EK系シビックにおいては、スポーツグレードのタイプRを含めてハーフサイズのラジエターとなっており、冷却能力は乏しく見える。そんな弱々しい印象を押し出しつつ、自動車雑誌やチューンショップからは、具体的、理想的な温度を記載した上で「水温が高くなりがち」「厚さを増したもの交換したほうがいい」と当たり前のように語られることがある。そんな予備知識を踏まえて後付の水温計を通じてチェックしてみると、確かに水温は高い!薄い純正ラジエターを交換しないと!となるわけだ。
ところが、サービスマニュアルを調べてみると、具体的、理想的とされる水温よりも高い数値が記載され、それがEK9/EK4シビックの純正仕様となっていることが分かる。
写真はB16Bでのデータで、SiR系のB16Aも全く同じ。この表で記載されているとおり、サーモスタットは90℃になってようやく全開になり、それ以下の温度では開いている途中というレベル。
ラジエターの電動ファンは、バイメタルという金属の膨張を利用した機械的なスイッチを使って、水温の上昇具合を検知している。よって水温が91~95℃あたりに達したら動き出し、3~8℃落ちたら停止するという、幅のあるアバウトな制御となる。エンジン設計者は「水温は90℃がベスト」と発言しており、純正状態ではその意図どおりに90℃前後でコントロールされている。
交換前提で捉えられがちな純正ラジエターだが、サーキットでのスポーツ走行に耐えられることは実際に確認済み。オーバーヒートでピットインを余儀なくされる、途中でスポーツ走行を中止するという事態は一度も発生していない。
純正水温計をH側へ動かすには
水温は90℃前後でコントロールされていることは分かった。ここで「純正水温計は、適温表示より上(H側)に動いたとき、水温は何℃なのか」という疑問が浮かんだ。
写真は水温が適温に達し止まった状態で、H側まで動くことは基本的にはない。ではH側に動くとき水温は何℃なのか、実際にテストを行って確かめてみることになった。
ファンスイッチの動作によって電動ファンが回らないよう、カプラーを外しておく。
その他の測定詳細として。
アイドリング状態で測定する。
水温測定はテクトムCMX-100 H1を使用する。
恐怖心優先。これ以上は危ないと感じたら測定終了、電動ファンのカプラーを接続して冷却する。
テスト時の気温は晴れ、気温29.1℃、風向は南5.5m、車の向きは南西。
テクトムCMX-100は、ECUが読み取った水温を表示しており、水温センサーはエンジンヘッドに装着されている。また、すぐ近くに純正水温計用のセンサーも装着されている。
この2本の水温センサーは動作不良を起こしており、2016年8月末(230,170km)に交換
している。
ドキドキの水温テスト
それではテストスタート。電動ファンのカプラーを外した状態でエンジンを始動する。
エンジン開発者曰く「アイドル状態においては、100℃に達しても大丈夫」とのこと。真夏の炎天下で長時間のアイドリングや、低速カーブが続く峠道をグイグイ走っていると、この温度に達することは珍しくない。
102℃。変化はなし。
103℃になったあたりで、純正水温計は静かにH側へ向かって動き出す。サーキットでのスポーツ走行においては、純正水温計が動き始めたことを察知し、クーリング走行に切り替えてペースダウンしていたのがこの温度。
105℃になると、水温計マークの波線がはっきりと見えてくる。純正水温計の動きは、CMX-100の表示よりもかなり遅い。タコメーターのようにビンビン動くのではなく、燃料計のようにゆっくりゆっくりと動いている。
107℃。この時点で、エンジンを壊すのではないかという懸念と、何かあってもすぐに復旧できるよう、緊張感が強くなっていた。
111℃になると、水温計マーク全体が見えるようになる。ラジエターのリザーブタンク内の水位が明らかに上昇、さらにはユラユラと動いていた。
CMX-100は奇数温度を表示して少しずつ上昇していたが、突然114℃まで跳ね上がり、これに驚いて電動ファンのカプラーを接続、ラジエターの冷却を開始してテスト終了。
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ラジエターから冷却水が吹き出してしまう、本当の意味でのオーバーヒートまで追い込むと、エンジンヘッドやブロックが歪み、ガスケット吹き抜け等の危険度が高くなってしまう。純正指定のラジエターキャップ(1.1kg/cm2、108kPa)を装着した状態での冷却水の沸点は、122℃。114℃は沸点以下だが、冷却水は『純水』ではなく、ラジエターキャップ(圧力弁)も多少は劣化していることを考えれば、公式どおりの沸点とは異なる温度で沸騰してしまう恐れがあり、これ以上のテストは行わなかった。
純正水温計がH側に動く=本当に高水温
以上のテストから、103℃を超えたあたりから純正水温計が動き始めることが分かった。ラジエターの電動ファンとファンスイッチが正常に動いていれば、水温は上がり過ぎないように制御されている。水温が114℃に達して電動ファンのカプラーを接続したところ、純正水温計はすぐに適温表示へ戻っていった。電動ファンが長らく回り続けることもなく、30秒以内に停止。これで水温は100℃を切って90℃台に落ちて、元の状態に落ち着いた。
EKシビックの純正水温計が水平位置=適温という表示は正解で、H側に動き始めた時点でエンジンの冷却系等に異常(電動ファンの故障、経年によるラジエターのフィンやチューブの詰まり、サーモスタットの固着等)が考えられることになる。日常走行においては、純正水温計は必要にして十分な機能を持っている。
走っていればラジエターに風が当たって、熱交換が行われる。一般道や高速道路問わず、一定の速度で流している場合はだいたい86℃から95℃まで達しないところで安定する。走行中に100℃に達するシチュエーションは、渋滞にハマる、サーキットや峠道での高負荷な環境といった限られた場面で、短距離でもアクセルを抜けば、すぐに90℃台へ戻る。これらの水温変化から、サービスマニュアルどおりに90℃前後を保っていることが確認できた。
もし水温が高くなる傾向にあるならば、ラジエターのフィンの目詰まり、内部チューブの水垢の有無といった点検からスタートする。
エンジンが完全に冷えた状態から始動して、純正水温計がC側から動き始める温度が、だいたい55~60℃。かつて使っていたローテンプサーモスタット
の開弁温度が68℃で、冬場になればC側近くまで落ちていた。純正サーモスタットの開き始め温度が76~80℃と設定されている点からしても、ローテンプサーモスタットでは適温を保てないことを示していた。
ドライバーを焦らせない意図があるためか、水温が105℃以上に高くなっても純正水温計はゆっくりとした動きが続き、電動ファンが動作して水温が下がれば、速やかに中央付近へ戻るようになっている。つまり上昇表示は遅い、下降表示は早い設定になっているようだ。