関東甲信地方においては、台風17号と18号から湿った空気が流れ込み、大雨が降りやすい状況が続いている。滝のような大雨が降り始めたと思ったら小康状態になり、再び大粒の雨…ということを繰り返している。各地の川も増水しており、例えば多摩川は野球やサッカーのグランドが完全に水没し、川の水は濁流となって強い勢いで流れていた。この状況は、明日いっぱいまで続くようだ。
報道等で、大雨で道路が冠水しているにも関わらず、水を巻き上げながら走る車が映ることがある。巻き上げた水はルーフより高いところまで飛び散っていることがあって、思った以上に深い冠水状態になっていることを意識させられる。こういう状態で車を走らせるということは、真っ先に思いつくのがハイドロプレーニング現象。教習所でも習う現象で、タイヤと路面の間に水の膜ができてしまい、水の上を滑るようになってしまい、一切の操縦が利かなくなる。操縦ができなくなることから、タイヤのグリップ力が自然と回復するまで、成り行きに任せるしかない…スピンしたらどうにもならないという、恐ろしい現象。
これだけではない。車輪の軸には、ハブベアリングという大きなベアリングが備わっていて、冠水した道路に突っ込めば当然ながら浸水する可能性が出てくる。シールドされ、グリスが充填されているベアリングとはいえ、粘度が極めて低い水が浸水すれば、錆やグリスが流出し、ハブベアリングが痛む遠因になることがありうる。さらにサスアームのジョイント部分も浸水して錆びてしまうと、摩耗してしまったり、ガタつきが起きてしまうかもしれない。
ドアの下縁以上の水位に達し車内に浸水したら、水気に弱い精密部品の代表格、ECUへの直接的なダメージや、ハーネスやケーブルまで痛むことも考えられる。被覆は毛細管現象で水を吸い続けることになり、しかも抜けることはなく、腐食を誘発する。他にもまだまだあって、低い位置から吸気をするような構造のエアクリーナーを装着していて、大量の水を一気に吸ってしまえば、ウォーターハンマー現象で一発でアウト。コンロッドがグニュッと曲がり、エンジンを回すことができなくなる。直すとしても、相当のコストが掛かってしまう。水は圧縮できない、とても硬い物質なので、走行していればフロントグリル内のラジエターやエアコンのコンデンサーが、あっという間に曲損してしまうだろう。
では、車は運転せず、駐車場に置きっぱなしで冠水していたとしたら。例として、EK9シビックRを用いてみる。

フロアパネルにはあちこち穴が開いていて、徹底的に水攻めにされる。袋状、筒状になっている部分は浸水しやすい分、水が抜けにくいので、長時間に渡って水気に晒されることになり、これが錆を誘発することになる。ちなみにEK9シビックRに限れば、フロアの構造上必ず浸水し、錆びるようになっていることから、冠水なんぞ以ての外。
フロアにも少なからず配線やケーブルが通っていて、錆やショートといった不具合が出てくる。そして動いていないことが災いして、サスアームが十分に水に浸かってしまい、走行中以上にジョイント部分へのダメージが予想される。ミッションは内部圧力の開放と、漏れたオイルを逃がすために、通気口が開いている。ここから水が入ってしまうことも…。
空から落ちてくる雨でさえ、大気中の汚れを巻き込んだロクでもない水であり、大雨で下水管が逆流してしまえば、生活排水、ウンコや小便の混じった汚水そのもの。汚水や、汚水の中の塩分などに電子部品が曝されてしまえば、一瞬で廃棄物になる。
これまで記述した不具合はすぐに出るわけではなく、時間をかけてじわりじわりと蝕んでいく。そして必ず故障するというわけではないことから、仮定形での文面が多くなってしまった。語弊があるかもしれないが、部品の寿命が短くなったという感じか。
自動車を趣味とする以上、あらゆる災害に対して、車の安全をどう確保するか?ということに尽きる(はず)。今日のような大雨に関しては前兆があり、気象レーダー一つでも数時間単位で予測できるので、細かにチェックして車の避難パターンを考えておくことも対策の一つかもしれない。