EK系シビックのエンジンマウントは計5個使われている。FF駆動式の横置きエンジンで、ホンダ特有の逆(左)回転に沿った配置方法になっている。まずは使用しているエンジンマウントについて、パーツリストから参照する。
| 2. | 50805-S04-000 | ラバー,トランスミッションマウンティング |
| 3. | 50810-ST7-Z00 | インシュレーター,リヤーエンジンマウンティング |
| 5. | 50824-S04-013 | ラバーASSY.,マウント |
| 8. | 50841-ST7-Z00 | ラバー,R.フロントストッパーインシュレーター |
| 9. | 50842-ST7-Z00 | ラバー,L.フロントストッパーインシュレーター |
この合計5個のエンジンマウントにおいて、実際に各フレームからエンジンとミッションを吊り下げているのは、赤い丸で示した2番、3番、5番の三ヶ所。残りの青い丸で囲った8番と9番は、エンジンの回転に伴う反トルクで、エンジンが後方側に向かって大きく回らないようにするための、いわば振れ止めストッパーとなっている。
各マウントパーツに掛かる荷重やストレスはバラバラで、応じて寿命も大きな違いがある。一旦、SPOONの強化エンジンマウントセット(50800-EK9-G00)に交換して、一括リフレッシュを行う。そこから、走行距離や経過年数に応じた劣化状況や、強化品の寿命を追跡調査することにした。
2008/1/28…74,000km時、SPOONの強化エンジンマウントセットに交換
中古車として購入、納車されたあとのショップの診断では、製造工場で組み込まれた純正マウントは、既に切断やヒビ割れが起きているとのことだった。確かに、フルアクセルで加速し素早くシフトチェンジ、そして再びフルアクセルで加速する際に、エンジンが大きく揺さぶられるために衝撃が伝わり、エンジンルームを通じて車内に「ドン!」と大きな音が響きわたっていた。
ダメになっていた、8番(50841-ST7-Z00)と9番(50842-ST7-Z00)のフロントストッパー。特に9番の左側フロントストッパーは、薄いゴムで構成されているためか早く切れることで有名。8番の右側フロントストッパーについても、完全に切れてはいないが、首の皮一枚で繋がっている状態だった。
9番の左側フロントストッパー拡大。反トルクを受け止める役割ながら、厚みのないゴムを使っている構造が本当に謎。10年74,000㎞程度で切断していたことから、ヒビが入って劣化し始めるタイミングは、もっと早いことになる。
こちらは8番の右側フロントストッパー。大きなヒビが入っており、硬度や損傷状況を調べるためにいじっていたら、最終的には千切れてしまった。ゴムらしい弾力は失われ、フルアクセルに伴う反トルクで、エンジンが振れやすい状況になっていたようだ。
続いて、実際にエンジンを吊るしているマウントパーツのチェック。左は3番(50810-ST7-Z00)のリヤマウント。右は2番(50805-S04-000)のミッションマウント。リヤマウントは大きなヒビは無かったものの、小さなヒビは多数見つかり、ちょうど切れ始めたところだった。ミッションマウントに関しては見た目には異常はなかったが、両者共にゴムらしい弾力は無い。
そして5番(50824-S04-013)の最も大きなマウント。エンジンルーム内では一番目に入りやすい位置だけに、目視点検しやすい。これといった異常は見当たらなかったが、10年使用したマウントパーツになるため、交換する。
強化エンジンマウントへ交換し、追跡調査スタート
切断や硬化を起こしていた純正マウントから、強化品に交換するパターンのリフレッシュとなった。フル加速する度にエンジンルームからの大きな音と衝撃がなくなり、極めてスムーズな加速ができるようになっていた。エンジンとミッションが正しい位置に戻ったためか、シフトチェンジも行いやすくなっている。
純正品に比べてさらに硬いゴムなので、アイドリング時は細かい振動が若干気になるが、一時的な症状で、マウントが馴染んでくれば落ち着いた。
走行距離:74,000km前後
SPOON エンジンミッションマウントセット(50800-EK9-G00):33,600円
追跡1、6年半120,000㎞で異常発生
先のSPOONの強化エンジンマウントセットへの一括交換から6年半後の2014年7月26日、距離にして120,000kmを経過したころ、9番の左側フロントストッパーに異常を発見した。
最も早く千切れる部分だけに、いくら強化品でも決して長寿命ではないことが分かった。経過年数よりも、走行距離=シフトチェンジやエンジンの回転による振れのストレスが、寿命に影響しているように思える。だいたい100,000㎞あたりが節目になるだろうか。
ゴムが劣化していることを利用して、引きちぎるようにして使い古したフロントストッパーを取り外す。写真のように、ブラケットと接続するボルトも外しておく。
新しい左側フロントストッパーをセットしたところ。エンジンの重量は掛かっておらず、反トルクでエンジンが前後に大きく揺さぶられた場合、ゴムが盛られた部分がぶつかることで、それ以上揺さぶられないようにするためのパーツであることが分かる。
サービスマニュアルの記載どおり、ブラケットの接続ボルト(83N・m、8.5kgf・m)…冒頭パーツ図面の11番、フロントストッパーの取付ボルト(44N・m、4.5kgf・m)…同14番、フランジナット(59N・m、6.0kgf・m)と、それぞれ規定トルクで締め付ける。また、フランジナットは分解時交換部品に指定されているので、新品に交換している。
| 9. | 50842-ST7-Z00 | ラバー,L.フロントストッパー | 3,434円 | 1個 |
| 21. | 90372-SR3-003 | ナット,フランジ 12MM | 147円 | 1個 |
| 23. | 90504-SR3-010 | ワッシャー,フロントストッパー | 178円 | 1個 |
左側フロントストッパーを交換したことで、エンジンとミッションが正しい位置に戻り、シフトフィーリングがスムーズになった。一つでもダメになると、悪化してしまうことがよく分かった。純正品、強化品それぞれの劣化具合から、総走行距離が300,000㎞に到達したあたりで、再び寿命を迎えて交換になることが予想され、後に的中することが判明する(後述、追跡3参照)。
走行距離:197,258km
追跡2、レリーズベアリングの交換に併せて
2008年1月28日の一括交換から11年1ヵ月、距離にして200,000㎞が経過した2019年3月2日。レリーズベアリングからの異音
に対処するため、ミッションを降ろすことになった。その際、2番のミッションマウントと8番の右側フロントストッパーも外す。
事前調査によって8番の右側フロントストッパーはヒビ割れを見つけており、またミッションマウントは11年も使ったため、これら二つのマウントパーツはリフレッシュを兼ねて純正品へ戻すことにした。
ミッション装着時に、同時交換した右側フロントストッパー。分解時交換指定のボルトやワッシャーだけでなく、力が掛かる部分の経年ストレスを考え、固定に関係する部分のボルト類は全て新品に交換した。写真中央のフランジナットの締め付けトルクは(59N・m、6.0㎏f・m)となる。
純正新品に戻ったミッションマウント。ミッションマウントの装着は、ねじれ防止や耐久性維持のためにナットやボルトの締め付けに順序があるので注意。ミッションブラケットを外していた場合、予め装着(64N・m、6.5kgf・m)しておく。次にミッションマウントをフレームに装着(64N・m、6.5kgf・m)し、最後にフランジボルトを締め付ける(74N・m、7.5kgf・m)。
| 2. | 50805-S04-000 | ラバー,トランスミッションマウンティング | 5,616円 | 1個 |
| 8. | 50841-ST7-Z00 | ラバー,R.フロントストッパーインシュレーター(MT) | 3,434円 | 1個 |
| 23. | 90504-SR3-010 | ワッシャー,フロントストッパー | 183円 | 1個 |
| その他 | ボルト、ワッシャー類 | 計730円 | ||
右側フロントストッパーとミッションマウントが純正品に戻った。SPOONの強化マウントに比べれば、純正品は柔らかい(EK4 SiR系に比べれば硬い)ため、以前に比べれば車内へ伝わる振動が明らかに減っている。とはいえ、シフトフィーリングが悪化するようなことはなく、今までと変わらない操作性が維持されている。これで残る強化マウントは、エンジン左側にあるサイドマウントと後部のリアマウントとなった。
走行距離:283,277km
追跡3、3回目のタイミングベルト交換に併せて
2020年2月8日、タイミングベルトの交換日。5番のエンジンサイドマウントは、引き続きSPOONの強化品を使い続けていたが、12年220,000km以上使っていたことで、細かいヒビ割れが表面まで見えてくるようになった。タイミングベルトの交換作業では、サイドマウントを取り外す工程があり、ボロボロなものを再度装着するわけにはいかず、純正品に戻すことにした。
純正マウントが装着された状態。エンジンの振動を受けながら、フレームに固定し続けたナットやボルトもストレスを抱えていると判断して、同時に交換している。よく見ると、190918と数字が書き込まれており、恐らく製造日。製造から5ヶ月程度の在庫期間を経て、供給されたことになる。
前回、9番の左側フロントストッパーを交換したのが、2014年7月26日(197,258km)のこと。当時、100,000km程度で寿命を迎えるだろうと予想しており、実際にそのとおり。再びヒビだらけになっていた。補機ベルトを外すには、この左側フロントストッパーを外さなければならず、千切れかけていたことを利用し、バラバラに切断して外すことになった。
この部分は既に3個目になる。ストッパーと名付けられているだけあって、ゴムが切れてしまうことは、反トルクによる揺れ防止機能が正常であることを意味する。
| 5. | 50824-S04-013 | ラバーASSY.,マウント | 12,100円 | 1個 |
| 9. | 50842-ST7-Z00 | ラバー,L.フロントストッパーインシュレーター(MT) | 3,498円 | 1個 |
| 14. | 90166-SR3-000 | ボルト,フランジ 10X30 | 242円@121円 | 2個 |
| 21. | 90372-SR3-003 | ナット,フランジ 12MM | 154円 | 1個 |
| 23. | 90504-SR3-010 | ワッシャー,フロントストッパー | 187円 | 1個 |
| 26. | 94050-12080 | ナット,フランジ 12MM | 60円 | 1個 |
| 27. | 95701-1002008 | ボルト,フランジ 10X20 | 165円@55円 | 3個 |
サイドマウントが純正品に戻ったことで、エンジンから車内へ伝わる振動や騒音が非常に小さくなり、随分と静かな車内に戻った。1,000kmを超える長距離走行においては振動と騒音を受け続けるため、かなりの疲労感を味わっていたが、純正ならではの静かさで疲れにくくなることが期待できる。
この時点で、SPOONの強化マウントはリアマウント一つのみ。しかも、タイミングベルトの交換作業を行う一ヶ月前にゴムが裂けていることを発見しており、交換に向けて次の予定をすぐに立てることになった。
走行距離:300,066km
追跡4、加速ドンが発生
2020年1月中旬、ちょっとしたドライブで、少々強めの加速を行うと、車体に伝わる衝撃と同時に「ドン!」という大きな音が車内に響くようになっていることに気づく。これはリアマウントが切れてしまい、エンジンの回転が急激に上がると、その反動でエンジンが後方へ倒れてしまうときの衝撃音だ。
左フェンダーから覆いかぶさるようにしてメンバーを見ると、リアマウントを目視点検することができる。エンジンが後方に倒れようとするため、マウントの下側から裂け目が広がっている。
問題が起きたのが3番のリアマウント。ここが機能しなくなると、5番のサイドマウント、2番のミッションマウントでエンジンを吊り下げることになり、加速するたびにエンジンが倒れやすくなる。すると、振れ止め用の8番と9番のフロントストッパーに大きな負担を掛けることになり、ただでさえ短い寿命を大きく縮めることになる。リアマウントの損傷が確認できた時点で、急加速やハイカム領域まで回すような使い方は避ける。
メンバーの上側に装着され、常にエンジンの重量が掛かる部分だけに、作業性は悪い。ちょうどタイミングベルトの張り調整でディーラーに預けていたことを利用し、リアマウントの交換作業も同時に依頼した。
| 3. | 50810-ST7-Z00 | インシュレーター,リヤーエンジンマウンティング | 5,049円 | 1個 |
| 13. | 90165-SM4-020 | ボルト,フランジ 12X101 | 495円 | 1個 |
| 24. | 90505-SB2-000 | ワッシャー,サイドマウンティング | 258円 | 1個 |
リアマウントを貫通するボルトとワッシャーも交換。ここにはエンジンの重量が直接掛かり、加減速で曲げようとするストレスを受け続ける。10.9に区分される高強度ボルトとはいえ、分解時交換指定部品なので併せてリストアップされる。
交換後のリアマウント。エンジンが後方に倒れなくなったことで、急加速を行っても衝撃音が響かなくなった。また、2番、3番、5番の各マウントが純正品に統一されたことで、エンジンの振動や衝撃はそれぞれのゴムがうまく包み込むためか、独特のフィーリング…本来の姿に戻った。
強化マウントによる、レスポンスに優れてカチッとしたフィーリングは決して悪くはない。デメリットとして、車内へ振動や騒音を伝えやすくなってドライバーへの負担を増すだけでなく、最終的にはフレームの損傷が発生する恐れがある。1990年代後半に製造され、現在までの稼働状況と今後の残り寿命を考えれば、純正品を使ったほうが、長期維持の観点からも理にかなっている。
走行距離:300,152km