ご存知のように、EK9シビックタイプRのインパネは、前期型(E-)が1DIN+1DIN(以下1DIN)、後期型(GF-)が2DINとなっている。走りだけに集中するなら違いは問題はないのかもしれないが、そうもいかないのが実情。そこで前期型に乗っている者として、全国の前期型オーナーの思いを表現しよう。
\1DINはイヤ!/
\2DIN化したい!/
\2DINが欲しい!!/
前期型の1DIN仕様は、拡張性の無さが欠点。2DINナビは物理的に無理で、オーディオ、その他機器の選択肢が非常に限られてしまい、自由にチョイスして遊ぶことはできない。そこで前期型オーナーなら、一度は考えるであろう2DIN化を実践してみることにした。後期型のインパネを前期型に移植し、純正然としたスタイルを維持する方向性でいく。というわけで…。
よろしい、ならばスワップだ!
現状把握編
まずは相手を知る。前期型インパネは1DINとなっていて、本来はここにオーディオが収まるが、下段の1DINスペースの小物入れを撤去してそこにオーディオをセットすることで、インパネの1DINスペースを確保することができる。現在は写真のように、小物入れをセットしてある。
エアコン関係では、押しボタン式の吹き出し口切り替えスイッチが並び、風量は4段階制御。ヒーターは、スライドノブによる手動式。
運転席側足元。DENSOのロゴが表記された黒いパーツが、送風パターンを制御するモーター。これ一つで多数のリンクアームを動かして、吹き出し口を切り替えている。
助手席側足元。ヒーターの開閉は手動式で、青い筒内の針金によってインパネのスライドノブと接続されている。
ここまでのことを踏まえてカタログやパーツリストを参照すると、インパネが2DINになったことでデザインが大幅に変化。加えてエアコン関係のスイッチや制御が大きく変わり、特にヒーターの開閉が手動式から電動式になっていることを知る。必要部品は多く、単純な部品交換だけで済むのかは全く分からない。完全に手探り状態でのスタートとなった。
下準備、空調制御編
さっそく準備開始。パーツリストを何度も眺めて、必要な部品をセクション毎に揃えていく。部品は後期型のEKシビックであれば、型式や新品中古品を問わずに、幅広く集めていくことになった。
最初にヒーター一式を入手した。ヒーターの開閉が手動式となっている前期型に対し、後期型は電動式となっているので、開閉制御用のモーターを取り付けて、手動式から電動式に変更する。
開閉制御用モーターを使うならば、ダクト内の切り替えダンパを動かすリンクアームも必要となる。しかも再三パーツリストを調べたところ、各種リンクアームは、単体部品としての設定がないことから、一式で入手したのは大正解。さっそく解体し、必要部品とそうでない部品を選別する。
必要だったのが、この制御用モーター。デンソーの品番は063700-5862となっている。制御用モーターの先にある、313と刻印されたリンクアームも使用する。075と刻印されたリンクアームと、その先のエンジンルーム内のウォーターバルブに接続される青い筒の鋼線は、前期型、後期型共通なのでノータッチ。
ちなみに、吹き出し口を切り替える制御モーター及びリンクアーム(先述の運転席側足元写真を参照)は、前期型、後期型共に共通となっているので、交換はしないで引き続き使うことになった。
| 中古 | EK9後期用ヒーターコアユニット一式 | 4,000円 | 1個 |
| └※解体し、79160-SV4-941 モーターASSY.,エアーミックス 及び313リンクアームを使用。 | |||
下準備、インパネ編
次は主役、インパネの準備。後期型のインパネは早い段階で欠品と分かり、最初から解体で放出された中古品を使うつもりでいた。価格優先で選んだのでインパネ単体のみの入手となり、コントロールユニット部分、ハザードスイッチは付属していない。それどころか、ナビやオーディオを固定するステーすらなかった。損傷が極めて少なかったのが幸いだったが、無い無い尽くし。
改めて解体品を探したところ、運よく通常グレード(EK3、フェリオML、マニュアルエアコン)のインパネ一式を発見。しかもコントロールユニットは後期型EK9と同じマニュアルエアコン仕様、ハザードスイッチ、ナビやオーディオを固定するステーまで付属。これをドナーとして使うことに決めて、さっそく入手する。
ディーラーにおいては、これからやろうとしている計画全てを伝え、快く後期型の部品を販売してもらえることになった。今後の分解の手間を減らすために、この時点でコントロールユニット内のバルブ(電球)を新品に交換、ついでに使う頻度が高く、故障しては困るハザードスイッチも、併せて購入する。
新品のハザードスイッチに付属していた納品書によれば、注文時点での在庫数はなんと残り一個。もう少し遅ければ、バックオーダー扱いになって、長時間待たされる可能性があった。ハザードスイッチは見た目は前期型と後期型で大きく異なるが、カプラは共通。このままハーネスを接続すれば、ウインカーの回路は機能する。
吹き出し口は、消臭を兼ねて消毒用アルコールを用いて徹底的に掃除しておく。コントロールユニットとナビやオーディオを固定するステーを移植し、新品のハザードスイッチを取り付けて完成。
後期型の吹き出し口は助手席側にオフセットされており、応じてインパネ内のダクトも前期型と後期型で異なっているので、交換しなければならない。
新品で入手できて良かった。運に恵まれっぱなし。これを交換するということは、ダッシュボードの脱着が必要で、一つの山場になることは間違いなさそう。
| 中古 | EK9後期用インパネ単体 | 20,000円 | 1個 |
| 中古 | EK3後期用インパネ一式 | 8,500円 | 1個 |
| └※コントロールユニット及び、オーディオステーを使用。 | |||
| 35510-S04-901 | スイッチASSY.,ハザード | 3,207円 | 1個 |
| 79609-S04-J11 | バルブ,ネオウエッジ | 366円@183円 | 2個 |
| 79609-S04-J21 | バルブ,ネオウエッジ | 366円@183円 | 2個 |
| 77411-S04-J01 | ダクト,センターエアーコンディショナー | 3,056円 | 1個 |
下準備、電装編
準備も大詰め。制御用モーターやコントロールユニットが入手できたので、これらと車体を接続するハーネスを揃えなければならない。三度ディーラーに出向いて、パーツリスト片手に発注を掛けていくと、インパネ右側、コントロールユニットと車体を接続するハーネスが欠品で入手できなかった。
これが新品で入手できなかったハーネス(参考品番:32257-S04-900)。ハーネスは、エンジン用のメインハーネスでなければゴミとして扱われるか、銅をリサイクルする目的で解体と同時に業者に引き取られてしまい、中古品市場にはなかなか出回らない。
このハーネスが無ければ2DIN化が成立しないためにかなりの日数を掛けて探し、通常グレード(EK3、フェリオMi、マニュアルエアコン)のハーネス付きコントロールユニットを丸ごと入手することで、確保することができた。
車体側のハーネスは新品で入手できた。ブロアの風量切り替えが9段階に変わることから、レジスターも併せて購入した。
前期型になくて後期型にあるのが、このブロアモーターHIリレーと呼ばれる部品。後期型においては、ブロアの風量設定が9段階になっており、パワートランジスタ…上記で記述したレジスターを使って制御している。
最大風量時はこのブロアHIリレーを動作させることにより、バッテリー(オルタネータ)からの電力を直接ブロアモーターに流すようになっている。これだけでなく、外気導入と室内循環を制御するモーターも予備として欲しかったため、ブロアユニット一式というカタチで入手した。続いて、32157-S04-900 サブコード,ヒーター(A) の加工に入る。
後期型用の32157-S04-900 サブコード,ヒーター(A)内には、リアデフロスタを動作させる指令回路が含まれているのに対し、前期型は車体側で別に構成されている。このため単にハーネスを交換するだけでは、リアデフロスタが使えなくなる。
前期型と後期型の回路図を比較したところ、32157-S04-900 サブコード,ヒーター(A)のメス側27番カプラのNo.4ケーブル(青/黄)と、リアデフロスタスイッチ用518番カプラのNo.2ケーブル(青/黄)を接続すれば動作するようだ。これら二つのハーネスを接続するために、分岐線を追加作成
する。
写真では二本の線が分岐しているが、実際に使ったのは写真左側のNo.4ケーブル(青/黄)のみ。写真右側の分岐線は、下調べ不足による加工ミス。同時に、車体側のハーネスにも分岐線を追加し、サブハーネスと接続できるようにしておく。
こちらが車体側ハーネス。サブハーネスに追加したケーブルは、このリアデフロスタスイッチ用518番カプラのNo.2ケーブル(青/黄)へ接続する。今後のメンテナンスのことを考え、エーモンの一極カプラを使用した。
エバポレータの温度を監視し、過冷却による破損を防ぐためのサーミスタは、前期と後期で異なるので交換となる。部品の性格上、かなり面倒な位置にセットされており、在姿状態で交換できるかはやってみないとわからない。カプラを固定するブラケットも同時に購入した。
電装系に手を出す以上は、車両火災という最悪の結末を避けるため、前期型、後期型のインパネ内配線図が必須。作業する上で、ダッシュボードの脱着が控えていることから、サービスマニュアルを熟読して方法を頭の中に叩き込んでおく。これで必要部品と準備は全て揃い、スワップ作業に挑む日を迎えるだけとなった。
| 中古 | EK3後期用コントロールユニット一式 | 1,000円 | 1個 |
| └※付属していたサブコード,ヒーター(B)のみ使用。 | |||
| 中古 | EK9後期用ブロアモーターユニット一式 | 3,000円 | 1個 |
| └※39797-SE0-003 リレーASSY.,パワー(4P)(DENSO)及び、 79330-S04-942 レジスター,ブロアーを使用。 |
|||
| 32157-S04-900 | サブコード,ヒーター(A) | 5,043円 | 1個 |
| 79330-S04-942 | レジスター,ブロアー | 2,754円 | 1個 |
| └※2018年12月8日まで中古品。翌9日より、ストック品(新品)を使用。 | |||
| 80560-ST0-941 | センサー,エバポレーター | 1,533円 | 1個 |
| 80561-ST0-000 | ブラケット,エバポレーターセンサー | 232円 | 1個 |
スワップ作業編
まずは安全確保。途中でエアバッグのケーブルを切り離す場面があることから、バッテリーからプラス端子とマイナス端子の両ケーブルを外し、3分以上放置して放電させておく。
その間に、ダッシュボード周辺の内装部品で、外せるものは片っ端から外していく。ヒューズボックスからハーネスを切り離し、オーディオ、メーターユニット、インパネを取り外し、ハンドルを下ろせばダッシュボードの取り外し準備は完了となる。
目に見える部分が全て外せたら、いよいよダッシュボードの取り外し。
「あっ!重たいっ!」
「腰がヤバくなる重さだっ」
「引っかかってるっぽい?」
「いや!外してないボルトまだあった!」
という具合に作業が進まず、なんと一時間も浪費していた。初の作業だけに、仕方ない。
ダッシュボードを取り外した直後の光景。まずチェックしたのは鉄板部分の錆。とてもキレイな状態を保っており、当面は大丈夫そう。初代オーナー時代から現在まで禁煙車なので、汚れは極めて少ない。素晴らしい状態を保っている。
苦労して取り外したダッシュボードから金属フレームを取り外し、後期型のダクトに交換する。これで吹き出し口が助手席側にオフセットされ、2DIN仕様の後期型インパネを取り付けることができる。写真右側の積み重なったダクトは、上が前期型、下が後期型。固定用の穴の位置は一緒なのに、吹き出し口がオフセットされている。
ダクトの交換が終わったら、今度は空調を制御するサブハーネスの交換となる。古いハーネスは切り取らずに、完全に機能する状態で取り外していく。
ブロアレジスタの交換。室内循環用吸気口の目の前にあり、ビス二本で固定されている。左側の大きなヒートシンクを持つのが後期型、抵抗線がむき出しの右側は前期型。単純な抵抗制御から、パワートランジスタを用いた半導体制御に変わる。
最大風量時に動作する、ブロアモーターHIリレーをケースに取り付け。
後期型のサブハーネスを取り付けた。ピッタリの長さで、さすがは純正品。サブハーネスからの延長線は、先述した加工ミスの残骸。撮影後に切断し、ショート防止策を施した。
ヒーターダンパを動かす313リンクアームに交換し、制御モーターを取り付ける。リンクアームはネジ一本で固定されているだけなので、単純に入れ替えれば交換できる。
取り付け完了。これで冷風と除湿モード、熱風のコントロールが電動化される。
これまでの作業が終わったら、今度は折り返し。バラしてきた部品を組み立てていく作業が続く。ダッシュボードを車体に装着する際は、ハーネス類を噛み込まないよう、慎重に取り扱う。
ダッシュボード本体の加工として、後期型インパネを装着するときに赤丸で示した穴が邪魔になるので、切除しておく。また、黄色の枠で示したアングルは、不要になるので取り外す。ここから、内装を復旧していくペースが加速していく。
前期型と後期型で異なる、エバポレータ用のサーミスタの交換。ダッシュボードの脱着以上に、厄介なのがこの部分。ダクトは上下に開くが、裏側にネジ2本と金属クリップ2個が隠れており、指先の感覚だけで取り外さなければならず、あっという間に手が傷だらけに。
左手で上下に開いて手を突っ込めるくらいの隙間を作り出し、右手でサーミスタの交換を行う。エバポレータのフィンはとても細かく、傷や曲損といったダメージを与えないように、慎重に作業を続ける。サービスマニュアル上ではサーミスタの固定位置が指定されており、できるだけ指示どおりに装着した。
装着完了。サーミスタは、サブハーネスに青いテープで仮止めされているカプラに接続する。外していた金属クリップやネジを元に戻す作業も、かなりの苦労だった。在姿状態での作業は、不可能ではなかったのが救い。このセクションだけで、作業時間は一時間半に及んだ。
外していた一連の内装部品を元に戻し、いよいよ後期型のインパネを装着…車内の印象が激変した。固定はネジを使わずにクリップのみだが、特に異音などは発生せず、このままで問題なく使えている。
続いて、各種動作テストを行う。ブロア風量、エアコン、リアデフロスタ、ヒーター制御、吹き出し口の切り替え…全て良好、完成!スワップ作業終了!
オーディオブラケットはインパネに取り付いているだけなので、カーナビなどの重量物を装着すると、重さは全てインパネに掛かってしまう。インパネのネジ穴には既にヒビが入っていることから、振動などで破損する可能性がある。
ナビ等の重量物を装着する場合は、重量をダッシュボード内の金属フレームに分散させるか、後期型用のダッシュボード内のフレームを別途入手し、交換するしかない
。
Before Afterの写真がこちら。前期型の難点だった1DIN+1DINを見事に解決するどころか、2DIN+1DINの合計3DINとなり、自在な拡張性を入手した。1990年代の車でも、頑張ればイマ車に近づくことができる。
作業を終えて
運転スタイルを維持したまま、左手に力を入れずにあらゆる操作ができる点が、まず感動的だった。これまではヒーターの制御が手動で、力を入れてグリグリと操作していた。鋼線にはどうしても遊びがあり、微妙な温度調整は不向きだ。それが電動制御に変わったことで、熱くもなく、冷たくもないちょうどいい温度を一発で決めることができる。
ブロアの風量設定が4段階から9段階になったことで、温度調整が電動制御になったことも相まって、室温の維持が容易くなり、ついでに換気し易くなった。見た目の変化を含めて満足感はとても高く、運転環境は非常に快適になった。カーナビの選択肢が広がった点等、使い勝手は以前とは比べ物にならないほど向上した。おいィ?後期型、凄すぎだよぉ?
2015年8月14日。スワップ作業から半年が経過し、軋み音等はなく、交換や加工したハーネスからの発煙等、異常は一切起きていない。現在使用中の、オンダッシュ型ナビが壊れる様子が全くないことから、肝心の2DIN型ナビの換装計画が全く立たず、ただ単にインパネを後期型化しただけに終わっている。前期型インパネのときと同様、相変わらず1DINタイプの小物入れをセットしてあるだけ。
とはいえ、空調関係のコントロールはとても扱いやすくなり、見た目も良くなったことから、後期型仕様へのスワップは無駄ではないと思っている。ナビは古くて(2002年)、地図アップデートもだいぶ前に終わっているので、そう遠くない日に2DINが役立つ日が来るだろう。
2018年4月20日。青森から帰宅している
最中に、とうとうナビが壊れてしまった。2DIN化したインパネを活用し、今どきのナビを装着することになったが、ナビが重くてインパネだけでは支えきれなかった。懸念事項そのものだったことや、運よく後期型用のダッシュボード内のフレームが入手できたことで、再びダッシュボードを外し、内部フレームを交換する
ことになった。
<ひとこと>
この作業をもって、後期型のインパネを移植することは可能、少々の加工で全ての機能を維持できることが実証された。
一連のことをさくっと検索してみると、否定的
な回答がベストアンサー
になっている例をよく見かける
。恐らくはやりもしないで、想像だけで答えているのだろう。
繰り返すが、1DIN+1DINの前期型から、2DINの後期型へスワップすることは不可能ではない。振り返ってみれば、部品が完全に揃っているならば日中の時間帯で終わらすことができる作業内容で、プラモデルの作成感覚で望める。無理と決めるソースが不明な以上、そこで思考停止となったら負けということだ。こんなところに、ロクな答えを期待するほうが間違っているのだが。
</ひとこと>
走行距離:201,167km