工場での製造と初度登録は1998年の春で、このレポートを書いている2024年1月の時点で25年と半年が経過している。この経過年数において、エアコン周辺で発生したトラブルは、2020年9月のコンデンサーファンモーターの故障
のみ。高い耐久性を持っていることを実感させられる。
そんなエアコン周辺だが、トラブルまではいかないものの、経年による劣化は起きている。
レシーバータンクのサイトグラスが曇っており、冷媒の状況が見えなくなっている。本来なら透明なグラスだが、内側から曇っているために拭いても状況は変わらない。
これでは冷媒量をチェックすることができず、ディーラーやカー用品店で数年おきに『エアコンガスクリーニング』と称するサービスを受けることで、適正な冷媒の量を維持している。
もう一つ、室外機に相当するコンデンサー。
酷道やダートを走ることを好むため、コンデンサーのフィンは目詰まりしやすくなる。バンパーのグリルにはメッシュを装着し、大きな異物が突入してフィンが潰れることを防いでいるが、完全なものではない。
長距離ドライブ終了後のメンテナンスでは、潰れたフィンは一枚一枚起こしている。しかし、内部に引っかかる細かい砂利や虫の破片までは除去することはできない。
ラジエターの件を振り返ると
ボロボロになってしまったラジエターを新品に交換すると、フィンの目詰まりが無くなって空気の通りが良くなり、本来の冷却性能に戻った。純正でハーフサイズしかないラジエターであっても、サーキット走行や真夏の渋滞では一切の問題は起きていない。
…となれば、コンデンサーも同じと考えて、目詰まりのない新品に交換する。これでエアコンの本来の性能に戻り、夏場においてはより涼しい車内環境が実現できると思われる。
このような安易な考えから、不透明なサイトグラスになったレシーバータンク、目詰まり気味のコンデンサーを交換して、簡易リフレッシュすることが決まる。
猛暑真っ盛りな2023年8月、来年のエアコンシーズンは簡易リフレッシュしたエアコンで対処しようと、プランがスタート。晩秋までに必要な部品を揃え、2023年12月の車検で冷媒を抜き取り、年末に部品交換。年始早々に冷媒を再充填という流れになった。
冷媒は大気開放厳禁につき
作業ではエアコンを構成する部品を取り外す工程があり、内部の冷媒を大気に開放することは禁止されている。よって2023年12月の車検において、冷媒の回収(抜き取り)を依頼している。
2018年のエアコンガスクリーニング実施時の様子。エアコンの配管に、冷媒の回収と充填を行うホースが接続されている。
EKシビックに使われている冷媒は代替フロンのR134a(HFC/CH2FCF3)で、規定量は600~650gを使用している。オゾン層破壊係数はゼロながらも地球温暖化係数が極めて高く、二酸化炭素が1に対してR134aは1430にも達する。
以上、エアコン関係の作業では冷媒の扱いを第一に、回収だけでなく確実な再充填も視野に入れるといった入念な準備を行う必要がある。普段の、勢いに任せたDIY作業は行っていない。
各種部品を購入
最も大きな部品となるコンデンサーは、純正相当品と称する社外品を購入。これは純正品に近いサイズで製造されており、しかも部品価格はかなり抑えられる。このような性質から、純正部品の供給状況を調べることなく、最初から社外品をチョイスした。
| 2. | 純正相当品 | コンデンサー | 24,200円 | 1個 |
参考となる純正コンデンサーの部品番号は80151-SR3-013となる。コンデンサーの側面に装着されている4番、5番のウレタンシールは隙間を塞ぎ、導風のための部品なので、新しいコンデンサーに移植する。コンデンサー上部に載せられている3番のウレタンシールについては後述。
購入先は近所のラジエター店。コンデンサーの扱いも行っていることが分かり、取り寄せてもらう。車で取りに行ける範囲だったので、直接取りに行った。
社外品だけあって形状はほぼ同じながらも、純正品とは異なる造りと一目で判断できる。純正品はフィンが細かく密になっていたが、こちらは粗くてピッチが広い。
段ボール箱に貼り付けられていたステッカー。HONDA CIVICの文字がある。大和ラヂエーターグループ
による供給のようで、同社の公式Webサイトでは頻繁に国内一貫生産、メイド・イン・しまねを謳っているが、実際はこのようにタイ王国製だったりする。
続いて、配管周りの部品類について。
| 6. | 80351-S04-003 | レシーバーCOMP. | 12,320円 | 1個 |
| 10. | 80865-ST0-003 | キャップH,バルブ | 187円 | 1個 |
| 11. | 80866-ST0-003 | キャップL,バルブ | 187円 | 1個 |
| 13. | 80872-ST7-000 | Oリング(1/2") | 170円 | 1個 |
| 14. | 80873-ST7-000 | Oリング,6.9X1.5 8MM | 477円@159円 | 3個 |
| 18. | 95701-06025-08 | ボルト,フランジ 6X25 | 156円@39円 | 4個 |
要となるレシーバータンクは6番。
80351-S04-003 レシーバーCOMP.の全体像。EK系シビックが登場したのは1990年代中盤。25年以上を経過しながらも、こうして新品が出ることは驚異そのもの。
レシーバータンクだけでなく、コンデンサーと配管を切り離す部分のOリングは、再使用すると冷媒漏れの危険性があるので全て交換。強く締め込まれたボルトについても、ストレスを考慮して新品とした。
交換
2023年12月の車検で冷媒は抜き取った。数日後、注文していた部品も全て揃い、いよいよ作業を開始。
一旦サービスマニュアルを参照する。ハーネスと配管を外せば、シュラウドを含めたコンデンサー全体をまとめて取り外すことができるような趣旨で記載されている。
実際にやってみると、フレームやエキマニの遮熱カバーに引っかかったり、コネクタの状況が見えにくかったりと、作業性に難がある。デリケートな部品で構成されている関係もあり、一つひとつ分解しながら作業することになった。
作業スペースを確保するために、フロントバンパー、左側のスプラッシュガードとインナーフェンダーを外しておく。
コンデンサー側の作業
真っ先に配管を外す。配管の固定ボルトは経年で緩みにくく、コンデンサーが動かなければ力を掛けやすいため。
車体の下側からスタート。低圧配管を外す。シュラウド側面には上段、中段、下段とコネクタが3段並んでおり、下段コネクタを外す。続いて、シュラウドの1本目のボルトも外す。
ラジエターコアサポート側から見える高圧配管、コンデンサーを固定するステーを外す。
エキマニの遮熱カバーを外す。
コンデンサーファンモーターのアース線、ハーネス裏の2本目のボルト、上段コネクタを外す。
コンデンサー本体は、コンデンサーファンモーターのシュラウドに4本のボルトで装着されており、コンデンサーとシュラウドを分離しながら車体から外すことになる。白矢印のバンドクリップについては、後ほど全てのボルトを外して動かせる状態になってから、シュラウド内側から外す。
上段コネクタの下にある、中段コネクタを外す。またコネクタのすぐ下には配線を固定しているクリップがあり、こちらも外しておく。割れやすいので注意。
車体センター寄りにある、シュラウドの3本目、4本目のボルトを外す。これでコンデンサーとシュラウドが分離し、シュラウド→コンデンサーの順番で車体から外すことができる。
車体から外されたコンデンサー本体。左右に貼り付けられているウレタンシールは丁寧に剥がし、新しいコンデンサーに同じ位置と角度で接着した。接着剤は多用途かつ耐熱性のあるセメダインのスーパーXハイパーワイドを使用。
レシーバータンク側の作業
レシーバータンク上部への手を入れやすくするため、写真のようにパワステフルードタンクを上に引き上げてブラケットから外す。ホースは切り離す必要はない。作業する際はタンクをエンジンヘッド側に傾けることで、手や工具を突っ込めるスペースを確保できる。
レシーバータンク上部で接続している配管2本、圧力スイッチのコネクタをそれぞれ外す。
ウォッシャータンクの背面。レシーバータンクの固定用ブラケットのボルトを緩め、レシーバータンク本体を上に引き抜けば、車体から外すことができる。
レシーバータンクの新旧比較。25年が経過するうちに製造するサプライヤーは変わっており、旧部品は昭和アルミニウム(現レゾナック)だったのが、新品は日立Astemo(ケーヒンブランド)となっている。
装着、組み立て
作業は折り返し。取り付けは取り外し工程の逆手順で行う。各Oリングは必ず新品を使用し、旧コンデンサー内部から流れてくる潤滑オイルを塗布する。配管の各ボルトの締め付けトルクは9.8N・m(1.0kgf・m)となる。
新しいレシーバータンクを車体に装着。
配管と圧力スイッチを接続。新品ボルトを使用することでスムーズな締め付けだけでなく、何かしらの作業が行われた痕跡になり、目視による締め忘れ等の確認がしやすくなるといったメリットがある。
コンデンサーを車体にセットし、続いてシュラウドを組み込む。ここまでくると、元に戻ってきていることが実感できる。
25年以上使用し、フィンが黒ずんでボロボロになっていた純正コンデンサーと比べると、その違いは歴然。フィンのピッチが広くなっており、これが冷房性能や耐損傷性はどう変わってくるか。
ブラケットと高圧配管を装着し、コンデンサーが動かないようにする。さらに上段と中段のコネクタを接続していき、ハーネスを元に戻していく。
コンデンサー下部の配管を装着。最後に下段コネクタを接続すれば交換作業そのものは完了となる。作業のために外していたフロントバンパー、インナーフェンダーやスプラッシュガード、パワステフルードタンクを装着しておく。
冷媒再充填
コンデンサーとレシーバータンクを交換した。残るは冷媒を再充填すれば作業完了…ではないのが、エアコンシステムの整備。ここから先は、ディーラーに作業依頼となった。
真空引きを15分行い、配管から空気を完全に抜き取り、真空状態が保たれていることを確認できてから冷媒を再充填する。当たり前だが真空状態が保たれていないと、冷媒を充填しても漏れ出てしまう。
サービスマニュアルの真空引き項目に掲載されているイラストより引用。車体側の低圧と高圧の各配管にホースをセットし、真空ポンプやR-134aが入っている缶を接続。ゲージを確認しつつ各バルブを操作、規定量の冷媒を充填する流れになっている。
現在は専用のサービス機器を接続すれば、真空引き、真空状態チェック、冷媒充填のプロセスがまとめて行えるようになっており、イラストのように個別の機材を用意する必要はなくなっている。事前承諾事項として「合計で1時間は掛かる」とのこと。
作業明細書には、真空引きとエアコンガス(冷媒)充填が分けて記載されていた。冷媒の充填量は規定通りの600g。
冷媒をチャージして、さっそく常時携行と表記されたメンテナンスノートを開く。冊子の最後の方にエアコンの手入れ方法が記載されており、冷媒量のチェック方法も含まれている。
レシーバータンクのサイトグラスから冷媒の量をチェックできる。少々分かりにくいが、コンプレッサーが動作しているときに、冷媒が流れる様子が見えれば正常。冷媒量が足りなくなると、応じて流れる様子も見えにくくなる。
コンプレッサーがOFFのとき。サイトグラスの内側に付着物があり、冷媒が流れた痕跡がある。
コンプレッサーがONになると、冷媒がかなりの勢いで流れている様子が見える。メンテナンスノートでは透明と書かれているが、このとおり黄色を帯びた色合いだったりする。潤滑油が影響していると思われる。
過去、エアコンの原理を学ぶ装置で教育実習を行った際、サイトグラスを使った冷媒の点検方法を勉強していた。規模は異なりながらも、冷媒の流れ方そのものは近いものがあった。
コンデンサー上部のウレタンシールについて
先述しているように、コンデンサーの左右に貼り付いていたウレタンシールは移植した。しかし、上部については再使用できなかった。
純正コンデンサーと見た目は殆ど同じとはいえ、そこは社外品。高さと厚さのサイズが微妙に異なり、大きな隙間が生じている。ウレタンシールをコンデンサー上部に載せると、ファン側へ落ちてしまう可能性が出てきた。
万一、コンデンサーファンモーターが動作しているときにウレタンシールが落ちて吸われてしまうと、ファンで粉砕され破片がエキマニにヒット。熱せられたエキマニに付着すると溶けてしまい、発煙や異臭の原因も想定される。
無くても使用上は問題ないが、隙間を塞ぐ意味合いがあるため、対策を施す。
用意したウレタンシールは、80116-TY0-013 シールB,コンデンサーを二つ使用する。本来はN-BOX用の純正品を流用している。EK9用のウレタンシールよりも一回り大きな長方形で、切断加工がし易い形状となっているのが選定理由。
| 80116-TY0-013 | シールB,コンデンサー | 704円@352円 | 2個 | |
純正のウレタンシールと同じ大きさになるよう切断し、多用途接着剤(セメダイン スーパーX HYPERワイド)で貼り合わせる。
加工したN-BOX用のウレタンシールを現車に装着。隙間を塞ぐことができて、グリル側からは電動ファンの羽根が見えなくなり、粉塵や虫の直撃は避けられるだろう。
〆
エアコンを使わない冬場、無風で乾燥注意報が出るほどの低い湿度という、エアコンの整備にはちょうどいい気候での作業となった。10時前にスタートして、「作業終わり」「メシだメシ!」と12時になる前に作業を終えていた。
外したコンデンサーを振ると大量の砂粒が落ちてきて、落とすと砂煙が舞い上がる。想像以上に目詰まりしていたらしく、これでも熱交換は正常に行われて冷風は出ていた。近年の気候変動から、エアコンを使うシーズンは長くなっており、早いうちからリフレッシュした効果が体感できると思われる。
冷媒を抜くのだから、コンプレッサーも交換してはどうか?と何度も提案された。コンプレッサーは2023年8月時点では新品、リビルト共に出るようで、エアコンシステム全体のリフレッシュも悪くはなかった。それでも今回の、簡易リフレッシュに留めたのは資金的な問題による。
コンプレッサーを使わない冬場でも、週に1回は5分ほど動作させて潤滑油を回しているのも、交換しなくても大丈夫だろうと判断する根拠になっている。職業柄、稼動条件が極めて厳しい環境下で動作していたコンプレッサーを点検していた経験則もあるが。
世間で売られている冷媒は1缶(200g)あたり、数百円から。ここに真空ポンプをはじめとした充填用の各種機材を揃えていくと、ディーラーで真空引きとチャージをまとめて依頼したほうが安くなる。
走行距離:373,932km