四本目の時計でトリとなるのは、1980年代のセイコーシャリオ。セイコーの時計は、時代が機械式時計からクォーツ時計へ移り変わっていく様子がハッキリと分かり、輪列の配置にも馴染みがあるので、最後の楽しみとして後回しにしていた。

一目見ただけで、セイコーの腕時計と分かる秀逸なデザイン。シャリオは、現在でも販売が続くドルチェのご先祖様にあたるそうだ。クォーツが当たり前になった現代では見られなくなった、水晶マークが文字板に光る。昨日の記事で書いた、ローマ数字の向きについて。セイコーの時計では、写真のように全ての数字が中心へ向かって描かれている。

風防内の破片を除去してほしいというのが、シャリオの依頼内容。この破片の正体は文字板から剥がれた塗装。写真でも分かるように、文字板の縁部分の塗装が剥がれていて、これが運悪くガラスの隙間に引っかかってしまった。
文字板の塗装が脱落してしまう現象は、時計が古くなるだけ発生しやすくなるようだ。脱落を防ぐ手段といえば、定期的にオーバーホールを行って、内部の湿気を追い出してケース内や文字板を乾かしてやるのが近道。
縁部分が既にボロボロになっているので、この先も使用や保管中の振動で再び塗装が剥がれてしまい、破片が風防内で動き回る可能性は極めて大きい。

ムーブメントの様子。トリマコンデンサ、金属パーツ、人工ルビーが使われており、機械式時計からの進化と伝統的構造が続く最後の世代だろう。ここから時代が少し進むと低コスト化がどんどん進行し、オーバーホールを前提としないムーブメントに変化していく。人工ルビーが減り、プラスチックパーツが中心となって、精度微調整用のトリマコンデンサも接続されなくなる。オーバーホールをしてまで使い続けるためのクォーツ時計は、高級品やそれなりの価格帯のモデルに絞られていく。

とても長く使われた痕跡として、ケースの腐食。裏蓋がはめ込まれる溝まで達しており、防水性は完全に失われている。

オーバーホール時に交換された純正バンドが収められていた。現物をチェックしてみると、裏の生地や革の縫い方は、今の純正バンドと全く変わらないことが分かった。手前の黒いバンドが、私が普段使用している時計のもの。

表面についても、このとおり。滑らかだった表皮は細かいヒビが少しずつ入っていき、強い曲げのストレスが掛かる穴部分から裂けるようにして裂けていくようだ。使用による劣化で、どのような変化を起こしながらボロボロになるのか、貴重なデータを採取することができた。
こうして四本の時計の点検は終了し、現在は再びシチズンホーマーのテンプ分解の練習に戻っている。一日一本の記事としていたが、作業の時間軸としては全て先週の出来事。後は納品後の最終連絡待ち。ご依頼くださいましてありがとうございます。>BRZで快適生活管理者様
シチズンホーマーは、預かってからあまりに月数が経過しているため、風防交換を含めて今夏中に仕上げる。既に次の時計が二つ、分解待ちとなっているが、しばらくはホーマーが優先となる。