2013年3月2日(172,038km)、純正ラジエターからの漏水を発見した。アッパータンクに深い亀裂が入って、そこから冷却水が漏れている。よく見れば細かいヒビだらけになっていて、こんな状態でも破裂することなく耐え続けていた。

エンジンが回れば冷却水は100℃以上に熱せられ、逆に停止すれば外気温と同等まで冷え、加熱と冷却のストレスが常に掛かる。そしてエンジンは8,400rpmという高回転まで回し、応じてウォーターポンプも高回転まで回されることから、高い水圧のストレスも掛かる。長年に渡ってこれらのストレスに晒され続けた結果、経年劣化としてプラスチック製のタンクがダメになり、寿命を迎えてしまう。

割れたアッパータンク

いつ破裂するか分からず、冷却性能を向上させることを兼ねて、百式自動車製アルミラジエターへ交換。ハーフサイズを維持したまま、コアの厚さは1層式16mmから2層式42mmにアップ。冷却能力は想定どおりに大幅にアップしたが、その能力はあまりにも高すぎて、普段の街乗りでは適正水温を維持することができなくなってしまった。

アルミラジエター シビック EG/EK用

▲このラジエター、海外の部品販売サイトで同じタイプのものが多数見つかることから、実体としては百式自動車が海外のメーカーから輸入して販売している。ボルト取り付け穴の高さが最大で4mmほどの差があり、若干の歪みが生じていた。価格の割には、製造精度と品質が悪いものだった。

■   ■   ■

2015年12月5日、 冷却能力をいくらか抑えるために、今度は東北ラヂエーターのクールネード/エアリーに交換。ホンダ純正のタンクと27mmの1層コアを組み合わせており、分かりやすい表現なら純正改といったところ。日本製だけあって、作りのよさは格別。歪みやズレは全くなく、キレイにインストールすることができた。

ラジエターの比較

それでも尚、冷えてしまう傾向があった。走れば水温計の針はCに向かって落ちてしまい、サーモスタットが開いていることからすぐには戻らない。5速のギヤ比を0.848から0.787へアップしたことで、エンジンの回転数が低下。これにより巡航速度がアップしながら、エンジンの発熱量が低下していることも関係している。発熱と冷却のバランスを取り戻すために、ついに純正ラジエターに戻すことを決意した。

水温計の針の動き

撮影時期のタイミング上、これはまだマシな例。冬季の冷え込んだ時間帯の場合、暖機運転を終えて走行を開始すると、指針がC側の太い目盛りに一気に落ちてしまうことは珍しくなく、こうなると停車中でも指針は水平になることはなかった。車内暖房まで弱まっており、風量を強めると余計に水温を下げてしまい、オーバークール状態が続いていた。

ラジエターの(三度目の)交換作業

ラジエターの交換となると困難な作業に思えてしまうが、EK系シビックのMT車に限れば外す部品点数は少なく、難易度は高くはない。

必要工具はプライヤと10mmソケットを装着したラチェットレンチ、漏斗代わりの底を切ったペットボトルとビニールテープくらいだったりする。交換実作業時間は20分程度で終わり、冷却水の補充とエア抜きのほうが時間が掛かるほどだ。

ラジエターの取り外し準備

エンジン及び冷却水が、十分に冷えていることが大前提となる。ロアタンク部の作業スペースを確保するため、フロントバンパーも外すlink

まずは図中1番、ラジエターキャップを外し、2番のリザーブタンクを外す。冷却水が多少こぼれることがあるので、身や服装に付着させないように注意。3番のボルト及びブラケットが、ラジエターを車体に固定する唯一のボルト。今ここで外しても作業は可能だが、不用意にラジエターが動くことを防ぐため、アッパーホースの取り外し時までは触れない。

電動ファンのハーネス切り離し

冷却用電動ファンのコネクタを外す。図中黄色矢印のロックボタンを押しながら、上へ慎重に引き抜く。ハーネスは熱と経年劣化により硬化気味で、しかも長さに余裕がない。勢い良く引っ張って、切断しないよう注意。

冷却水を抜く

ロアタンクのドレンコックを開けて、冷却水を抜く。白いコックを少しずつ回し、図中黄色矢印で示している排水用の穴から、冷却水を排出する。冷却水の勢いが弱まってきたらコックを取り外して、ラジエター内の残りを出し切る。冷却水は猛毒なので下水には流してはならず、適切な処分方法を取らなければならない。今回は再利用するので、未使用のゴミ袋で受け取った。

冷却水の抜け終わるのを待つ

冷却水が抜けるのを待っているところ。ラジエターのドレンコックから抜ける量は、リザーブタンクを含めて合計3L程度。エンジン内には2L近くの冷却水が残っている計算になり、全量交換は意外と難しい。

アッパータンク部のホースを外す

アッパータンク部に繋がる2本のホース、太いアッパーホースと細いリザーブタンク用ホース、ラジエターコアサポートに繋がるブラケットを外す。

ロアタンク部のホースを外す

車体下側では、ロアタンクに繋がるロアホースを外す。これで取り外し準備は完了。ラジエター本体を上に向かって静かに引き抜けば、取り外すことができる。

ラジエターの比較その1

ラジエターの比較その1。左側が一ヶ月で使用を終えた東北ラジエーター製のクールネード/エアリー、コアは27mmの1層タイプ。右側が純正戻しに伴って入手した新品のホンダ純正ラジエターで、コアは16mmの1層タイプ。クールネード/エアリーはコアを厚増しした純正改といった趣があり、両者共に極めて似ている。

ラジエターの比較その2

ラジエターの比較その2。冷却用電動ファンのシュラウドを固定する方法が若干異なり、ロアタンク部の固定方法がボルト式か差込み式かという違いがある。

シュラウドを移植

シュラウドを移植する。純正戻しなので位置のズレや誤差はなく、整った状態で装着することができる。ここまで終えたら折り返し、ラジエターを車体に装着する。取り外しの逆の手順を辿ることになる。アッパーホースとロアホースのスプリングタイプのバンドは、装着されていた位置に合わせて締めること。

エア抜き準備

全ホースの接続とリザーブタンクのセット、排水コックとバンドの締め、電動ファンのコネクタの復位を確認したら、漏斗代わりに底を切ったペットボトルの口にビニールテープを巻き、ラジエターの注入口に差し込んで冷却水を注げばいよいよエア抜き。ヒーターは全開に設定しておく。今回は冷却水を噴射させたり飛び散らせまいと思っていたが、またもや周囲に派手に飛散させてしまい、独特の臭気を放ってしまった。

エア抜き

水温計の指針が動き始めサーモスタットが開けば、空気と冷却水がどんどん入れ替わる。冷却水が漏斗代わりのペットボトルから完全に吸い尽くされないよう、補充を繰り返す。冷却用電動ファンが動作して水位が下がり、停止したら水位が上昇。この繰り返しで、水面の上げ下げが漏斗内で済むようになり、同時に大きな泡(エア)が出なくなればエア抜きは完了としている。しばらく走ってみて、残っていた空気はリザーブタンク側に排出されるので、応じてリザーブタンク内の水量をチェックすることを繰り返す。

作業完了

飛散させた冷却水を清掃し、フロントバンパーを取り付ければ、作業完了。

純正戻しを終えて

ブロワーファンを使わなくても、外気導入モードとヒーターを全開にして走っていると、車内温度はどんどん上昇する。長い下り坂でのエンジンブレーキでは、純正水温計の針はC側に向かって落ちていくことがあるが、停止次第すぐに水平に向かって元に戻っていく。適正水温が維持されてピストンのクリアランスが正しくなったのか、完全暖気終了後の吸気圧力が-70kPaから-73kPaまで復活。

ハイカム領域で走ると黒煙をよく吹いて、オイルの汚損が早かった点も水温が関係している。低水温が続くと燃料の霧化状態が安定しなくなり、正しい燃焼が得られなくなってカーボンの発生量が増加、同時に燃費も悪化してしまう。また、ピストンのクリアランスが大きいままなのでブローバイガスの吹き抜けが多くなり、オイルを早くダメになる。現在のところ、これらは解決している。オイルの状況についても、複数に渡る交換を経て、汚れ方がずいぶんと落ち着いたことが分かった。

エンジンの設計者は「水温のベストは90℃、アイドリングで100℃に達しても大丈夫」という見解で意外と高く、この具体的な数値が基準とすれば、世間でよく聞く数値は全く当てにならない。

サービスマニュアル上のデータ

サービスマニュアルを参照しても、サーモスタットは90℃でようやく全開になり、それ以下の水温ではラジエターへの流量がいくらか絞られている状態になっている。負荷が高くてスピードが遅い…ラジエターを冷やせない状況が『頻繁』に続くようになって、初めて大容量化が視野に入るそうだ。しかも、そこで薦められているのが、エアコンを取り外してDC2インテグラRの純正ラジエター流用という手段。設計者自ら換装ネタを発言し、そこでも純正品推奨となっていることからも、メーカーは相当の自信があることを匂わせる。

発売当時、革靴でサーキットを走ってしまう某プロドライバーのインプレッションがあり、水温に絡むパワーダウンやネガティブな発言は一切無かった。車両に対して過負荷を与えるためのテストコースで、最初から最後まで同じペースで走り続けていた点からしても、純正ラジエターは見た目以上の性能を持っていることが伺える。

水温を意図的に高くすることで、大気との温度差が大きくなって、小さなラジエターでも放熱が間に合うようになる。結果として軽量化に繋がり、タイプRに設定された性格に合致する。

破裂した初代純正ラジエターは、長年の使用でフィンが目詰まり気味だった。内部のチューブも詰まりが全くないとは断言できない。スムーズな空気と水の流れがあって、初めて性能をフルに発揮できる。冷却性能を語るなら、まずは日ごろのメンテナンスが行き届いていることが大前提となる。何もしないで「冷えない」なんて、当たり前のこと。

ラジエターは、極論すれば消耗品の一つとして考えることができる。例えば10年100,000kmも走れば、異物の衝突や混入を繰り返し、フィンが潰れたり目詰まりして空気は通りにくくなる。新車当時から定期的な冷却水の交換を行っているならともかく、そうでなければ内部のチューブも詰まり気味になって流れが悪くなるかもしれない。

これら小さな不具合が積み重なった結果、水温が高い、もしくは下がらないという症状が出てくるだろう。そして純正品の能力不足…と決め付けて社外品への交換を考えるのではなく、単に消耗し切ったと考えてメーカー純正の新品ラジエターを手配するのもありではないか。

メーカーから手配する純正新品は極めて高価だが、世の中にはラジエターの専門業者が多数存在し、そこから買い求めれば安く入手できる可能性がある。長期維持のリフレッシュでエンジンやミッション、足回りの劣化は注目されるが、冷却系統の消耗が全く注目されないことは考えてみたら変な話だろう。

純正ラジエターでは水温が…パワーが…といった、過酷な条件を並べてネガティブな印象を植え付け、そして大容量ラジエターの素晴らしさをアピールして購買意欲を煽るなんてありがちなパターンで、利益を追求する企業活動としては普通のこと。

エンジン設計者からすれば、夏場にエアコンを使用しつつ、ラジエターに走行風が当たらない超低速運転や、エンジンを高回転にしながら走り回るという、水温が上がりそうな走行条件は、実は設計段階で想定しているシチュエーションの一つとなっている。

サーキットでの水温が…と言う人に対して、設計者は「サーキット走行が主体でエアコンをつけて走る人はいない」「エアコンを外してインテグラのラジエターをつける方法もある」と切り返しており、水温に懸念を示しつつナンバーとエアコンをつけたままなんて、街乗り車がスピードを出して活発に走っているレベルのようだ。

チューニングしたエンジンで、常に高回転低速走行を強いられるなら初めて社外品が視野に入り、しかも水温は高めを維持。社外品を使うには、物事を見極める眼力が必須となる。

Appendix

百式自動車アルミラジエターから東北ラジエーター(株)クールネード/エアリーに交換した際、使用したパーツ類は以下のとおり。ラジエターの周辺の部品も総じて傷んでおり、部品が出るうちにリフレッシュしておいた。今回の三度目の交換では、これら部品が新品状態を保っていたことから、全て引き継いで使用している。

手配部品
1.  19101-P2A-000  タンク,リザーブ  2,818円  1個  
2.  19102-P2A-000  キャップASSY.,リザーブ  615円  1個  
3.  19103-P08-000  チューブA,リザーブタンク  291円  1個  ※1
4.  19104-P08-000  チューブ,リザーブタンク  334円  1個  
15.  74171-SP0-010  ブラケット,R.ラジエターマウント  950円  1個  
16.  74172-SR3-000  クッション,ラジエターマウントロアー  690円@345円  2個  
20.  93405-06016-04  ボルトワッシャー 6X16  43円  1個  
14.  90042-PZ1-004  ボルトワッシャー 6X20  432円@108円  4個  ※2
5.  中古  シュラウドCOMP.  2,600円  1個  ※3

※1
車体の既存部品より長い。10mmほど切らないと、リザーブタンク内に収まらない。

※2
シュラウド固定用ボルトは、クールネード/エアリーなら4本使用、純正ラジエターなら2本でOK。

※3
シュラウド単体での部品設定があるが、費用を抑えるために中古を使用。

ラジエターキャップはSタイプ。ネタ部品として好評の八宝屋 水温計付きラジエターキャップBタイプ外部リンク:八宝屋を使う。

ホンダ純正ウルトララジエーター液

冷却水は、ホンダ純正のウルトララジエーター液08CLA-G040S0(原液)及び、補充用として08CLA-G030S1(50%希釈タイプ)を使用した。エア抜きを行った翌朝、一発目のエンジン始動直後はリザーブタンク内の冷却水が減っていることが多いので、取扱説明書に従って適量を補充しておくこと。

クッションの比較

ラジエターの足元に備わる、クッションの比較。左が経年劣化で潰れた古いもの、右が新品。高さからして全く違い、ゴム特有の弾力や柔軟性も比べ物にならない。一個あたり345円(2015年12月)と安価なので、ラジエターを脱着する機会があれば、同時交換をぜひどうぞ。

ローテンプサーモスタットlinkに続く、二度目の純正戻しネタとなった。冷却系統のチューニングは、間違えてしまうとエンジンを派手に傷めてしまう。

一度目の百式自動車のアルミラジエターから数えること3年弱、約46,000kmの距離を水温が適正ではない状態で走っていた。金属レベルの視点からすれば、どれだけ寿命を縮めてしまったことか。長期間に渡って上がらない水温に右往左往し、あれこれ対策を繰り返してきたが、純正に戻ったことで当面はその苦労からようやく解放されることになった。

ラジエターの機能を維持するために、半年に一度はフィンの清掃を行い、冷却水の定期交換は怠らないようにしたい。今回の一件で、冷却系統のメンテナンスの重要性を強く再認識させられることになった。

走行距離:217,847km

Post