ミッションを含め、駆動系のベアリングはだいたい交換し終えているが、実際はまだある。ミッションと左側(助手席側)ドライブシャフトを連結するハーフシャフト(正式名称はインターミディエイトシャフト。以下、ハーフシャフトで統一)に組み込まれているベアリングは現在まで未交換で、20年モノとなった。

ハーフシャフトのベアリング

下回りから覗くと、エキマニの2-1部分のすぐ左側にある。先に結果を述べると、交換前の時点では妙な振動やガタつきは起きていないが、交換後の新品と比較すると、異音が発生していたことが判明した。

20年に渡る走行を支え、これからも走り続けるとなれば、何かしらのトラブルが起きても不思議ではなく、本格的な不調が出る前に交換することになった。さっそくパーツリストで必要部品を眺めてみると、複数の作業パターンが思いつく。

パーツリスト

図中16番(赤丸)を選ぶとASSYでの交換になり、シャフト本体やベアリングサポート(ハウジング)まで新品になるがその分高価で、2018年1月価格で26,352円。

ハウジングとシャフトにセットされたベアリングはプレス機を使って押し出し、また圧入する必要があり、プラスして脱着用の工具も必要となる。これらツールが全て揃っていて、費用も抑えたいなら、図中20番から23番(青丸)までのベアリングやシールのみの交換となる。これらの部品代を合計しても2,000円以下になり、図中21番のベアリング本体に至っては税別990円。

手元にはプレス機や専用工具が無く、手間を掛けたくなかった背景もあって前者の高額パターン、ハーフシャフトをASSYで交換することにした。この後の交換においては問題が発生し、結果的にASSYで揃えておいて正解だったが…。

段ボール箱

重量のある部品なので、梱包用テープだけでなくPPバンドで縛られている。大きく緊急と記載された赤テープは迫力があり、荷札シールにも緊急という文字が印刷されていた。

ハーフシャフトの梱包状態

段ボール箱を開封してみると、ハーフシャフトは二重のビニール袋に包まれていた。

ハーフシャフトを交換するには、ミッションオイルを抜く必要がある。このため、ミッションオイルの交換タイミングに併せて、ハーフシャフトを交換することになった。

16.  44500-SR3-J01  シャフトASSY.,ハーフ  26,352円  1個
18.  90102-SF1-000  ボルト,6カク 10X1.25  729円@243円  3個
その他    ショートパーツ類  539円  

交換…しかし

エンジンやミッションが完全に冷えてから、フロントノーズ側をジャッキアップして左フロントタイヤを外す。外したタイヤはリジッドラックのすぐ後ろ側に置いて、車体の落下に備えておく。下回りでの作業となるだけに、車体の下に入るときは細心の注意を払う。

ミッションオイルを抜く

ミッションオイルを抜く。ミッションのオーバーホール後linkは交換距離を10,000kmに設定しているので、抜けてくるオイルは金色のまま。なお、ミッションオイルの注入はスピードセンサーの取り付け部から行うので、フィラーボルトは締めたままとなっている。

ロアアームを外す

サスペンションのロアアームから、ナックルとダンパーフォークを外す。割りピンやセルフロックナットは再利用せず、必ず新品を使う。

ハーフシャフトとインボードジョイントの接続部分

そしてハーフシャフトとインボードジョイントの接続を外すことになるのだが、ここで問題が発生。ハーフシャフトの先端にある脱落防止用のセットリングがインボードジョイントに噛み込んだらしく、どうやっても抜けてくる様子が無い。サービスマニュアルには『インボードジョイント部をプラスチックハンマーで軽く叩きながら抜く』と書いてあるが、ひたすら叩いても微動だにせず。

車高調レンチやバールを使うことで、てこの原理によって抜けてくるようだが、何度トライしてもインボードジョイントは動かなかった。車体の下に寝そべって作業していることから腕に力が入らず、工具が滑って顎と口腔内を負傷するなど、作業どころではなくなった。

ハーフシャフトのシールにもダメージが入る

なんとか外れないか?と2時間近くコジってみたが、確保していた時間を使い果たしてしまい、作業打ち切り。バールやピンチバーで力を掛けているうちにシールを傷つけてしまい、作業延期はできなくなった。

作業打ち切りでもミッションオイルを注入、サスペンション周りを組み立てて、最低限の走行ができるように復位していく。後片付けが終わったその足でディーラーに向かい、プロの手による交換作業を依頼。「より大きなバールを使うか、ハブから左側ドライブシャフト全体を抜いて個別に分割していく方法もある。時間はかなり掛かる」ということで、一切を任せることになった。

ハーフシャフトの固定ボルト

ちなみに、問題なくドライブシャフトが抜けていた場合、ハーフシャフトをエンジンブロックに固定するボルト3本を外せば、ミッションから引き抜くことができた。ゴール目前、あと一歩のところで敗退だ。
(このボルトのトルク値は39N・m(4.0kgf・m))

取り外されたハーフシャフトのチェック

ディーラーの開店と同時に預けて、作業終了連絡は夕方になってから入った。一日フルで預かるという事前の打ち合わせどおりになったが、無事に交換できたそうで、固着していたアレを外したのか…マジかよすげぇな…という感想が真っ先に出た。ただ、プロのメカニックでも相当苦労したようで、ズタズタにしたとのことだが、調査後に捨てることから問題はなし。

ハーフシャフトのセットリング

ハーフシャフトの溝にある、セットリングを見る。こいつがインボードジョイントに噛みこみ、抜くことができなかった直接原因。通常でもガタつきのあるのが仕様なので、ぱっと見た感じでは広がりや大きな傷は発見できず。リングの開口部が下になり、ハーフシャフトの溝にピッタリはまる位置を探し出すのがコツのようだが、見つけ出すことはできなかった。

アウターシールとエクスターナルサークリップを外す

アウターシールとエクスターナルサークリップを外したところ。アウターシールはベアリングサポート(ハウジング)に軽く圧入されており、強引に引っ張って外した。アウターシールの内側にはグリスがたっぷりと充填されており、20年270,000kmの走行を支えながらも、変色や固形物の生成は見当たらなかった。

アウターシール接触面のキズ

ディーラー側の「ズタズタにした」という部分は、恐らくここ。確かにアウターシールが接する縁に向かって傷が入っており、シールによる密閉効果は失われることになった。部品としては保管せずに廃棄するので、傷つこうが何しようが全く問題なし。

NTN SC07A42LSA

ベアリング本体は信頼と実績のNTN製。シールにはSC07A42LSAという型番が見つかったが、メーカーのWebサイトでは情報は発見できなかった。

シールとリテーナーを外す

シールとリテーナーを外すと、内部のボールが見えてくる。グリスは残っているが、インナーレース(内輪)に僅かばかり傷があるようだ。というのも、インナーレース分解前に手で回してみると、ゴツゴツした感触が若干あった点、ピックツールを探針代わりに探ってみると、引っかかる部分が感じ取ることができた点、これらの状況から、劣化は始まっていたと予測できる。圧入されていて完全分解ができない以上、官能検査による判定だが。

新しいスピンドルナット

左フロントタイヤを外してみると、ドライブシャフトのスピンドルナットが新しくなっていた。ドライブシャフトとハーフシャフトが繋がったまま車体から外し、改めて分離作業を行ったものと思われる。

現車のチェック、そして試運転

装着されたハーフシャフト

交換前のハウジングは長年の使用と熱で赤錆色をしていたが、新品に交換されたことで鋳鉄らしい銀色に光っている。向かって左側、ドライブシャフトのインボードジョイントが斑模様になっているが、これは自分で外そうとした際にキズを入れてしまい、応急的に塗布した錆止め塗料。

シャフト本体も銀色

暗い銀色のシャフトは、周囲に馴染んで目立たなくなっていた。走行で熱が入ることで、ハウジングを含めて次第に赤錆色に変化していくので、すっきりしとした姿を見れるのは今だけだろう。

ディーラーから出発して、すぐに走行音が静かになっていることに気づいた。速度に応じて絶え間なく鳴っていた、低いゴロゴロ音が無くなっている。フロントハブベアリングほどの大きな異音linkは出ていないが、少しずつ劣化が進んでいており、交換してから初めて異常があったと振り返るレベルの音だ。

アスファルトが古いままで、荒れた路面の道路を走ってみても、やはり静かになっていることが確認できた。タイヤ交換直後特有の静けさに近い感じだ。ベアリング内部の僅かな損傷が、エンジンやボディと共振することで、ドライバーの耳に届いていたのだろう。しばらくすれば耳が鳴れて分からなくなるだろうが、先の官能検査による判定からも、本格的なトラブルが発生する前に交換して正解だった。

帰宅後にドライブレコーダーを解析したところ、午前中に作業したようだが、うまくいかずに一旦打ち切っているらしく、昼過ぎから設備が揃う別のリフトに移動。作業に再着手した時刻から試運転に出発した時刻まで、だいたい3時間程度だった。一日でリフトを二箇所も使い、午前と午後の作業時間からすれば、8,640円という工賃で利益が出るかは疑問だが、ディーラーで購入したパーツを持ち込んでいるため、合算すればプラスになっていると思われる。

その一方で、ディーラーへハーフシャフトとシールだけの交換、プレス機を用いた脱着作業を依頼していたなら、どのような工賃が算出されていたのか、これはこれで気になる点だ。アッセンブリー化されたハーフシャフトを外し、さらに分解して組み立てる以上は、単純な交換作業よりは手数が増えることになり、部品代よりも工賃が高くなってもおかしくはない。

20年に渡って過酷な走行を支えてきたベアリングは、低いゴロゴロ音というカタチで寿命をアピールしていた。このまま使い続けていた場合、384,400kmに到達する前にトラブルが起きたかもしれない。月旅行中のリスクをまた一つ、低減することができた。

走行距離:270,443km

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