概況

2020年8月16日、高速道路から一般道へ戻って渋滞に巻き込まれたところ、車内温度と湿度が急上昇したことを認めた。発進時ではコンプレッサーの電磁クラッチがONとOFFを繰り返すようになり、加速不良が発生した。

コンプレッサーが動作している状態では、アイドリング回転数が500~600rpm付近に落ちてしまい、アクセルを踏み込まないと加速できない。スピードの増加に伴い、電磁クラッチのONとOFFの切り替わりが激しくなり、異常な前後衝動が発生する。

同日、調査実施。

調査

●再現性
高速道路での走行環境、一般道(渋滞)の走行環境の違いはあるものの、一定のスピードを維持できる条件ならば、コンプレッサーの動作とエアコンの効きが良くなり、機能が復旧することが分かった。アイドリング状態、極低速の走行からすぐに止まる…という渋滞走行で、エアコンの効きが悪くなり、コンプレッサーの異常動作が再発生することが確認できた。

●仕様特性
ハーフサイズのコンデンサーから、もともと渋滞や低速走行に弱く、エアコンの効きが悪くなることはある。【写真1参照】

EKシビックのコンデンサーはハーフサイズ

写真1:ハーフサイズのコンデンサー

●車内にて
吹き出し口からは、コンプレッサー用潤滑油の特徴的なニオイは感じられず、これでエバポレーターの異常はないものと判断した。

●エンジンルームにて

(1)コンデンサー状態確認…湿り気(油漏れ)、フィンの損傷等の異常なし。

(2)レシーバタンク状態確認…サイトグラスは汚損しており、異常判定に使えず。【写真2参照】

サイトグラスは雲って見えない

写真2:レシーバタンクのサイトグラスは透明度が低下。

(3)冷媒配管状態確認…曲がりや折損はなく、接続部を含めて全て良好。ただし、サクションホースが冷えていない。異常あり。【写真3、4参照】

冷たくないサクションホース

写真3:サクションホース(左側はパワステフィードホース)

サクションホースの結露状況

写真4:正常であればサクションホースは冷たく、カシメ部やホース表面に結露が見られる。

(4)コンデンサーファンモーター状態確認…低回転かつ風量不足を確認。異常あり。【動画1参照】。

動画1:コンデンサーファンモーターの回転不良

A/CスイッチをOFFにした状態でファンを手で空回しさせてみたところ、回転が非常に重くスムーズに回すことができなかった。回転に伴い、ガタガタとした感触があった。

(5)各配線状態確認…焼損や異臭等、異常なし。

調査結果

各部の調査から、エアコンが効かなくなった原因は、コンデンサーファンモーターの回転不良と考えられる。コンデンサーの排熱ができないため、冷媒は高温高圧のままエバポレータに流れ、空気の熱を吸収できずにコンプレッサーへ戻ってきていると想定される。

コンプレッサーは気化した冷媒を圧縮するのではなく、液状の冷媒を圧縮しようとしているので異常な圧力を検知してしまい、頻繁なONとOFFを繰り返しているものと想定される。高速道路や流れのいい一般道では、走行風によるコンデンサーの排熱ができるため、エアコンの効きが復活すると考えられる。

・エバポレーターに異常なし。

・コンデンサー本体に異常なし。

・レシーバタンクは判定除外。

・サクションホースが冷えていない。

以上のことから、本事象はコンデンサーファンモーターの回転不良に伴うもので、コンデンサーで排熱不能(冷媒の液化不能)が発生、エアコンの効きが悪くなったと推測する。

処置

・コンデンサーファンモーターは2020年8月末時点では、欠品で納入時期は見通せず。急ぎだった事情もあってアメリカHondaPartsNow.comから取り寄せることにして、交換作業実施まではコンプレッサーを動作させないように、電磁クラッチリレーを暫定的に撤去した。【写真5参照】

電磁クラッチリレー

写真5:一時的に外したリレーボックス内の電磁クラッチリレー

・新品のコンデンサーファンモーターへ交換した。【写真6~17参照】
⇒取替後、エアコン動作及びコンプレッサーの動作良好。

その後のモーターの流通状況

2021年8月18日に頂いた情報によれば、今は『出る』という。為替の都合で高価になり、そこに送料と関税が掛かってしまう海外手配の前に、再度ディーラや部品商へ在庫を問い合わせるのがベスト。この手の在庫情報は、ネット通販ではかなりのタイムラグが発生することがあり、実店舗での打ち合わせが最も早い答えが出る。

コンデンサーファンモーターの交換

アメリカHondaPartsNow.comからコンデンサーファンモーターが無事に配達され、さっそく交換作業を行うことになった。構造上、エキマニがすぐ背後に存在しており、火傷しないようエンジンやエキマニが完全に冷えてから作業に着手する。

エキマニの遮熱カバーを外す

写真6:作業スペースを少しでも広げるため、エキマニの遮熱カバーを外す。

コンデンサーのステーを外す

写真7:コンデンサーをフレームに固定しているステーを外し、ゴムブッシュも外しておく。

上部カプラと1本目のボルトを外す

写真8:コンデンサーファンモーターのアースケーブル、上部カプラを外す。コンデンサー本体は、コンデンサーファンモーターのシュラウドに4本のボルトで装着されており、1本目のボルトを外しておく。白矢印のバンドクリップについては、後ほど全てのボルトを外して動かせる状態になったとき、シュラウド内側から外す。

中部カプラとクリップを外す

写真9:上部カプラから視点を下に落とすと、中部カプラが見えてくる。またカプラのすぐ下には配線を固定しているクリップがあり、それぞれ外しておく。

下部カプラと2本目のボルトを外す

写真10:さらにシュラウドに沿って下に行くと、下部カプラあるのでこちらも外す。説明のためにスプラッシュガードを外して地面側から見ているが、実際は上部から手を突っ込めるくらいの隙間はあり、手探り状態ながらも外すことができる。ここで2本目のボルトを外す。パイプが繋がったボルトは冷媒用の配管用なので、絶対に緩めないこと。

3本目、4本目のボルトを外す

写真11:車体センター寄りにある、3本目、4本目のボルトを外す。これでコンデンサーファンモーターが装着されたシュラウド一式とコンデンサー本体が分離した。フィンを傷つけないよう、配管やエキマニの隙間を通りながら上に向かって、引き出していく。

ファンブレードの固定はモーター軸部のネジとナット

写真12:車体から外したシュラウド一式。まずファンの中央部分にあるナットを外し、ファンブレードとモーターを分離する。

モーターの軸にはカラーがある

写真13:モーターの軸にはカラー(スペーサー)があり、こちらは新品のモーターへ移植する。軸を傾ければポロリと取れるが、非常に小さいため紛失しないように注意する。

モーターの装着はビス3本

写真14:モーターは背面カバーを介して、3本のビスでシュラウドに装着されている。ビスを全て外すと、モーターを外すことができる。

新旧比較

写真15:左は故障して外したモーターで、右が新品モーター。アメリカから取り寄せたとはいえ、製造は日本国内のサプライヤーで、いわば逆輸入品。形状や仕様は同一となる。

ここから作業は折り返し。外した部品やカプラーを元に戻していき、車体に装着すれば作業完了。

新旧比較

写真16:新品モーターへの交換が終わり、車体に装着し終えたところ。光り輝くモーターカンが微かに見える。

新旧比較

写真17:外していた電磁クラッチのリレーを元に戻し、エンジンを始動。エアコンを動作させて、A/CスイッチをONにする。コンデンサーファンモーターは高速で回転しており、車内温度の低下を確認。電磁クラッチの頻繁なONとOFFは起きておらず、加速時の前後衝動は収まっている。全て検査良好。

使用パーツ
6.  80151-SR3-013  モーター,クーリングファン  219.09USドル(25,484円)  1個

不良原因について

作業前の調査段階で、手で分かるほどファンは重たい回転となっていることが判明している。モーター軸を支えるベアリングの劣化か、電気接点となるブラシの偏摩耗が想定される。外したモーターを分解し、内部調査と診断を行う。【写真18~20参照】

新旧比較

写真18:モーター軸は前後のベアリングで支持されており、向かってブラシ側のベアリングが固渋気味となっていた。シールドを外してさらに調べてみると、ベアリング内部はグリスを覆うように黒い異物で占められていた。異物はブラシの粉(カーボン)と思われ、22年に渡る回転で削られてシールド内側に蓄積してしまい、スムーズな回転を妨げていたと考えられる。

新旧比較

写真19:コミュテーターは筋状の摩耗が認められたが、軸のブレやブラシの偏当たりを思わせる異常摩耗は起きていない。

新旧比較

写真20:コミュテーターと接するブラシは、残量は僅かとなっていた。寿命限界の目安として、製造メーカーのロゴが消えるタイミングとしており、近い将来にブラシの消耗で回転不良が起きていたと思われる。

これらの診断から、22年31万キロの走行による経年で、モーターの回転不良が起きたと判断した。2020年4月に中古のコンデンサーファンモーターを分解調査した記事linkをアップしている。ブラシの消耗状況とベアリングの寿命を考慮すると、中古品での復旧はトラブルの完全解決にはならず、問題の先送りとなってしまうことも予想された。

部品手配と作業日設定の都合から、厳しい残暑の中で二週間以上に渡ってエアコンが使えない状態が続くことになった。外気とエンジンの熱気が合わさることで、吹き出てくる風は40℃を超え、常に熱中症の危険性があった。

高温多湿の暑さから、短時間でも雨が降ると各ガラスは湿気で曇ってしまう。エアコンが使えないと除湿機能が無いことになって視界不良、安全性に大きな問題が起きることが分かった。

毎年、初夏にはEACVやコンデンサーファンモーターの入念点検を行っているが、この時点ではコンデンサーファンモーターに異常はなく、高速回転ができていた。ベアリング内部の異物の蓄積状況から、少しずつ不調になるのではなく突然壊れるようだ。

直流のブラシモーターとなれば、遅かれ早かれ寿命は必ず訪れる。年々、夏の環境が過酷になる一方で、海外からの部品輸入が成り立たなくなったときに故障した場合、解決はより困難になってしまうところだった。

走行距離:312,003km

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