにした。
山陽本線の八本松駅から瀬野駅は、鉄道路線における難所の一つ。瀬野駅から八本松駅に向かっては、最大22.6‰(パーミル)の急勾配区間があり、貨物列車はその編成重量から先頭の機関車だけでは登れない。そこで貨物列車のケツに、「補機」なる別の機関車を連結。先頭で引っ張るだけでなくケツからも後押しして、山越えを毎日行っている。
この難所を攻める貨物列車を眺めようと、番堂原第4踏切へ向かう。八本松駅を基点とすると、国道2号から並行する県道46号に入り、瀬野川沿いの小道に入ったところにある水神社を第一目標とする。水神社を左手に見ながら西進すると、すぐに番堂原第4踏切に到着する。

到着。なるほどここが名物ポイントの踏切!と感激し、同時に周辺散策。残暑を意識させられる気候ながら、都心のように蒸し暑くはない。蝉しぐれとトンボが飛び交う自然豊かな場所で、大きなトンボ…ヤンマが当たり前のように飛ぶ。

線路を含めた路面の凹凸はけっこうな具合、車高が低い車だとフロア下を擦るかもしれない。車一台分しかない狭い道ながら、一方通行ではない。しかも生活道路ゆえに地元住民の車が頻繁に往来する。地元の車を最優先して、行儀よく静かにするのが鉄則。鉄道ファンなら、こんなことは書くまでもない当たり前の常識だと思うのだが。

勾配区間を駆け上がる電気機関車への大電力供給用として、八本松変電所が設置されている。過去には大出力の電気機関車(EF200、定格出力6,000kw…8,157.6馬力)のパワーリミッターを解放するために増強工事も行っている。しかし、輸送需要の低迷で大出力電気機関車はパワーリミッターを解除しないままの運用が続き、2019年には運用そのものが終了。

大電力を給電できるよう、上り勾配となる上り線の架線は二重に張られている。対する下り線は坂を下ってくるので電力はさほど必要とせず、よく見られる一本モノの架線となっている。

受電設備や架線断路器も忘れずチェック。どこを動かせば電気が遮断できるか、すぐに見えてしまうのがある種の職業病で嫌なもの。
さて、勾配を駆け上がる上り貨物列車はいつくるのか。ダイヤの目途は立ったが、30分以上は待つことになった。秋口とはいえ、まだまだ厳しい炎天下。僅かな日陰を探しながら、日焼けを防ぐ。

待ちに待った上り貨物列車がやってくる。先頭の機関車はEF210-312。ノッチを入れている(車でいうところのアクセルを踏んでいる)ためか、独特の低い唸り音が山の中に響き渡る。

番堂原第4踏切から先、八本松駅方面は緩いS字カーブと16.7‰の勾配となっている。普通列車と違い、貨物列車の長さを実感できる。

ところどころに空の貨車があるのが残念。機関車のハンドルを握る運転士は、貨物の中身や重量状況までは分からず、コンテナの状況だけで「重い」「軽い」をイメージするのだとか。そこに雨が降れば線路は濡れて滑りやすくなり、後押し運転にも影響が出てくる。よって運転状況は毎日変わり、それを踏まえた職人技。
再び低い唸り音が聞こえてきたら、編成が後端までやってきた証拠。

後押し担当の補機機関車は、先頭の機関車と同じ形式でEF210-314だった。過去はEF67形という、セノハチ後押し専用のオレンジ色の機関車がいたが、2022年3月に運用終了。以後、このEF210形300番台が後押し担当となっている。
貨物列車の通過を見届けた。朝から炎天下でのスタンバイを続けたおり、熱中症の予兆が出始める。これは危ないと、車に戻って水分補給と体を冷やしつつ、次の目的地へ向かう。





























