AI…人工知能の進化により、「人間に代わってAIが仕事を行うようになる」「AIで職種が消える」といった記事が溢れるようになったのがここ数年のこと。中でも2015年12月、野村総研とオックスフォード大学の共同研究で「10~20年後に日本の労働人口の半分近く仕事が、AIやロボット等で置き換えられる」と発表されたことについては、かなりの反響となった。
と、同時に、AIで置き換わるだろうといわれている仕事がホワイトカラー系ばかりであり、その一方で、機械は人間でいうところの触覚や嗅覚といった「感覚」を再現することが苦手とされ、よってブルーカラー系の仕事はしばらく残るといった趣旨の記事も見かけるようになった。
現在、電車のメンテ屋というブルーカラー系に身を置く人間としては、しばらくはAIに置き換わらないなんて本当にそうか?と思っている。
毎日、大量に運行している編成において、編成単位、個々の車両でのありとあらゆる走行データを積み重ねていく。機器の各電圧電流、温度湿度、動作状況、空気圧や油圧、回転数、振動数、積載重量、その他諸々の数値となるもの全てだ。現在の検修は、作業員が目視、触覚、嗅覚といった「人間の感覚」で良否を判断しているが、積み重ねてきた走行データと人間の感覚で下した良否を照らし合わせていくと、ある種の傾向が見えてくる。
例えば、停止状態から加速し、機械的なブレーキを使って減速して止まるまでを1サイクルとして、ある一定のサイクルを繰り返すと、ブレーキパッドが摩耗して使えなくなることが分かったとする。もちろん、営業列車種別の差や運転士の癖もデータとして加味するわけだ。こういった、条件と実例の各データを突き合わせていく作業は、MATLABのような機械側の得意分野ではないだろうか。
現状では規定距離以内での定期検修体制で、大勢の人間がその都度チェックしてブレーキパッドを交換しているが、AIによる自己診断が定期検修体制となり、ブレーキパッドをチェックする人間は不要となった。AIは「摩耗したブレーキパッドを交換せよ」と人間に指示を出し、交換員として残った少ない人間がせっせとブレーキパッドを交換するようになる…なんて、あくまで空想だがありえない話ではないと思う。ブルーカラーの中にいても、これはAIでなんとかなるんじゃね?という作業はあちこちにあり、決してAIに奪われないと安泰できるものではない。
近い将来、ホワイトカラーの仕事がAIに奪われる可能性があるとなれば、次いでブルーカラーの仕事がAIに置き換わることも不思議ではない。ちょうど今が、仕事のAI化と旧来の人間作業の変わり目だとすれば、現状に甘んじていては先細り、AIに奪われていくだろうし、AI化を見通してプログラミング言語に慣れておけば、AIを支配する側に立てるかもしれない。