ナマは初めて

ここ都心部におけるタヌキといえば、動物注意の看板に描かれたイラストであり、大通りを渡ろうとして車に轢かれたあとのロードキルでしか見ることはなかった。

保土ヶ谷バイパスを走れば、車が微妙に車線をズラして走っていくので何事かと思ったら、やっぱりタヌキが轢かれたか…と出くわすことは何度もあり、東北道や関越道も同様。

昨晩は寝つきが悪く、完全に睡眠不足の状態で夜明け前の住宅地を走り抜けていた。道路をさっと動物が横切ったので、いつもの猫だろうと思ったら、どうも動きが鈍い。猫のわりにはケツが大きく、まるで犬のよう。違和感を抱いて、その動物を見てやろうとしたら。

生きているタヌキ

「何か御用ですか?人間」

タヌキだった。生きている姿を見るは初めてで、これで完全に目が覚める。逃げる素振りは一切なく、どこか慣れているような態度さえあった。ピントが鼻先にあってしまい、微妙にブレているのは人間側が驚いていたため。

歩き回るタヌキ

「あまりウロウロされるのも困るのですよ」

たまたまいた朝の散歩中の人に「ここにタヌキいるっすよ」と声を掛けると、その人もやはり同様に驚いていた。そして隣にいるラジオ体操の準備待ちの老人会にも声を掛けると、「タヌキいるって!」と完全アイドル…ではなくタヌキの撮影会モードと化す。一斉にスマホを向けても嫌がらない様子は、完全に慣れているらしい。

話を聞いてみると「タヌキがいる噂は聞いたことがある」とのことで、行動圏に入っているのかもしれない。人工島とはいえ緑地帯が存在し、下町特有のゴミの多さから、食べるものには困らないか。

さらに調べてみると、少なからず目撃情報が続いている。決して多くはないながら、都心部にタヌキが確実いると判断できる。結果、道路で轢かれた死体を見ることになっていて、これはこれで裏付けが取れている。

平成狸合戦ぽんぽこではないが、人間に化けて生活していたタヌキが、こうして本来の姿で闊歩しているところを見られてしまったとか。いずれにせよ、朝からとんでもないものを見つけることができた。チャリ通の面白さは、こういうところにある。