計算尺

平日休み。明日はまた勤務なので、無理して出かけることはない。先日到着したアポロ11完全版、ファーストマン、アポロ13を続けざまに見て、一日アポロ三昧とした。

3回目の月面着陸を目指していたアポロ13号は、月に向かってる途中で爆発を起こした。爆発で発電機能が失われて司令船が機能停止、月着陸船を救命ボートに見立てて、地球へ緊急帰還することになった。

救命ボートとして月着陸船を動かすには、司令船に入力してあった飛行用データが必要になる。司令船と月着陸船は物理的にはつながっているが、これら二つの宇宙船でデータを相互にやり取りするリンク回路は持っていない。そこで司令船側で表示されている飛行データを乗組員が読み月着陸船側に向かって大声で伝達して、月着離船側の乗組員が再入力するという、マンパワーに頼った転送手段となった。

司令船と月着陸船がドッキングしている関係上、機体の姿勢を示す座標軸にズレが生じている。司令船の生データを月着陸船に移したところで、それはズレを含んだ不正確なデータとなってしまう。船長は月着陸船用のデータを補正してズレをなくそうとしたが、その計算結果にミスが発生してしまうと座標軸が狂い、宇宙空間で現在位置を見失って迷子になる危険性があった。地球の管制室に対して、補正計算が本当に合っているか検算してもらい、OKが取れてから月着陸船に入力している。船内に電卓や計算機というものは一切なく、公式を頭に叩き込んだうえでの暗算だったりする。

この検算は、緊急帰還に向けた避けられない事態。映画アポロ13と原作のLOST MOONの中でも印象的に表現されている。

「横揺れ補正値-2。ロール角355.57。ピッチ1678…違った、167.78。偏揺れ351.87…」と、司令船から無線で連絡が入る。地球側の管制官が一斉にメモを取り、補正計算しながら鉛筆を走らせていく。

NASAに保管されている通信ログでは「Houston. Okay. I want you to doublecheck my arithmetic to make sure we got a good coarse aline. The roll CAL angle was minus 2 degrees. The command module angles were 355.57, 167.78, 351.87. 」と記録されている。映画の中で1678と言い間違えるのは演出らしい。

アポロ13の補正計算シーン

検算中の管制官のコンソールデスクの上には、アポロ8号を記念したマグカップ、灰皿、そして計算尺。どれが計算尺?

アポロ13で出てきた計算尺

一瞬だが、このように透明の窓がついた定規状の道具が映る。これが計算尺。以上2枚の写真は、映画アポロ13のワンシーンより。

机の上で使えて、ポケットに入るようなサイズの、本当の意味での『電卓』が登場するのは、アポロ13号の飛行からあと数年先。よってこの時は、計算尺がバリバリ現役だった時代。

ヘンミ計算尺No.250

アポロ計画やNASAで使われた計算尺と同型ではないが、部屋にはヘンミ計算尺No.250が保管されている。アポロ計画を調べるうちに計算尺の存在を知り、どういう扱いをする道具なのか興味がわき、実際に入手したもの。電卓に慣れた身には少々扱いづらく、脳内である程度の暗算を行っておき、それが正しいかチェックするための道具として扱うことになる。

一時期は、日本製の計算尺は狂いが少ないといった理由で、世界シェア8割まで達したこともあるそうだ。製造元であるヘンミ計算尺は今も現存しており、映画アポロ13内で出てきた計算尺は同社の製品とのこと。