縦キズ

冬になれば、乾燥であかぎれに至らないよう、保湿クリームは欠かせない。むかーしむかし、太っていたころはあかぎれとは無縁だったが、皮脂が多かったことで自然と保護されていたのかもしれない。

粉塵だけでなく、機械油や各種薬剤といろいろな物質を手で扱うことが多く、さらには細菌汚染もあったりして、何かと汚い職場だ。そんな環境下なので、手洗いは欠かせない。家庭用とは比べ物にならない、強力な洗剤でガシガシ手を洗うので、皮脂が殆ど失われた状態が続く。そして乾燥した空気で水気が完全に飛び、柔軟性が失われた皮膚を一気に伸ばしたとき、裂けてあかぎれとなる。

裂ける場所は決まっていて、指の関節部分のひだひだ。拳を握ったときに関節部分の皮膚が伸びるが、乾いてしまっているので筋が動きにくくなってしまい、裂けて流血となる。大きく裂けたときはパキッと音がして、同時に衝撃が伝わってくるほど。仕事にも支障が出ることから、保湿状態は常に気を使っていたのだが。

指先のあかぎれ

今度は爪に沿うようにして裂けた。今のところ、右の人差し指部分だけが割れている。ここが裂けていると、右手を使う場面では必ず痛みを感じるようになった。

まず朝。起床してすぐのルーチンワークは、腕時計のぜんまいを巻くこと。親指と、この裂けた人差し指の先端を使って小さな竜頭をクルクルと回すが、傷口を押す方向に回さなければならないので、痛みで目がすぐに覚める。

仕事ではドライバーを握って、ネジを緩めて締めて…という動作で、やはり傷口を押し、または引き裂く方向に動く。なんか指がいってぇな?と思って患部を見ると、せっかく閉じた傷口が広がってドライバーのグリップまで血が付着。

帰ってきて、今度はパソコン。キーボードをカタカタと打っていると、人差し指のタイピングでは、ちょうどこの傷口に力が掛かるようになっていて、キーを押すたびに痛みがズキズキと。

マンガ『とろける鉄工所』の中に、指を切ったところに瞬間接着剤を流し込むことで、激痛による緊急モードを発動させ回復を促す…というシーンがあるが、さすがにやる勇気はない。かといって、似たようなコンセプトである液状絆創膏(コロスキン)では、指先に異物が付着している感覚が馴染めず、すぐに剥がしてしまうため使えない。

結局、傷口が塞がるまでの最低4日間は我慢することになる。仕事が終わる直前に応援要請が入り、大急ぎで対処。終わってから指先の痛みが強くなっていることに気づき、広がった傷口と滲み出る血から、あかぎれを通り越して切り傷に近い状態になっていた。アドレナリンラッシュ状態で痛みを感じなくなるとは、どうやらこのことらしい。

コロナ禍で、界面活性剤による殺菌効果、洗剤を使った正しい手洗いによる感染防止が注目されるようになったが、それだけ手洗いができていない世の中だったのかもしれない。今シーズンにあかぎれ患者が多かったらビンゴか。