リューズの回転が固い原因は?

「リューズが固くて巻けませんので診てくれませんか」と腕時計が持ち込まれた。

セイコー5スポーツ

セイコー5スポーツ。ムーブメントはCal.4R36で、機械式時計の分解練習で散々いじり回したCal.7S26の同系列タイプ。手荒に扱っても壊れにくく、大量生産用なので構造がシンプル、必要十分な精度を誇る。『時計界のカローラ』『時計界のスーパーカブ』と表現されるのも納得。かつて使っていたセイコー5ミリタリー(Cal.7S26)は、10年近くノンオーバーホールで動き続けた。

まずは事前調査として、リューズに触れてみるが、なるほどこれは固い。これ以上、無理に回そうとすると巻き芯(シャフト)が折れてしまう可能性があり、リューズを抜いて原因を調べてみることになった。ムーブメントからリューズを引き抜こうにも非常に固く、人差し指の爪を剥がしてしまった。ピリピリとした痛みに耐えながら、なんとか抜き出してみるとリューズが回せない原因がすぐに判明した。

リューズの状態

いきなりの結論がコレ。リューズの軸に嵌っているはずのOリングが千切れてしまい、軸に絡みついて回転を妨げていた。一旦リューズをムーブメントに組みつけてみると、スムーズな回転と操作が戻ってきた。現状のままでは防水性と気密性が確保できず、内部への異物侵入の原因となってしまうことから、適合しそうなOリングを手配して到着待ち。手元のジャンク時計をチェックしてみたが、どれもサイズが大幅に違い、装着はできなかった。

輪列のデザインその1_4R36

Oリングが到着するまで、Cal.4R36を眺めてみる。この緩やかなカーブを描いた輪列受けの形状は、見覚えがある。

輪列のデザインその2_9R65

グランドセイコーのCal.9R65の輪列受けとそっくりで、これが見覚えのある要因。同一メーカーだけに、各歯車の配列方法やデザインが似てくるのかもしれない。写真中央部の紫色のルビーで支えられているのが、自動巻きローターの動きを角穴車に引き継ぐ伝達車で、すぐ右側にある大きな歯車の下に、主ぜんまいを収めた香箱がある。

4R36の緩急針

続いてテンプ周辺。Cal.4R36の緩急針はエタクロン式。ルーツはETA社にあるようで、事実上の業界標準だとか、特許切れで採用が増えたとか、そんな趣旨の記事がよく見つかる。ピンの頭を捻れば調整できることから、精度の追い込みも行いやすいようだ。そう遠くない時期に、タイムグラファーを買うことになりそう。

7S26の緩急針

こちらはCal.7S26の緩急針で、シンプルなねじ式。Cal.7S26は練習用と割り切っていたことで、けっこう無茶ができた。緩急針にドライバーの先端をコツンと当てただけでも歩度が狂うことが分かり、現物では致命傷となる「ひげぜんまいの絡み」を実際にやってみたりする等、徹底的にいじり回した思い出。

部品到着待ちで、退院は数日延びることになった。しばらくお待ちくださいな。>所有者