映画『アポロ11 完全版』を見に行く。アメリカ公文書記録管理局とNASAから出てきた、11,000時間以上の映像データ、音声データをリマスターし、当時撮影されたものだけで構成された、ドキュメンタリー映画だ。余計な解説等が一切無く、アポロ11号の打ち上げ前から打ち上げ本番、司令船と月着陸船のドッキング、月面着陸、地球へ帰還。地球に帰還しても、「おかえり、お疲れ」で終わらない様子が映し出されている。
日本国内でもアポロ計画のドキュメンタリー番組は何度も放映されていて、特にアポロ11号の月面着陸に関しては殆ど同じシーンの使いまわしとなっている。映画内でも、ここはドキュメンタリー番組で見たなと思う場面がしばし出てくるが、その前後に初めて見るシーンがとても多く、「未公開」「秘蔵」という単語の意味がハッキリと理解できる。
人類初の月面歩行ということで、ニール・アームストロング氏にスポットが当たりやすいが、この映画では月面着陸を成功させるべく、多数のメカニック、管制官たち、軍隊の支援があったことが印象深くなるように映し出されている。各人が月面着陸という一つの目標に向かって、懸命になっている様子が手に取るように分かる。ニール氏が、事ある毎に「月面着陸に向けて働いた全ての人の代表でしかない」と強調しており、このことだったのかと実感させられる。
ドキュメンタリー番組では、月面での「これは人間にとっては小さな一歩だが、人類にとっては偉大な跳躍だ」というニール氏の伝説の宣言で終わることが多いが、目的地から帰るときこそ旅の本番ではないか。ということで月からの離陸、「国一を走行中」というあの名言(?)、月着陸船上昇段が司令船との再ドッキングに向けてRCS(姿勢制御用ロケットエンジン)を細かく噴射し、月の上空で船体がゆっくりと回転していくところが次々と映り、旅はまだ終わりではない。『帰る家があることの素晴らしさ』、このキーワードがとても重たいものだった。
宇宙船の建造シーン、地球帰還前の最後のテレビ中継では各乗組員のコメント、ジョン・F・ケネディ大統領の演説もあり、あっという間の90分。エンディングの構成が極めて秀逸で、観客は誰一人立つことはなかった。
宇宙開発やロケットネタが好きなら、ハマること請け合い。アポロ計画のファン、さらに予備知識があると、なお楽しめる。ついでに、1995年公開のアポロ13、公開終了したばかりのファースト・マンの再現度の高さが際立つ。
さて、アポロ13とファーストマンは再現だが、アポロ11 完全版だけでなく、ドキュメンタリー番組ではお馴染み、地球をバックにロケットを切り離していくシーンについて。

第一段ロケットのS-ICが切り離され、背後にある青く輝く部分は地球。画面上部にはJ2エンジンの2機分のノズルが写っている。

続いて、Interstageを切り離す。地球がはっきり見えている。ここまではアポロ4号で撮影されたとのこと。アポロ13では劇中「ちょっと揺れるぞ」という船長の一言と共に噴射が止まって減速Gで前に倒れ、切り離し後にエンジン点火、急激な再加速でシートに押し付けられ「確かにちょこっと…」と司令船パイロットがぼやくシーンだ。

第二段ロケットのS-IIと第三段ロケットのS-IVBの切り離しは、アポロ6号にて撮影されたようだ。切り離しをスムーズに行うためS-II側では4機の逆噴射ロケットモーターが火を噴き、S-IVB側ではエンジン始動に備えて3機のアレッジモーターが動作している。

J2エンジンが点火、青白い炎を勢いよく噴射して再加速していく。アポロ11 完全版のリマスターにおいては、NASAで公開されていた元動画とは比べ物にならないほど、極めて滑らかな描写となっていた。