先日、組織の副社長より頂いた、営団(東京メトロ)02系の運転室用扇風機について、さっそく調査を行った。
試運転では、内部からのカタカタという異音と共に、回転が非常に不安定。首振りノブを押し込むとファンが止まりそうになる。ファンを下向きにすると、今度は全く始動しないことが分かっている。異音、首振りノブの位置で具合が変わる点から、首振り用のギアに何かしらの異常を抱えていると予想。
分解前の外観調査では、過去何度かオーバーホールが行われている痕跡が見つかり、使い捨てではなく修復に修復を重ねていたものと推測する。あちこちのネジの頭が潰れていて、締め込みがきつくて緩みにくかったのかもしれない。

モーターの覆いを外し、いきなり首振り機構の部分。既にネジの頭が歪んでいる。首振りノブを固定するネジも噛み込んでいて、切断することでようやく切り離すことができた。

カバーを開けると、首振り機構のギアボックスとなる。潤滑用のグリスで満たされていて、特有のニオイが部屋いっぱいに広がる。先の写真のも撮影されているが、フレーム上の茶色の変色は全てこのグリスが漏れ出たもの。ドライバーを突っ込み、ギアボックスからギアを取り出していく。

取り出したギア。首振りノブと繋がるクラッチの役割も兼ねている。ギアの歯をチェックすると、摩耗して歪んでいることが判明。これでは他のギアがうまく噛み合わず、スムーズに回転しなくなってしまう。事前の予想どおりの結果となった。
このギアだけが樹脂で、他のギアは全て金属だった。扇風機の風向きを変えようとして、手で強引に動かそうとしたり、首振り用の支点の動きが悪くなってくると、そのストレスは柔らかい樹脂のギアに全て掛かってくる。もう何十年分のストレスを抱え、歯が崩れてしまったのかもしれない。

ギア全体をチェックすると、摩耗している部分としていない部分の境目もあった。この境目に、他のギアの歯が噛み込む度にカタカタと音が鳴っていたようだ。ついでにギア内部にはクラックが見つかり、摩耗が無くても割れてしまう結末になっていたと思われる。

モーター本体を分割し、ローターを取り出す。こちらもネジに分解した痕跡があり、ついでに振動を受け続けた影響からか、全てのネジが緩んでいた。
コンデンサを繋げた補助巻き線を使う、単相誘導モーター。三菱電機製の業務用モーターだけあって、安っぽい作りではない。ローターの軸そのものに曲がりはなく、ベアリングもスムーズに転がっていた。

固定子側をチェックすると、油まみれで真っ黒。絶縁油か、それとも長年に渡って、首振り機構から滲み出たグリスが広がったか。絶縁測定をして、絶縁破壊が起きていないかチェックしたくなる見た目。中から女性モノと思われる長い髪の毛が出てきてびっくり。

最後にローターに圧入されているベアリング。NSKの608Zで規格品を使っていることが分かった。先述したように、ベアリングを回しても振動や回りにくいといった感触は感じられず、唯一異常が無かった部分。

製造は韓国。
以上の分解調査から当初の予想どおり、ファンの回転不良と首振り不良はギアの歯の摩耗で起きていた。問題が起きていた首振り機構の部品特定は難しく、代替品を探すことは無理と思われる。
正体不明の油汚れが酷く、絶縁破壊からのスパーク、炎上という流れも大げさな話ではない。電源コードの被覆も油で全体的に汚れていて、引っ張ったら内部の導線が見えてしまった部分もあった。本格的な試運転のために、100Vから200Vへのアップトランスを用意して追加テストを計画していたが、状況からすれば行わなくて正解だった。さすがに危ない。
ギアの破損、切断されたネジ、油汚れ、被覆の破れ。再登用できるコンディションではなかったので、分解調査に留めて終了。