売却報道

芳賀地区広域行政事務組合より、C11形蒸気機関車325号機売却の入札公告が行われた。

つい先日、真岡鐵道で運行されている『SLもおか』に乗ってきたばかりだ。そもそもの理由が、財政難を理由にC11形蒸気機関車が引退するという報道があり、それならばと実車の見物と牽引列車に乗ろうという流れ。そんなこともあって公告の第一報は、なんというタイミングか…としみじみ思ったもの。

入札参加者資格が少々アレで、

(4)栃木県内に本社(店)又は支社(店)、営業所若しくは事業本部を有し
(5)鉄道事業者であること
(6)「C11」の売却により、残りの1両でのSL運行に支障が生じた際、「C11」の貸借等、相互の協力関係が築けること
(7)譲受後の「C11」を栃木県内で運行できること

となっている。東武鉄道に対して、見方によってはJR東日本に対し「お願い入札して」と言っているようなものか。

C11 325号の所有は真岡鐵道ではなく、沿線自治体で組織する芳賀地区広域行政組合となっている。真岡鐵道は第三セクターで、C11 325号も自治体の所有物となるため、単純に考え付くのが「税金大食いの割りにリターンが少ないから」。財政難が理由となっている点からしても、間違いなさそうだ。

SLもおかを往復で乗った。沿線は大勢の鉄道ファンがやってきていて、一斉にカメラを向ける。

真岡鐵道の沿線風景

「車」でいい写真が撮れる地点に行き、「SL」を撮影すれば、その日の目的は終わりだそうだ。

茂木駅から、真岡駅、下館駅方面へ向かう上り列車の車内は、こんな閑散具合だったりする。

SLもおかの車内

空席が目立つ。途中で五月雨式に乗ってくるが、下り列車ほどの乗車具合までは至らず。

その下館駅からの下り列車については、ボックス席は一通り埋まるが、子連れ一家が一区画を広く使う程度で、満席にはならない。下館駅から乗車し、真岡駅で下車。茂木駅に着くころには、客もだいぶ減る。

下館駅から真岡駅ならば、真岡駅にあるSLキューロク館に立ち寄れるが、駅の利用状況としては500人前後というから、実態はマイカーで直接SLキューロク館に向かい、展示や運行されているSLを見て終わりだろう。

SLを運行することで、乗客と、乗客よりも圧倒的に多い撮影者が、どれだけ町に金を落としやすい環境に仕上げられるか。これが本当のSLによる町おこしではないか。現状ではSLを運行すれば人が乗るし、後は当人に任せる…という、行政にありがちなSL頼りの甘い考えのまま、現在まで来てしまったと考えられる。

SLの運行がスタートして集客効果が出たとしても、時間の経過と共に運行が日常的になっていけば、「そこにSLが走っている」だけになってしまい、乗客を集めにくくなっていく。都心から視点では真岡鐵道だけでなく、東武鉄道やJR東日本でもSLが走っている以上は、「真岡鐵道のSLに乗りたい」と思わせる施策が必要となるだろう。

例えば、銚子電鉄や三陸鉄道のような一口オーナー制度。口数に応じて優待乗車券や地元特産品の返礼だけでなく、SLの検修作業に立ち会ったり、片道運行終了後の灰清掃や給水の支援を行えるなど。オーナーとしてSLに直接触れることができれば、運行に携わっていることがより実感しやすいのではないか。

SLもおかだけでなく、真岡線の乗客数は減少傾向とのこと。日本の人口減少で、今後はよりますます厳しい経営環境に変わっていくものと思われる。そうなると、よりコストが掛かるSLの運行が危なくなるのも時間の問題となってくる。C11 325の売却は、今後の真岡鐵道の環境が大きく変わるスタート地点になるのかもしれない。