エアコンの『中』に入ったことがある。遊んでいるのではなく、当然仕事でのこと。超大型空調の点検整備での出来事だ。
家庭用エアコンや自動車用のクーラーにおいて冷房を使うと、ドレン水と呼ばれる水が出てくる。エバポレータと呼ばれるアルミのフィンに空気が当たると冷やされ、水分は凝縮されて水滴となり、排出される。コップに冷たい水を注ぐと、コップ表面に水滴がびっしり付着し、いつの間にかコップの下が水浸しになっている現象と全く同じ。
この超大型空調ではドレン水は自然落下せず、排水ポンプによる強制吸引により機外へ排出している。排水ポンプがどう動いているのか、実際に目で確かめるために空調ダクトの中に身体を突っ込む必要があった。それだけのこと。
修理後の点検工程においては、動作チェックは自動で進む。冷房モードがあるということは、暖房モードも存在する。ダクトに身体を突っ込んで観察していると、すぐに暖房モードに切り替わり、一瞬のうちに加熱されていく。冬の朝一発目等で、冷えた空間を数分で暖める必要があり、体感的には電熱線並みの速暖性能。
実際のところ、冷たい突風を楽しんでいる余裕なんかは無く、轟音の中、冷風と熱風が繰り返し吹き付けられることに耐え続けなければならなかった。よく冷えた室内から、いきなり炎天下に出れば、短時間で身体の調子がおかしくなるのと似たような感じ。
詳細なデータを取るために、別途温度計を手に持って計ることもあった。温度変化の激しい強烈な風量は、指先の感覚を失わせるには十分な力を持っていた。最高の調子を引き出すに、身を挺することは躊躇しなかった。楽しんで仕事していたし、複雑な機械を自分の手で直しているという誇りもあったわけで。