エンコ危機

毎日のようにバスに乗っている身だが、その乗っていたバスが故障した…なんてことは一度だけ。通勤ではなく、旅行先で乗ったバスが故障に見舞われたことがあり、唯一の事例となっている。

その故障とは、ファンベルトの切断。クランクシャフトプーリーとラジエターの冷却ファンを繋げているベルトが切れてしまい、冷却水を冷やすことができなくなった。終点に着くのが先か、オーバーヒートに陥って運行打ち切りになるか、けっこうギリギリなところだった。しかもこのバス、地方空港と街を結ぶ唯一の公共路線で、乗っている乗客は今日最後の航空便の搭乗客でもあり、こちらもギリギリだったりする。

走っていると、突然ピーピーと警報音が鳴り始め、ソワソワし始める運転手。途中でバスは停止した。無線で「水温がおかしい」「パワーが出ない」なんて報告をするものだから、乗っているこちらとしては冷却系統にトラブルかなぁと呑気に構えていた。他の乗客の方は「飛行機に間に合うのか」「大丈夫なのか」と問うも、運転手は「大丈夫ですから」と言いつつ、明らかに運行ルートを外れてガソリンスタンドに飛び込む。

エンジンルームをガバッと開けて、冷却水の補充と緊急点検。ここから空港まではまだ距離があり、乗客のことを考えれば運行打ち切りは避けたい。ガソリンスタンドを発進してすぐに3速、4速、5速とすぐにシフトアップし、なるべくエンジンの回転を抑えたまま、空港に向かう。相変わらずピーピーと警報音が鳴り続け、恐らくは水温が高いままなのだろう。ちらりと見える水温計の位置が明らかにおかしい。

故障しながらの運行に、緊張しっぱなしの車内。無事に空港に辿り着いて、バス停に止まるとエンジンも停止。安堵と共に降りていく乗客たち。さて私と同行していたS15オーナーといえば、運転手に「いったいどうしたんです?」と聞いてみて、「ファンベルトが切れたんですよ」「え?マジ?」みたいな。実際、車体後部のエンジンルームを見ると、ボロボロに砕けたファンベルトが垂れ下がっており、妙な熱気とうっすらと煙が漂っている。こんな状態で、よくあの距離を走ってきたものだ。

故障に見舞われ、運行打ち切りの危機ながら、なぜ呑気でいられたのか。その日の便で帰ると、家に着くのが遅くなり過ぎてこれはこれで疲れる。そこで空港直結のホテルに泊まって、翌朝の便で帰るべーというプランだったため。万一、運行打ち切りになっても代替バスで空港まで行ってくれればよく、搭乗便には全く影響がない。この経験から、詰め込み過ぎの行動予定は避けるようにしており、なるべく余裕を持たせるプランに落ち着いている。