ノスタルジックな香り

年末ということで、浴室の集中清掃だ。浴槽の側面壁(エプロン)も外し、ロングブラシで届く範囲ながら、内側もガシガシと磨いていく。24時間換気システムの構造から、湿気は籠りにくくなっているとはいえ、黒いシミのような、カビを思わせる点々が見つかってくる。

そこですかさず、花王の強力カビハイターを黒いシミに向かってスプレーしてやり、5分から10分ほど放置してシャワーで流すと、だいたい落ちている。スプレーした瞬間、塩素を含んだ特有のニオイが浴室いっぱいに広がり、分かりやすい例えがプールのニオイ。これが妙にノスタルジックを感じさせるものがある。

今はどうだか知らないが、小学生だった当時、教師は白い塩素の塊を近くにいる生徒に渡して、プールのあちこちに投げ入れさせていた。単純に投げ入れる者がいれば、水切りを演じてみたり、勢い余って民家のベランダまで投げてしまったりと、まぁ危ないことをやっていたと思う。受け取った塩素の塊が、鼻にツーンと来るような強いニオイだったことを覚えている。そんなニオイと思い出が、カビハイターによって蘇るのかもしれない。

小学生5年生の夏。左耳の鼓膜を破いてしまい、開けてしまった鼓膜の穴からの感染を防ぐ理由で、プールは一切禁止となった。ひたすら見学となってしまうが、プールサイドで大人しくしているわけがない。先に書いたように塩素の塊を投げ入れ、「お前、理科得意だったよな?」と水質検査を手伝ってみたりと、やることはそれなりに多かった。「塩素濃度とphの数値出して教えてくれ」と水質検査キットを渡されて…、今なら大問題に発展するようなこともやっていた記憶がある。

ノスタルジックな感傷に浸っているのは短時間まで。明らかに浴室内を漂っている塩素濃度が高くなってきていることを感じ、こりゃ危ないと退避モードに切り替わるのもすぐのこと。運悪く目の近くまで塩素の成分がやってくると、突然目にクる。ムスカの如く「目が!目がぁあ!」となるのもお約束。カビハイターでの清掃作業後は、鼻の粘膜が多少刺激されるのか、鼻の通りが良くなっている。