機械式時計においては、磁気に近づけてはならない。磁力の影響で精度が狂い、最悪止まることがある。機械式時計だけでなく、クォーツ式でも磁気を帯びたものに近づけると、簡単に狂う。スマホやパソコンは機械式時計にとっては大敵で、バッグや財布の留め具に使われる磁石も、やはり危ない。
時計が磁気を帯びてしまうと精度が悪くなり、しかも磁気を完全に抜くには分解して、部品単位で磁気を抜いていかなければならない。そんな厄介な症状が、預かっている鉄道時計で発生していたことが判明し、またも作業中断。磁気抜きの手段を取ることになった。
ネット通販やオークションでは、時計用磁気抜きツールがピンからキリまで、多数見つかる。特に目に付くのが、青いケースの磁気抜きツール。典型的な中華ツールのようで、レビューも様々。国内在庫ではなく、中国からの発送となれば、時間が掛かる点から却下となった。
磁気抜きに関しては時計だけでなく、オーディオ界にもあった。カセットテープの録音/再生ヘッドは、本来は定期的に磁気抜きをしなければならず、かつてはそのためのツールが多数売られていたようだ。デジタル音源がメインになった現在においては、新品はなくなっており、中古品が流通している状況だ。説明書付きのヘッド消磁器をゲットし、さっそく時計の磁気抜きにチャレンジしてみることになった。
説明書を読むと、『強い磁気が発生するため、腕時計は必ず外すこと』『1mは遠ざける必要がある』といろいろ書かれており、部屋の真ん中に磁気抜きしたい部品を置き、そこから周囲1m以内に障害物はなくして、スムーズに動かせるようにセッティングする。電源を入れずに動かす練習を何度かして、いざ本番。

磁石の棒と化していた竜頭の磁気抜きでは、消磁ヨークを平行に動かしながら静かに離していくと、うまく磁気が抜けることが分かった。方位磁針をグルグル回すほど磁気を帯びていた竜頭は、無事に磁気抜きに成功。幸い、竜頭以外の部品については磁気は帯びておらず、難しい工程をクリアすることができた。
オーディオ用のツールが、時計にも使えることが分かって小躍りして喜んだほどだ。オーバーホール中に磁気帯びが判明すればすぐに消磁できる体制が整い、また一つステップアップすることができた。