目の毒そのもの

一年前、2019年の1月10日。人類の月面着陸50周年を記念して、オメガは月に降り立ったスピードマスターの復刻版を登場させるべく、プロジェクトを進行していると発表。

月面に持ち込まれた時計として、オメガスピードマスターはあまりにも有名だが、実際は事情が異なる。現行のスピードマスターのムーブメントはマイナーチェンジバージョンのCal.1861/1863であり、月面で計時していたスピードマスターのムーブメントは、マイナーチェンジ前のCal.321となっている。

OMEGA Cal.321

月面に降り立ったムーブメントは、このCal.321。18,000bphのロービート、チラネジ付のテンプ、クロノグラフはピラーホイールによる制御となっている。

OMEGA Cal.1863

現行のムーブメントはマイナーチェンジによって変更され、Cal.1861/1863となっている。末番の1と3の違いは、装飾用カスタムが施されているか否かの違いで、ベースは一緒。写真はCal.1863。振動数は21,600bphにアップされて精度が向上、大量生産に向けてクロノグラフの制御はカム式になり、テンプもシンプルなものになっている。

復刻版プロジェクトは、マイナーチェンジ前のCal.321を再びデビューさせるとされ、憧れのムーブメントがブラッシュアップされて再登場するとなれば、非常に楽しみになってくる。2019年10月、復活したCal.321を搭載したスピードマスターが発表された。文字板に月の石を配置し、ケースはプラチナと金の合金で製造されたスペシャルなモデルで、その価格は7,018,000円。手が出せる価格ではない。

今年に入って7日のこと。Cal.321を搭載した復刻版スピードマスターの第二弾が発表された。今度はステンレスのケースで、スピードマスターのファーストモデルをベースにした39㎜というサイズ。予想価格は「100万円くらいなら視野に入るなぁ」と思っていたりしたが。

OMEGA スピードマスター 311.30.40.30.01.001

定価は1,661,000円。予想よりも60万円も高く「160万!!」と口にした瞬間に「孫悟空の戦闘力を見たギニュー隊長みたい」と突っ込みが入ったほど。

ベースにしているのが、月に降り立ったref.ST105.012ではなく、さらに旧世代のref.ST105.003となっているそうだ。これは1965年にエド・ホワイト氏が、アメリカ人初の船外活動を行った際に装着していたスピードマスターだ。よって竜頭やクロノグラフボタンを保護するガードが存在せず、外観は細身の印象。

アポロ計画ファンなので、月面でのバズ・オルドリン氏が装着していた着陸モデルがベースだったなら、真剣に悩んでいただろう。例えば、所有するスピードマスターを売却して、その金と貯金を併せて買い直すとか。実際は、500円玉貯金で買ったスピードマスターなので、その意味でも手放すわけにはいかない。

オメガのスピードマスター発売パターンからして、将来的に復刻版Cal.321の月面着陸仕様が出てきても不思議ではない。まず目にすることは無いと思っていたCal.321が再登場したことで、いつかは実機を見ることになるだろう。写真でさえ欲しいと思わせるデザインなので、見てしまえばさらに危険な誘惑になること間違いなし。目の毒だ。

(注釈)
1.ムーブメントの写真は、WatchBaseより引用。

2.スピードマスターCal.321はオメガ公式Webサイトより引用。