メーターパネルを移植した
ものの、修復したスピードメーターの動きが若干怪しい。振動や車体への衝撃で、スピードメーターの針が揺さぶられて落ちてしまうことが見られるようになった。やはり、針の無理な脱着で駆動ローターへのダメージが加わってしまったらしい。今後、改めてスピードメーター一式を交換するとして、ネックになるのはオドメーターの数値。なるべくなら数値を引き継ぎたいが、分解して数値を調整することは、修復の経験から二度と行いたくない。
スピードメーターは、ミッション内にあるパルスジェネレーターから車速信号を受け取り、針を動かしている。車速信号は別名パルス信号というようで、ON、OFFの波形、しかもスピードが上がるにつれて、このON、OFFの切り替え間隔が早くなっていく。このパルス信号を作り出す発生器なんてのも見つかったが、たった一度の使用となるのに価格が高すぎる。パルス信号が生成できれば…と改めて考えてみたところ、目の前に、しかも大量に持っていることに気づいた。そのパルス発生器とは、パソコン用の電動ファンだった。
パソコン用電動ファンの電源電圧は直流12Vで、マザーボードは常に電動ファンの回転数を監視し、温度によって回転数を上下させる制御を行っている。マザーボードは回転数を感知するために、電動ファンからパルス信号を受け取ることからケーブルは3本(電源、パルス信号、グランド)となっている。乗用車に当てはめてみると、電源が12V(実際には13V近く)なので、電動ファンには都合がいい。パルス信号もON、OFFの波形なので車にピッタリではないか。電動ファンがパルス信号発生器として役立つのか、そしてオドメーターを回すことができるのか、さっそく調査してみた。
いきなり結論
結論から言うと、ばっちり成功。水増し、早送りさせる方向での改ざんとなった。複数の電動ファンを比較したところ、4,000rpmが最も都合が良かった。
電動ファンを4,000rpm付近で回すと、スピードメーターはだいたい200km/hほどを指し、応じてトリップメーターとオドメーターも猛烈な勢いで回り続けている(※1)。このことから、EK9シビックRは、電動ファンでオドメーターの距離再設定が可能と判断した。ちなみに、スピードメーターを200km/hにしても、オドメーターを10,000km回すには、50時間(約2日)が必要。時間はかかるが、非分解で実施するには仕方ないこと。
電動ファンをパルス発生器として使う方法
使用する材料は、パソコン用の部品(DOS/Vパーツ)がメインとなる。
オドメーターの距離再設定の要となる、4,000rpmの電動ファンと、ファンコントローラー。この電動ファンは、ラックマウント型サーバ用のCPUクーラーだったりする。Socket370/A(PentiumIII/旧Athlon/VIA C3)用で、ウチではこの規格が2014年現在も現役なので、登用に至った。ファンコントローラーは、回転数が監視できるものを選んだ。Cooler Master AERO GATE II、既に10年モノ。
写真には写っていないが、電動ファンとスピードメーターの電源にATX電源装置(※2)が一台必要。そして、スピードメーター(単体)。これを忘れてはならない。
ATX電源装置、電動ファン、ファンコントローラーそれぞれとスピードメーターを接続するため、延長ケーブルを使用。ATX電源装置のケーブルを切ってしまうわけにはいかないので…。
スピードメーター用の電源として、延長ケーブルを写真のように加工。コネクタはメス側を残し、オス側、5V(赤)と隣接するグランド(黒)は不要なので除去。残ったのは12V(黄)と、やはり隣接するグランド(黒)の2本となった。
電動ファン用延長ケーブルのパルス信号線(黄)を切り、スピードメーターに経由接続する。つまり、パルス信号をスピードメーターに送りつつ、ファンコントローラーに戻る接続を行う。
車からのパルス信号の電圧は、12Vと5Vの両方のパターンがあるらしく、EK9シビックRは不明。電動ファンのパルス信号は、測定した結果は6V。これなら、5Vパターンでいける。このままスピードメーターに接続するのは不安だらけなので、適当にあった15mAのCRDを接続した。3本を並列接続して、とりあえず45mAを確保。肩特性電圧は4.3Vで、実測5V以上だったことから大丈夫だろう(CRD無しでも動作することは一応確認済)。
CRD=定電流ダイオードCRD(Current Regulative Diode)のこと。
肩特性電圧値以上、最高使用電圧以下ならば、数十mAというレベルで一定の電流を流すことができる。スピードメーターへ大電流を流さないための防御措置。
スピードメーター背面の接続は、写真のとおり。IGNにATX電源からの12V(黄)、GNDにATX電源へのグランド(黒)。電動ファンからのパルス信号は、CRDを経由してSPに接続する。\ODには何も接続しなかった。スピードメーターとケーブルの接続ネジは、5インチペイ用のミリネジを使っている。
以上までの接続方法を描いた、ポンチ図。ATX電源に、スピードメーターとファンコントローラーを接続。ファンコントローラーに、パルス信号用の電動ファンを接続。
電動ファンのパルス信号は、ファンコントローラーとスピードメーターの両方に送る。こうすることで、ファンコントローラーで電動ファンの回転数を制御できる。同時に、擬似的に走行スピード(オドメーターの回転ペース)を調整することが可能となる。
パソコンを使わずしてATX電源を使うには、コネクタを短絡させる。電源コネクタの爪側から見て、右から3番目と4番目をショートさせれば、独立起動できる。
これで全ての準備が完了。もう一度接続を確認し、異常がなければATX電源をONにする。スピードメーターの針が動き、オドメーターとトリップメーターが動くのを確認。先述したが、200km/hでも10,000kmを走るのに50時間かかり、かなりの時間が必要となる。希望するオドメーターの距離になったら、ATXの電源をOFFにして再設定作業は終了となる。
電動ファンの回転数でスピードメーターが変化する様子
まずは電動ファンの回転数を3,000rpmに設定すると…。
針は150~160km/h付近を指す(※3)。そして、4,000rpmにアップさせる。
ゲージを振り切って、だいたい200km/h近くを指す(※3)。実際の走行で、好条件を揃えて、ノーマルのEK9シビックR最高速度がこのあたり。計算上、1kmを走るのに18秒。経験からして、確かにその程度だった。
注釈
完全他力本願、参考サイト1…★★★車速信号の解析と取得方法★★★![]()
参考サイト2…FANの回転パルス信号![]()
車種によって倍率が異なるようで、EK9シビックRは古い車だし、参考サイトの『表1-1 4パルスでの各速度周波数』を目安にする。次に、電動ファン。3,500rpmで117Hzのパルス信号を発していることが分かり、表に当てはめてみると160~170km/h付近、4,000rpmまで上げると133Hzとなり、190km/hにギリギリ届かないスピードとなることから、やはり4パルスとなる。パルス信号とスピード表示が派手にズレている理由は後述(※3)。
※1
EK9シビックRのスピードメーターは、速度を表示する指針の駆動ローターと、オドメーターとトリップメーターを同時に動かすモーターという、二つの駆動装置を持っている。パルス信号を受け取ると、この二つの駆動装置が一斉稼動するようになっている。スピードメーター、オドメーター、トリップメーターそれぞれがバラバラに配置されていた場合は、ユニット一式での調査となっていた。
※2
ワット数は関係ない。古いモデルでも大丈夫。
※3
使用したスピードメーターは、パネル移植後の廃品。適当に組み立てたため、針の位置が派手にずれている。
その他
<注意>
壊してもいいスピードメーターが手元にあったことで、調査できた。当然ながら、この方法でオドメーターの数値は減らすことはできず、増やすのみ。一旦999,999kmまで回せば次は0に戻るので、減らした数値に設定することは可能だが。他の車種で実行できるかは現在のところ不明だし、実際に真似して壊しても、当方は一切関知せず。
悪 用 厳 禁 !
</注意>
今回の場合、スピードメーター単体での実行となり、ユニット一式では行っていない。回路を追えば可能かもしれないが、あいにく面倒なので…。古いアナログ式のオドメーター(トリップメーター)だからこそ、できた内容とも言える。デジタル式のメーターだと、こうも簡単にはいかないだろう。