最後尾に乗る

浜松出張(通称参勤交代)、終わり。

浜松駅の新幹線上り列車は、朝と夜以外は毎時12分にひかりがやってくる。帰り際、乗ろうと思えば乗れるのだが、軽い急ぎ足のまま乗ることになり、妙に混んでいることもあって乗変による指定席は確保できず必ず自由席、しかも殆ど座れないという、疲れた体にはけっこう辛い乗車時間となってしまう。

ひかりが出て、11分後にこだまがある。どの号車も比較的空いていて自由席でも選べるくらいの余裕があり、東京駅には先発したひかりの36分後で到着する。疲れて座りたいから、こだまで行くべぇと、23分発のこだまをチョイスする。これなら自由席であれば、乗変を掛ける必要も無い。

どこに座ろうか。「ケツにしよう」と最もガラガラなのは、一番後ろの1号車とのこと。ケツか…うーん…と若干気が進まないが、N700系の走りの真髄を知るには、ここが最適。最後尾の印象が悪いのは、300系の酷い乗り心地を味わっていたたため。

まだ300系が61本全て揃っていた時代。1980年代後半、大幅な軽量化と最高速度向上を重点項目として設計された300系だが、乗り心地については今ほど重視されていなかったため、走り出せば常にガタガタと大きく揺れ続けていた。特に上り列車の1号車は、モーターが付いていないので他の号車の引っ張られるカタチになって揺れやすく、空力特性の問題から更に揺れが増幅されてしまう欠点がある。一部の編成は700系の足回りを流用して少しでも乗り心地を良くしようとしたが、大きく改善するまでには至らなかった。この経験から、現行の新幹線は必ず乗り心地の良さを全面的にアピールするようになっている。

一時期は品川と三島間を通勤列車として毎日使っていて、やはり帰り際、着実に座るには1号車しかなかった。三島での仕事よりも、300系の乗り心地の悪さで疲れてしまっていた経験があって、今なお新幹線の最後尾は避け続けている。そんなネガティブなことを払拭できるか。着席して発車を待つ。

「安全よし」で浜松駅を出発、強力な加速力でトップスピードに入る。まず中間車と変わらぬ乗り心地に驚かされる。空気が乱れるトンネル内での下り列車とのすれ違いも、壁側に吹き飛ばされるようなことはない。鼓膜での圧力変化を感じて、トンネル内に居て対向列車とすれ違っていることに、ようやく気づくほどだ。映画U-571にて、チーフのクロフ軍曹が水深200mまで沈降したUボートに対し「大したもんだ、この深さでもビクともしない」と驚いていたが、そんな心境。ここまで乗り心地が良くなるものなのか…と。

結局、乗車疲れを殆ど味わうことなく降車。最後尾の印象の悪さは完全に払拭できたので、今後は自由席で座るために後ろを選ぶことに躊躇しないだろう。N700系からN700A系へのマイナーチェンジでも、車内の居住性が向上している。次のN700S系ではどうなるか。また一つ、楽しみが増えた。