GSの電池交換と簡易点検

「ずっと止まったままだけど、普段から使えるようにしたい」ということで、私のところに持ち込まれたのがグランドセイコーの腕時計だ。今回は電池交換の依頼だけだが、製造から四半世紀を越えた時計となることから、簡易的な点検も同時に行っておく。

1989年製の8N65-8000

シリアルナンバーから、1989年10月製造のものだった。とても美しい文字板で、グランドセイコー特有のバーインデックスの強い輝きはばっちり健在しつつも、針は全体的に薄くて細く、時計全体が小さな印象を抱く。これは内部のモーターの出力が弱かったため。

裏蓋をオープン、金色の防磁プレートが目立つ

前回の電池交換が街の時計屋だったらしく、裏蓋の向きが逆だった。開け口が竜頭側にあって、勢いで破壊しないように慎重に開放する。裏蓋の次に防磁プレートを外せば、ムーブメント本体とご対面だ。竜頭を外し、ケースからムーブメントを抜いてガラス内側と文字板の清掃を行う。

僅かばかりの錆を発見

文字板の裏側に、僅かばかりの錆を発見した。ここは竜頭の巻き真が通り、ケースを貫通して外気と接する部分だ。オーバーホールを怠り、気密状態があまり良くなかったことから汗や水分が入ってしまい、錆びてしまっている。38クォーツの経験から、積み重なった錆だけを摘み取るだけに留めておく。

Cal.8N65

電池をセットする前に、金色に輝くCal.8N65を見る。年差±10秒を誇る、超高精度ムーブメント。その一方で、高級ラインではない一般タイプのムーブメントと似たり寄ったりな石数に、小さな電池の内蔵に留まっており、厳しい意見を食らったという過去の話が頷ける。1980年末から90年代初頭に掛けてのセイコーは、失われてしまったグランドセイコー本来の姿を取り戻すため、模索し続けていた時代だった。グランドセイコーらしさを誇る、大きな針とカレンダーを搭載した後継機、Cal.9F83が登場するのは1993年のこと。

長年使い込み、オーバーホールを行っていなかった関係で、文字板内に手垢由来のゴミやホコリが混入しており、分解して可能な限り清掃した。錆まで発生していることから、3年後の電池交換のタイミングで、メーカーでのオーバーホールを申し込んだほうが良さそう。古い時計でもオーバーホールを受け付けてくれるのが、高級ラインの強み。