「代打ワシ」で有名な、初代ミスタータイガースこと藤村富美男氏。「代打、オレ」で打席に立ったのが古田敦也氏。両者とも監督兼選手という立場だったので、そういったプレーを見ることができた。
そんな監督業が「オレ、やる」と言って、得物を握って出てくる様子は野球だけの光景かと思っていたら、今の職場でも以前は普通に見られた光景だった。
入社したときにお世話になった最初のボスは、「暇つぶし」と口にしながらドライバーを手に、片っ端から不良箇所を直していた。異動に次ぐ異動でやってきた現場においても、ボスの補佐担当が「人がいない?いいよオレがやる」と、機器のメンテに汗を流していた。曰く「机に座ってるの、つまらんだよ」と一仕事を終えたらタバコをスパーッと吸っていた。
共に簡単かつ手数が少ない作業に留め、ささっと終わらせて事務所に戻っている。そんな様子に「もっとやっていけ」なんて笑いながら注文を出す人もいたが、ボスの立場としては連絡対応や他部署との調整が本来の仕事で、現場に留まり続けることできない。合間を縫って現場に出ていたわけで、そこを分かっていたからこそ「もっとやっていけ」という発言は、感謝の意味があったようだ。
今は「責任の明確化」として上層部は手を出すことはなくなり、現場監督という立場の私も手出しすることは難しくなった。そんな中、たまたま人員の都合が悪く、不具合箇所の修繕に対応できる人がいないことに気づいた。動けるメンツは既に他の作業に追われており、体力回復を優先させるべく、追加で作業をやらせるわけにはいかない。となれば「俺がやるよ」と、チェックリストを用意させて、しばらくぶりの現場作業に没頭することになった。
作業のコツや流れは全く忘れることなく、すいすい進めてあっという間に終了。「もう終わったから休んでていいよ」「え?やってくれたんです?」と少なからず驚きを与えていたらしい。
作業のまとめをやっていた管理者側から「ところでこれ、誰がやったの?」と聞かれたので、「代打は俺っす」と申告。人員が厳しい状況に陥っていただけに「ま、そうだよね」と納得。現場監督として歩き回る以上は、定例作業全てをこなせないとダメで、いざと言うときはどの現場でも対応できるように心がけている。