さて、地震が発生して仕事は少々混乱したが、何とか区切りを付けて帰宅を決めた。とはいえ、東海道線、京浜東北線は動いていないし、少々のことでは動じないはずの京浜急行本線ですら止まっている状況。それでも帰るとなると、徒歩しかない。品川から地元までの10kmを歩くことになった。普段からチンタラ歩いている人を避けるように足早に歩き回っているため、歩行そのものは問題ない。
首都高は全面通行止めになってしまい、車は全て一般道に押し出された。もともと一般道を使っていた車の列に合流していった結果、車道は完全に機能しなくなり、全く動かなくなっている。車の渋滞よりも、徒歩のほうが早いという逆転現象が発生していた。車の中は暖かいかもしれないが、アイドリングしっ放しはガスを大量に食うし、何より便所の問題が付きまとう。全く動かない車列のドライバーは誰もがうんざりし、連絡がつかないだろうから一刻も早く帰りたいのは一緒。誰もが終わりの見えない我慢を強いられているのに、クラクションを鳴らして煽り散らすバカが目立つ。そういう浅はかな行為に及ぶのは、だいたいミニバンに乗っている連中だ。渋滞の横を徒歩で見続けているこちらとしては、嘲笑うしかない。動きたくても動けないのは誰もが一緒で、渋滞の先頭なんて存在しないのだから。
再び大きな揺れに見舞われたときの危険性は大きいものの、大通りを使うことなくショートカットを繰り返し、地元までの歩行距離をできるだけ短くしていく。今回の歩行帰宅に関し、すぐ近くに住む後輩と一緒だった。一人で黙々と歩くよりも、二人で適当な話をしながら帰るだけで、ずいぶんと気が紛れる。地元に近づくにつれて、気になる情報が入ってきた。「停電らしいです。しかも現在進行形で!」と。自宅は大丈夫かなぁ。
確かに、多摩川の橋から見る街は、普段よりも暗い。新築の高層マンションそのものが真っ黒だから、本格的に停電となっているようだ。信号はところどころ灯を失っていて、機能を果たしていない。街灯も暗いままで、渋滞の車のヘッドライトが街灯代わりだ。地区によって給電状況が異なっているようで、道路を隔てて、停電している地域と給電されて通常通りの地域に分かれていたりする。給電されている地域のコンビニに人が殺到していて、外までレジ待ちの列ができている。ここで補給しておかないと危なそうということで、念のため私と後輩もこの給電されているコンビニに立ち寄ることにした。 商品棚は完全にスッキリ。床に置かれた陳列前の商品を直接手に取っている。最も重要となるであろう水と、士気維持のための甘いものを確保。
コンビニを後にした直後、後輩と別れる。やはり後輩が住む地区は、停電が続いているようだ。自宅が存在する地域に入ると、急に明るくなる。よかった、停電は起きていない。家に戻って、状態を確認。部屋のあちこちに派手に揺れた痕跡はあるが、損傷そのものはなし。
帰宅してから計算したところ、ショートカットが功を奏し、会社から自宅までは9kmジャストだった。時間にして2時間。歩行速度は5km/h程度を上下している感じ。普段からハイペースで歩き回っている結果によるものだろう。一度は徒歩で帰宅することになるだろうと思っていたが、まさか本当に実行することになるとは思っていなかった。ひとまず情報収集だ。今回の災害は、地震による被害よりも、大津波による被害のほうが大きいのではないか。
阪神大震災のころと違って、情報伝達速度は比べ物にならないし、何より私自身が大きな揺れを食らったことが、他人事ではないことを痛感させられる。地震の翌日となる今日、街中を自転車で一通り走ってみた。昨日の地獄のような渋滞は姿を消していて、道路そのものはしっかりと機能していた。大きな揺れに見舞われ、一時的な混乱は見られたものの、既に通常と変わりない状態に戻っていた。