鉄道時計をお借りして

会社でたまたま時計の話をしていたところ「鉄道時計を持っている」一言があった。どういう時計か詳しく聞いてみると、自分でぜんまいを巻くタイプだそうで、そうなると61スカイライナーベース…セイコーの鉄道時計だろう。そして秒針の位置は、普通の腕時計のようにセンターセコンドタイプ。ただ、「調子が悪くてすぐに遅れる」「直せれば直したいが、どうしたらいいかも分からない」とのこと。

どういう不調なのか興味を持ち、実際に会社へ持ってきてもらい、その場で簡易的な診断を行ってみた。遅れについては、15分で4秒の遅れなので、時計としては使えたものではない。ただ、ぜんまいの巻き上げは軽やかで、止まっているわけではなく、動作だけならば生きていて、しかも内部に錆はなし。不調の原因調査と解決方法を見つけるために、しばらく預かって詳細なチェックを行ってみることになった。

SEIKO PRECISON 6110-0010

セイコーの鉄道時計。いつか入手しようと思っていた憧れの手巻き式機械時計の一つで、調査名目で一時的ながらも手に取ることができた。運転台に置かれていると計器らしいちょうどいいサイズは、部屋に持ち込むと妙に大きく感じる。文字板には伝統の諏訪マークが入り、今なお通ずるデザイン。1977年4月製、国鉄内で使われていたそうだ。

SEIKO Cal.6110

ムーブメント、Cal.6110とご対面。駆動音がとても大きく、裏蓋を閉じていてもハッキリと聞くことができ、開放状態ではより大きくなる。スペック上では、テンプは毎時21600振動のようだが、動きが悪いのか緩やかに見える。テンプのヒゲぜんまいに絡みはなく、美しい渦巻きは保たれていた。遅れの原因は、まず脱進機あたりを見直すことになりそう。

オーバーホールの痕跡

ムーブメントの固定ねじ周辺には、大きな傷が見受けられることから、何度かオーバーホールを行っている可能性がある。それにしても、この派手な傷は酷い。どこの誰が分解したか分からないが、プロがやったならば失格、職人/時計師を名乗る資格はない。先に掲載した写真においても、文字板に二つ、締め過ぎたねじ(通称乳首)のようなものが写っていることから、無理なオーバーホールで、余計なダメージを与えていないか不安が出てきた。

長針と短針のズレ

さらなる不安要素が、この長針と短針のズレ。適度に圧入されている部分なので、ズレるとなれば落下させてしまうのも原因の一つに含まれている。製造から今日まで41年以上に渡り、どういう扱いをされてきたかは分からず、道具として使われ続けてきた過去ならば、一度や二度、落としていたとしても不思議ではない。各歯車の軸も点検せねば。

不調の原因を探るのと同時に、どうにかして直せないか、血が騒ぐもの。幸い、返却期限日等は設定されていないので、焦らず時間を掛けて、チェックしていこうと思う。