現在使用中のステアリングハンドルは、2010年10月31日に交換したもの
。当時は解体やチューンの一環で放出された純正部品はどれも投げ売り状態で、その相場をさらに下回る価格で入手することができた。
赤いステッチは色褪せているものの、常に握られる右のレザー部分をはじめとする、表面部分の損傷は全く無い。しかもエアバッグは装着されておらず、交換や維持の観点からも非常に好都合な状態だった。
交換し、ステアリングハンドルの傷が無くなったことで、運転席周りのボロボロな印象は随分と低減する。
ただし、毎日の運用でハンドルが握られ続けることから、いつかは再び傷んでくるだろうと予想していた。交換から年数が経過するにつれて表面の傷が目立ち始め、2020年。10年前に外したステアリングハンドルに近い状態になり始めていることに気づいた。
握られることが多い右側。外周部分の表皮は擦り傷が増えていき、一部ではレザー内側のベース部分までが見え始めている。
ストレスが少ないはずの左側では、パンチングレザー部分が欠けている。こちらも中身のベース部分が見えている。
初代ステアリングハンドルは、2007年に納車された時点で傷物だった。登録から9年少々で傷んでおり、この二代目ステアリングハンドルも10年でダメージが目に見えて増えた。毎日運用のストレスの影響を含めると、純正ステアリングハンドルはだいたい10年で表面が摩耗してしまうようだ。
リペア業者に依頼する
中古部品ですら高騰している現状、中古のステアリングハンドルを追加入手することは非現実的。しかも流通している純正ステアリングハンドルは、エアバッグがセットになったものが殆ど。エアバッグのリコールがある中で、必ず余ってしまう未改修のエアバッグを保管し続けることは厄介でしかない。
長らくR32スカイラインを維持している人からは、ステアリングをリペアしてリフレッシュする方法があり、専門業者も存在していると教えられていた。よって今回は、このリペアで対処する。傷んだステアリングハンドルをリペアの専門業者へ依頼することにした。
まずはリペアを依頼するステアリングハンドルの現状把握から。
リペア用のステアリングハンドルは2007年に取り外し、長らくクローゼットでホコリを被っていた初代とする。内周のパンチングレザーが大きくすり減っており、握ると当該部分は陥没しているような感触もある。赤ステッチの毛羽立ちと色褪せもある。
3本のスポークで、下に向かう部分。ここでもパンチングレザーが剥がれており、まるで日焼け後の表皮がペリペリと剥がれていくような状況。
次にリペア業者を探す。検索で見つけたのがCAR WASH SERVICE 888
という北海道の業者で、まずWebサイトのデザインが2000年代初期のテキストベースのデザインを保ち続けていることが気に入った。掲載されている施工例の多さが判断材料になり、各種オプションも揃っている点が興味を惹かれる。
メールで問い合わせてみると、その日中に返信メールが着信。かなりのスピードでリペア内容が決まっていく。予め、こちらから提示した依頼内容は以下の3点。
●内周のパンチングレザーと外周の標準レザーという、純正仕様のデザインを保つ。
●ステッチのカラーは赤で、これも純正仕様。
●ステッチの縫い方は一目飛びかがり縫い(ヨーロピアンタイプ)。
その後の返信メールには詳細が記載されており、ここからさらにリペア方法を詰めていく。
外周部分のレザーについては、『標準タイプ』と『ハイクラスタイプ』の二つが提示される。常に手に触れる部分だけに、より上質な仕上がりとしたいので、ハイクラスタイプに変更。
内周のパンチングレザー部分では、純正では左右スポークの上の部分が貼り合わせのみとなっているが、ここも一目飛びかがり仕上げではどうか?という提案があった。この部分の耐久性が上がるならばと、縫い目を追加する仕上げに変更してもらう。
修復完了!
納期は3週間強程度となっており、北海道への輸送日数、料金の振り込みと確認、CAR WASH SERVICE 888からの返送タイミングを含めると、実際は一ヶ月の期間となっていた。こうしてステアリングハンドルが戻ってきて、いよいよ修復された状況をチェックすることになった。
「すんげぇキレイ!」レザーは外周、内周共に張り替えられているので、触り心地は新品。修復前のくたびれて、硬くなった感触とは全く異なり、革製品特有の柔らかさとスベスベ感がある。
鮮やかな赤色のステッチになり、一目飛びかがり縫いとしたものだから、強烈な存在感に変わる。左右スポークの上の部分を含めて、ステッチが一周している印象になるので非常に派手になる。タイプRらしさが増す。
常に視界に入ることになる、表面の仕上がりは完璧。対し、裏側はどうか。
3本スポークの下側の裏面。貼り合わせで接着されており、純正状態でもこのような仕上げになっている。使っているうちに縁部分から剥がれないだろうか?と真っ先に心配し、縁に触れてみると早くも剥がれそうな感触がある。ひとまず瞬間接着剤を流し込んで補強する。
左右のスポークの裏面についても純正品と同じ仕上げになっており、やはり貼り合わせで接着されている。握ると指先が常に当たり続けることで、剥がれやすくなる可能性がある。ここも追加で接着剤を流し込んでおく。
真っ先に思いついた改善案。外周部分のレザーでは中央に縫い目があることを利用し、パンチングレザー部分も中央の縫い目に沿うようにカットする。そして黄色い線で示したように、外周部分の縫い目と一体になるよう、ステッチを追加加工する。
左右のスポーク部分の改善案。パンチングレザーの切り出し方はそのまま活かし、縁に沿ってかがり縫いを施してもらう。ステッチのカラーは赤や黄色といった目立つ色ではなく、素材の色に近い黒あたりが適切かもしれない。
改善したい内容が思いついたところだが、仕上がりとしては想像していた以上のもの。正直なところ、使ってまたボロボロになっていくのが惜しいくらい。車体が傷んでいる印象は、目につくところの傷が大きく関わってくる。よって傷んだものを使うよりも、このリフレッシュされて美しくなったステアリングハンドルに交換して、もう一度車内の印象を明るくほうがいい。
ステアリングハンドルを交換する
ステアリングハンドルの交換方法について。車体とステアリングハンドルを直進状態に保っておく。最初にバッテリーのマイナス端子を外し、エアバッグの誤動作防止措置を行う。回路内には電気が残っているので、放電されるまで3分以上は待つ。
エアバッグを取り外す。赤丸で示したトルクスボルト(T30)2本で装着されており、写真上の左側だけでなく反対側…右側にもある。このボルトにはネジロック剤が塗布されており、マイナスドライバー等の指定外工具で無理やり外そうとしないこと。ネジ頭が潰れてしまい、非常に面倒な対処を強いられる可能性がある。また、黄色矢印で示したメンテナンスリッドを外しておく。マジックテープで取り付けられている。
エアバッグに接続されているハーネスを外す。ここでは慣性ロック式カプラと呼ばれるタイプが使用されており、赤丸で囲ったカバーインシュレータを矢印の方向へ引きながら、白丸のピン側インシュレータを引くと接続が外れる。
接続は、ピン側インシュレータをソケットに強く押し付けることで、カバーインシュレーターがロックピンを乗り越える勢い(=慣性)を利用し、確実に接続されるようになっている。不嵌合を防止するための工夫の一つとなっているそうだ。
外したエアバッグは、必ずパッド面を上に向けておく。パッド面を下にしておくと、暴発したときに飛び上がる危険性があり、上空数メートルレベルで舞う
。作業中の車内ではなく、少し離れたところに置いておくのがベスト(写真はS15シルビアでのステアリングハンドル交換時の例)。
黄色丸で囲ったホーンスイッチのカプラは、赤い端子を引けば外すことができる。残りは赤丸のセンターボルト。緩めるだけで、ボルトはまだ外さない。ステアリングハンドルとコラムシャフトは固着しており、ボルトがないまま強く引っ張ると、不意に外れて体勢を崩し、ケガや内装を傷める可能性がある。
ボルトを残したままにすることで、ステアリングハンドルを強く引っ張ってコラムシャフトから抜けても、ボルトに引っかかってワンクッションを置くことができる。
ボロボロになったステアリングハンドル、リフレッシュしたステアリングハンドルは共に純正品なので、軸のセンター位置がズレる、スプラインの噛み合わせが悪いといった不具合はない。センターボルトの締め付けトルクは39N・m(4.0kgf・m)、エアバッグのトルクスボルトは9.8N・m(1.0kgf・m)となる。
交換後。傷のないステアリングハンドルで、周辺の印象が激変。エアバッグやホーンのスイッチは古びたままなので、新品のレザー部分との差がハッキリしているが、張り替えによるリフレッシュ効果を強調することにもなり、むしろ好都合。
〆
気になる費用は基本料金やオプションを含め、税込みで38,500円。ここに北海道までの往復送料を追加した場合、40,000円をオーバーする。純正品はいえMOMO製のステアリングハンドルで、しかもリコール処置済みのエアバッグ付きという、ある意味では貴重な部品。そこに使い慣れているとなれば、この先もまだまだ運用が続く以上、費用は完全に度外視してリフレッシュを依頼した。
戻ってきたステアリングハンドルを見せたところ、「完全にマ・クベ。これはいいものだ」とのこと。握った時の感触、ステッチの色具合が想像以上だったようだ。傷んだステアリングハンドルと比べたことで、損傷具合を再認識させられることになった。
難点は、リペアに3週間、輸送日数を含めると一ヶ月近くの期間を要するところ。初代ステアリングハンドルを捨てずに持ち続けていたことで、毎日の運用には影響が無かった。通常は現車のステアリングハンドルを外し、リペアを依頼すると思われ、こうなると車を一切動かすことはできなくなる。まさかロシア人のように、スパナで運転する
わけにはいかない。
将来乗り換えて長い運用を経て、再びリペアを依頼する場面になった場合は、表面だけでなく裏面の加工もしっかりと詰めていきたい。実態はワンオフ加工そのものなので、仕上げパターンはいくらでも存在する。
走行距離:318,758km