今から15年前となる2001年。CPUから発せられる熱は悩ましき問題で、このままでは原子炉並みの熱密度に達するかもしれないと、intelから衝撃の発表があった。原子炉に留まらず、ロケットエンジンの噴射口を突破し、最終的には太陽表面と同等になる予測まで出たほどだ。既に高発熱な半導体の扱いに苦しんでいる自作PCマニアだが、今後原子炉やロケットエンジン、そして太陽表面とまで表現された熱過ぎる半導体が出るかもしれないと発表があれば、こんなに面白い話はない。メーカーは危機感を覚えていたようだが、自作PCマニアにとっては、どこかワクワクするような期待感を抱いていたと思う。そんな連中に呼応するかのように、毎週のように数々の冷却パーツが発売されていた時代だった。
CPUだけでなく、パソコンを構成する半導体からの発熱は、増え続ける一方だ。とにかく冷やさないと、自ら発した熱で半導体が破損し、または熱暴走を起こす危険性を秘めていた。2002年、冷却性能を最優先に、大量の電力を消費することで圧倒的な風量を実現した超高速電動ファン『DELTA FFB0812EHE』が発売された。それまで発売されていた電動ファンとは全く異なり、「消費電力が大きいので電源に直接接続」「自走するので必ず固定する」なんて注意書きがされていた。通常の電動ファンであれば0.1A前後の電流となるが、DELTA FFB0812EHEは1.35Aと大電流で、確かにマザーボード上の貧弱な電源回路では燃えてしまう可能性があった。回転数は5,700rpmに達し、静翼と動翼を組み合わせた構造から発する風量は段違いで、注意書きのとおりに固定しないと走り出した。そしてジェットエンジンを彷彿とさせるサウンドを響かせ、半導体の廃熱どころか粉塵すら吹き飛ばすような、本当に冷却に特化した電動ファンだ。
半導体技術の進化から、熱密度は太陽表面に達するという予測は外れた。おかげで冷却方法もずいぶんと変化し、大きく静かな電動ファンを使い、しかも温度に応じて回転数を自動的に制御するようになった。かつてのような、轟音を伴って大風量を生み出す電動ファンは無くなったのだろうか。答えは否。数は少ないながらも、もはや暴力的とも表現できる性能に進化したモデルが発売されていた。

それが今回の記事のネタになった、PEAD1A238BH(写真左側)だ。回転数は最高6,500rpm、5.44Aの電流値なんて、元祖自走電動ファンのDELTA製モデルとは別次元の数値。さっそく12Vの電源に接続してみると、加速しながら最高回転数に達し、応じて音も大きくなっていくので、ジェットエンジンのような印象を抱く。大風量なのでもちろん自走し、よく動き回る。手に持つと、ファンブレードの超高速回転によるジャイロ効果まで実感できる。こんなスペックなので、「指を入れると大ケガする」とは、切断する恐れがあるということだ。風量はともかく、大騒音により使いどころは限られてくる。買ってから使う場所が無いことに気づき、当面はストック部品扱いになった。発売は2014年で、パソコン用というよりは産業機器向けの汎用品であるためか、今も入手できる。