タイミングベルトといえば10年、もしくは100,000kmのどちらか先が達したら、交換が推奨されるおなじみの部品。前回(2回目)のタイミングベルト交換は2015年1月21日、今から5年前のこと。多少の増減はあったものの年20,000kmのペースで走り、300,000kmに到達した。
さっそくタイミングベルトの交換となる。交換作業は1回目、2回目はショップに依頼してきたが、3回目となる今回=2020年2月現在の運用計画上では最後の交換作業は、自前でチャレンジすることになった。
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作業開始早々、高トルクで締め付けられたクランクプーリーボルトを緩めるのに3時間近く掛かってしまい、遅れを取り戻すため写真撮影を後回し、作業に集中していた。よって概況程度の内容の浅いレポートとなっているため、絶対に作業の参考にはしないこと。
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カバー類を開けていく
それでは作業開始。まずはヘッドカバーや側面のミドルカバーを外す。
長期天気予報では、作業当日は雨予報、ただし信頼度はC(低)だった。それがどんどんといい方向に変わっていき、写真からわかるとおり、気持ちのいい晴れとなった。風もなく、最高の整備日和。
ヘッドカバーを開けて、ヘッド内部の状況をチェック。ヘッドカバーを開けた以上は、外気由来の粉塵が混入してしまう恐れがある。ちょうど規定交換距離に達していたこともあって、翌日にはオイル交換を行い、汚れや粉塵をすぐに排出することができるようセッティングを行っていた。よって、汚れたオイル由来の茶色の変色が僅かに目立つが、焼けやスラッジはなく、キレイな状態を保っている。
ヘッド内を保護するため、マスカーで覆う。続いてミドルカバーの取り外し。エアコンの冷媒ホースやパワステフィードホースの隙間から手を突っ込んで、ミドルカバーを外していく。
ミドルカバーが外れたところ。エアコンの冷媒ホースとパワステフィードホースをフェンダー側に寄せても、上からのタイミングベルトの交換スペースはこの程度。後にエンジンサイドマウントを外すことになるが、それでも作業スペースは狭いまま。3本の補機ベルトと左下側のエンジンマウントは、切断して外している。
3時間の遅延が発生
ロアカバーの取り外しには、クランクシャフトプーリーを外さなければならない。
赤矢印のクランクシャフトプーリーの固定ボルトは181N・m(18.5kgf・m、※1)の高トルクで締め付けられており、外れるまでに合計3時間近く要することになった。三人掛かりのアタックでやっとこさ。B16Bエンジンの最大トルクが160N・m(16.3kgf・m)/7,500rpmなので、それ以上のトルクで締め付けられている。
※1 固定ボルトの締め付けトルクについて
B16Bエンジンのクランクシャフトプーリーの固定ボルトは181N・m(18.5kgf・m)で締め付ける。一部情報源では177N・m(18.0kgf・m)と記載されているが、こちらはB16Aエンジンの締め付けトルク。間違えないように注意!
固定ボルトを緩めるのに使用したブレーカーバー(スピンナハンドル)は400mm、アストロプロダクツの製品。締め付けトルクに負けてしまい、ソケットを装着するヒンジ部分は開き、バーはしなっていた。より長く高強度なブレーカーバーなら、ここまで苦労はしなかったと思われる。
ブレーカーバーのヒンジ部分の破損と引き換えに、固定ボルトを緩めることに成功。エンジンサイドマウント、クランクシャフトプーリー、ロアカバー、古いタイミングベルト、テンショナープーリーを次々と外し、さらには冷却水を抜いてウォーターポンプを外す。
ウォーターポンプは二種類のボルトでエンジンブロックに装着されており、何も考えずに取り外すと混ざって正しい位置が分からなくなる。取り外す前にマーキングする、番号を振る、一本ずつ撮影するといった防衛策を取る。
タイミングベルトの交換で、あらゆる部品が外され、サイド部分が非常にスッキリした状態になった。この構図の写真はネット上でしか見れなかったが、自分の車で直接見るだけでなく、さらに撮影できたことに感動していた。しかし、3時間の遅れで厳しい事態に陥っていることに気づいて、すぐに我に返る。
余裕がないまま、作業の折り返し
遅れから日没時間が近づきつつある。日が沈んでしまえば、作業スペースの狭さと暗さから、細かい作業ができなくなってしまう。写真を撮っている余裕がなくなり始め、撮影よりも遅れを取り戻すことを優先にする。
| 1. | 19200-P72-013 | ポンプCOMP.,ウォーター(ヤマダ) | 15,620円 | 1個 |
ウォーターポンプはホンダから販売されている純正部品を使用した。予算を抑えるなら社外製品が視野に入り、純正品よりも半値近く、さらには1/3程度の価格で売られていることが多い。
販売状況の調査、メーカーに対してEK9が現役であることのアピール、装着部分から絶対的な信頼性を要することから、純正部品をチョイスした。
開封したウォーターポンプはプーリーを回したくなるが、空回し状態では軸内部シールへ大きなストレスが掛かる。そこで写真のように、適当なトレーにウォーターポンプ本体を置き、冷却水に3分程度漬け込む。その水量は、本体側面に開けられた穴(ブリードホール)に冷却水が入らないくらいが適切。
しっかりと冷却水に漬け込んでから、ウォーターポンプをエンジンに装着する。エンジンブロックとウォーターポンプの接合面はOリングで封じられているが、これに不安感を抱くのか液体ガスケットを追加塗布する人が少なからずいる。Oリングと液状ガスケットの併用は水漏れの原因になるようで、その事例がアップされている
。
このように、サービスマニュアル上でも液状ガスケットを塗布するとは、どこにも書いていない。場所柄、トラブルが起きると点検が難しいので、余計なことはせずに規定トルクで装着する。現在まで、液状ガスケットを使ってはおらず、水漏れも起きていない。ウォーターポンプ付属のOリングだけで間に合っている。
古いウォーターポンプを外し、接合面を入念に清掃して拭きあげてから、新品のウォーターポンプを装着する。周辺に飛び散った冷却水を拭き取っておき、この次の工程、タイミングベルトの装着に備えておく。
新品のタイミングベルトを装着
いよいよ新品のタイミングベルトをプーリーに掛けていく。いきなり装着するのではなく、クランクシャフトとカムシャフトが正しい位置に来ているか、入念に確認する。
まずクランクシャフト側。タイミングベルトドライブプーリーに溝が彫られており、これがエンジンブロック側に▼の合わせマークに来ていればOK。
続いてカムシャフト側。インテークとエキゾーストの各プーリーのUPマークが上を向いており、プーリー上の合わせマーク(赤色部分)が正対していることをチェックする。
| 1. | 06141-P72-305 | ベルトキット,タイミング | 9,020円 | 1個 |
| 15. | 14510-P30-003 | テンショナーCOMP.,タイミングベルト | 4,532円 | 1個 |
| 17. | 14516-PR4-A00 | スプリングCOMP.,タイミングベルト | 258円 | 1個 |
タイミングベルト関係の使用パーツはこちら。1番のタイミングベルト、15番のテンショナープーリーだけでなく、17番のスプリングも購入した。このスプリングは、タイミングベルトの張り調整=テンショナープーリーの位置決めのときに引っ張られる。過去のタイミングベルト交換作業では未交換だったことで、劣化したスプリングではテンションが決まらなくなることから、同時交換に交換する。
新しいタイミングベルトを掛けているところ。フェンダー側からぱっと見て、ベルトに印刷された文字が読みやすい向きで装着する。
タイミングベルトドライブプーリーにタイミングベルトが掛かる寸前。タイミングベルトが掛かったら、真っ先にテンショナープーリーのアジャストボルトを規定トルク=54N・m(5.5kgf・m)で締め付ける。補機ベルト等余計なものがないこの段階で、タイミングベルトの張り調整を行う。
失敗に終わったタイミングベルトの張り調整
タイミングベルトのテンショナープーリーを取り外し、そして交換しているので張り調整を行う。実はこのセクション、つまり自前での張り調整は、失敗している。3時間の作業遅延がここでボディブローのように響き、張り具合を追い詰める時間は殆ど失われていた。
タイミングベルトの張り具合が悪いと、エンジンを始動した途端に大きな金属音が鳴る。どういうわけか、以下のサービスマニュアル通りに調整しても異音が鳴りやまず、しかもエンジンが暖まると音が止まるという謎の症状が出る。その後、完全に日没を迎えてしまい時間切れ。そのままディーラーへ緊急入庫に至ってしまった。
■ □ ■
◆イ. タイミングベルトが掛かったら、ロアカバーとクランクシャフトプーリーを取り付けて、5~6回反時計回転させ、タイミングベルトを整列させる。
◆ロ. 1番ピストンが圧縮上死点に合っていることを確認する。
クランクシャフトプーリーには切り欠きがあって、それをロアカバー上の合わせマークと一致させる。
カムシャフトプーリーはUPマークが上に位置し、TDCマークが正対していることを確認する。ここまでは、先ほど新品のタイミングベルトを掛ける前に入念チェックしており、駒ズレを起こすような要素はない。
◆ハ. テンショナープーリーのアジャストボルトを180°緩める。
◆ニ. カムシャフトプーリーの歯数で3山分、反時計回転させた位置で、クランクシャフトを止める。この時、3山以上回した場合、絶対に逆回転させないこと。再度1番ピストンの上死点に合わせて調整を行う。
◆ホ. アジャストボルトを規定トルク=54N・m(5.5kgf・m)で締め付ける。
■ □ ■
タイミングベルト交換作業における、重要な調整ポイントとなることから、サービスマニュアルを中心として情報収集は事前に行っていた。この張り調整は、サービスマニュアル上ではA4のページのさらに半分しか記載されていない内容だが、実際に作業してみて分かったことは、非常に繊細な調整を求められて時間を要するものだった。機械式時計の歩度調整に近いものがある。
クランクシャフトプーリーの固定ボルトを緩めるには工具と力勝負で決まるとなれば、このタイミングベルトの張り調整は、エンジン本体のコンディションと、調整者の聴覚や触覚といったセンスで決まるそう。プロのメカニック曰く「サービスマニュアルには載っていない、感覚的なもの」とのこと。
補機ベルト類を装着し
タイミングベルト以外にも、パワステポンプ、オルタネーター、エアコン用コンプレッサーといった補機類を駆動する3本のベルトを同時に交換している。また、エアコンコンプレッサーのベルトにはアイドルプーリーがあって、こちらも100,000km毎の交換としている。
| 17. | 38942-P73-000 | プーリーCOMP.,アイドル | 4,048円 | 1個 | |
| 20. | 90054-P30-000 | ボルト,スペシャル 10X30 | 230円 | 1個 | |
| 38920-P73-023 | ベルト,コンプレッサー | 2,310円 | 1個 | エアコンコンプレッサー用 | |
| 31110-P73-508 | ベルト,A.C.ジェネレーター | 2,387円 | 1個 | オルタネーター用 | |
| 56992-P72-506 | ベルト,パワーステアリングポンプ | 2,310円 | 1個 | パワステポンプ用 | |
17番のアイドルプーリーを交換する際は、20番のスペシャルボルトも同時に交換する。ブラケット固定時の締め付けトルクだけでなく、コンプレッサーベルトの張り調整で二重のストレスが掛かることから、突然折れてしまう事例が散見される。ブラケットの中にネジが残ってしまうと、非常に面倒な抜き取り作業が待っているため、予防措置として交換するようにしている。
リフレッシュしたアイドルプーリーとスペシャルボルト。各補機ベルトの張り具合は、外す前に押し込んでみて、指の痛みの加減で調整している。
これでタイミングベルトの交換と付帯作業そのものは終わらせることができた。新品のタイミングベルトのパッケージには交換済みステッカーが同封されており、交換日と総走行距離を記入して、Bピラーの下部へ貼るように指示されている。
計3枚の交換済みステッカーで、春のパン祭りステッカーを連想させる並びとなった。100,000kmから200,000kmまでは、5年5ヶ月。200,000kmから300,000kmまでは、5年と20日だった。年20,000kmペースで、好調な走行が続いていた。
その他、関連作業等
デスビのOリングは純正新品(30110-PA1-732)に交換。また、デスビの脱着を行っているため、点火時期の再調整
を行っている。
ウォーターポンプの交換に伴い、冷却水を入れ替えることになる。使用した冷却水はホンダ純正ウルトラeクーラント(08CLA-G010S2)で、計5L分購入している。B16Bエンジンの冷却水量は、サービスデータ上で分解時4.8L、交換時で4.3L(共にリザーブタンクの0.4L含む)となっていて、合計4.5Lを注入したことから、ほぼ全量交換となった。
タイミングベルトや補機ベルトの取り外しは、エンジンサイドマウントと左側フロントストッパーをそれぞれ切り離す工程がある。経年による損傷が見つかっていたことから、それぞれSPOONの強化マウントから新品の純正マウントに戻している
。
〆
クランクプーリーの固定ボルトを緩める部分、タイミングベルトの張り調整といった部分では、非常に苦労させられたが、実経験や工具の揃え方といったものまで、得られたものはとても多い。作業を終えた段階で振り返ってみると、ディーラーやショップに依頼するタイミングベルト交換は、作業量の多さと調整箇所のシビアな点から、請求される工賃は意外と安いことを再認識させられた。
タイミングベルトの張り調整の仕上げについては、結果的にディーラーへ迷惑を掛けてしまった。事前調査では解決できない不明確な部分があるなら、無理に作業することなく、プロに依頼することを今後の方針としたい。
これら反省点から、将来的に40万キロに達した場合、再びDIYでのタイミングベルト交換に挑むかと問われれば、現時点ではNOだ。もっとも、総走行距離が38.4万キロになった時点でゴールとしており、その後は運用終了を予定していることから、四度目の交換計画は立てる必要はないが。
走行距離:300,066km