下顎水平埋伏知歯抜歯術を行ってから、5年が経過していた。
簡単に言えば、水平に生えてしまった下顎の親知らずを抜く手術だ。歯肉を切開し、歯冠(歯の頭)を切断して除去。次に、歯茎に残った歯根を抜き取る…という流れだ。歯と顎の骨の癒着状況によっては、骨を削ることもあるそうで、どうなるかは当人の顎次第。
幸い、歯と顎の骨の癒着はそこまでではなく、スムーズに抜くことはできたが、痛みに耐えながらの作業…ではなく、手術となった。手術日までの一週間で疲れが溜まっており、ついでに寝不足により、麻酔が効かなかったためだ。合計3回の追加麻酔を行っても痛覚はあって、擦り傷を垢すりタオルでゴシゴシ磨いたときの、ビリビリとしたあの痛みに耐えることになった。
体調によって麻酔の効き具合は派手に変わり、例えば貫通創(文字通りトンネルが開いた)をやったあとの緊急縫合や、腫瘍の手術の際は麻酔が効いていた。寝不足一つで運命は変わるので、麻酔の予定があるならば、しっかり寝ておくことが最大の準備となる。
術後、腫れと発熱が始まる中、歯医者から真っ先に向かったのは家ではなく、近所のホンダディーラーだったりする。待合室で不穏な噂をキャッチし、時間との勝負と判断してシビックRの部品を即発注、それから帰宅となった。夜になってから38℃の熱で、翌日も37℃とまだ高く、平熱が35℃の身からすればパンチ力のある体温だ。
抜歯後、親知らずがあった部分はクレーター状になっていたが、5年が経過するうちに骨が盛り上がっていき、今ではすっかり周囲と馴染んでいる。大雨の日、昼過ぎに歯を抜いて、そのままディーラーに向かい、部品購入後に発熱で二日間ダウンしたというなかなか濃い行動は、今でもはっきり覚えている。