去年あたりから、エンジンキーの操作に対する反応が悪くなっている。0(OFF)からI(ACC)にしても、電装系が立ち上がらないことがあった。キーを0(OFF)とII(ON)を何度か往復させ、改めてI(ACC)に回すと、ようやく起動する。この症状は毎回ではなく、忘れたころに突然起きるから困りもの。

エンジンが始動しないこともあった。このときも慌てずに一旦0(OFF)に戻しておき、ゆっくりとIII(START)に回していくと、無事にエンジンが始動する。

エンジンキーを何度か動かして、ようやく電源が入る場合は、スイッチの接触不良が起きているときの典型的な動きだ。そこでイグニッションスイッチを交換し、様子を見ることになったのだが。

イグニッションキー部のパーツ図

EK9シビックタイプRについては、イグニッションスイッチ単体での供給はなく、図中2番、もしくは1番のようにASSYのみ。図をよく見ると分かるように、どちらを注文しようとASSYなので、新しいキーも付属してくる。

図面上では29番に、ハーネスからスイッチ、クリップ二つがセットになったものが描かれているが、選択しようとすると『該当部品なし』としてエラーが出る。

35100-S04-921 ロックASSY.,ステアリング

こうしてやってきた、図中2番のステアリングロックASSY。現車のキーは活かしたままにするため、ステアリングロック(キーシリンダー)部は使わず、イグニッションスイッチ部分だけを使う。使わずに残った部分は、セキュリティの絡みもあるため、分散廃棄となった。


2.  35100-S04-921  ロックASSY.,ステアリング  15,984円 ※1  1個
※1 2015年12月価格

結果として、15,000円もの超高価なスイッチとなった。車種によってはスイッチ部分だけの部品設定があり、そのことを逆手に利用して、EK9へ流用して交換する…という方法も考えられる。当然、ケーブルの許容電流やコネクタの違いといった諸問題を全てクリアする必要性があるが。

交換

回路構成上、バッテリーの電圧が直接掛かる部分となっているため、ショート防止のためにバッテリーのマイナス端子を外す。

ステアリングコラムカバーの固定ネジ

赤丸のネジを外し、ステアリングコラムカバーを外す。カバーは上下で分かれるが、上側カバーはツメによって下側カバーに装着されているだけで、ツメはプラスチックの経年劣化の影響で割れやすい。

インストルメントドライバーロアーカバーを外す

同時に、運転席側足元のカバーを外す。固定ネジは赤丸部分にあり、残るは青枠の裏側にある3ヶ所のクリップとなる。カバー裏側には電動格納ミラー用のハーネス、未使用ながらオートエアコン用温度センサー用のカプラーが装着されているので、勢い良く引っ張って、断線しないように注意。

早くもイグニッションスイッチが見えてくる。いきなり外す前に、スイッチのハーネスがどこを通っているか再確認する。ハーネスを固定するクリップは二つ、簡単に外すことができる。

イグニッションスイッチ

赤丸のネジを外すと、ステアリングロック部からイグニッションスイッチが外れる。そのまま反対側、今度はエンジンキーの差込口側の作業を行う。

キー抜き忘れ警報音用スイッチ

エンジンキーの差込口側にもスイッチがある。エンジンキーを差して0(OFF)のときにドアを開くと、ピピピピッピピピピッと目覚まし時計のような警報音が鳴るスイッチがこれ。赤丸の小さなネジで装着されている。

コネクタその1

イグニッションスイッチからのハーネスを辿っていき、一つめのコネクタを外す。ダッシュボード内フレームにセットされている。

コネクタその2

二つめのコネクタは、ヒューズボックスに接続されている。これでイグニッションスイッチを車体から外すことができる。

■   ■   ■

ハーネスの取り外し作業を行う前に、バッテリーを元に戻し、イグニッションスイッチにマイナスドライバーを突っ込んで回してみると、エンジンが始動した。

ガッチリ固定されているように見えるステアリングロックASSYについても、実はペンチ一本で外せてしまう弱々しいもの。つまり、賊が車内へ侵入し、ステアリングロックASSYを外して、イグニッションスイッチを操作された場合、簡単に車を持ち出されてしまうということ。

撮影しながら、ここまで20分程度の作業時間だ。過去に行ったステアリングロックASSYの取り外しは、1分少々しか要していないことから、車内に侵入された場合、その気になれば3分も掛からずに走り出すことができる。古い設計ゆえに仕方ないとはいえ、あまりに簡素過ぎるロック構造は、非常に恐ろしいものがある。

■   ■   ■

新しいイグニッションスイッチ

これから装着する新たらしいイグニッションスイッチは、27.10.1という捺印があった。平成27年10月1日製造と思われる。購入したのが平成27年(2015年)12月なので、メーカー側での在庫期間は短かったようだ。

イグニッションスイッチを装着

既存のステアリングロックに、新しいイグニッションスイッチを装着したところ。カバー類を装着する前にI(ACC)、II(ON)、III(START)の各位置が正常に機能するかチェックを行い、異常が無ければ外していたカバーを元通りセットしていく。

分解調査

取り外したイグニッションスイッチは、廃棄する前に分解調査だ。接触不良を予感させる、明らかな異常は見つかるだろうか。

古いイグニッションスイッチ

古いイグニッションスイッチの捺印を見る。一部の数字が消えているが、初度登録年月からして1998年4月14日製造と思われる。満21年に達する前に、区切りを迎えた。

分解したイグニッションスイッチ

分解して、スイッチの内部点検に続く。右の白いケースの内側には、黒い煤状の汚れが蓄積していた。左の黒いベース部分もかなり酷いように見えるが、その殆どが接点グリスによる汚れだ。

白いケース内面

白いケースの、接点部分の様子。外周にある大きなリング状の接点は、バッテリーからの電圧が直接掛かり、セルモーターのマグネットスイッチへ向かうようになっている。数十アンペアオーダーの大電流が流れる部分だけに、火花が散っていた痕跡がある。打ち抜きの金属で大電流用のスイッチとする構造は、古い時代のホンダ車に共通する構造のようだ。

以前、セルモーターを交換した際link、リビルト会社の担当者から「イグニッションスイッチの不良で、セルモーターのマグネットスイッチが焼損する事例がある」と言われており、エンジンが始動しないことがあった理由として、やはり接触不良が関係していると考えられる。

一段高い内周の接点は、主にアクセサリー系。こちらも接点が黒くなっていて、I(ACC)にしても電装系が動かなかった原因は、やはり接触不良だったようだ。

黒いベース側のアップ

こちらは黒いベース側。汚れた接点グリスを拭き取って、各接続部をチェックする。摩耗があり、銅を思わせる地が露出しているが、大きなえぐれやプラスチック部が溶けるといった、大ダメージは見つからなかった。摩耗が片方に集中していることから、エンジンの始動後にIII(START)からII(ON)へ、もしくはエンジンを止めようとして0(OFF)側へエンジンキーを回すときに、最も摩耗しやすいようだ。

大電流が流れるイグニッションスイッチを20年以上も操作し続ければ、応じてストレスも溜まる。それが接触不良というかたちで、エンジンキーの操作に反応しない症状が出始めていた。当たり前だが、交換後は電源が入らないという症状は出ていない。20年に渡って使えたことから、廃車まで耐えられるだろう。

エンジンキーの各ポジションにおけるガチャンッという感触は、イグニッションスイッチ内部にある鋼球とスプリングによるもので、経年で滑りが悪くなるようだ。新品は潤滑剤が新鮮なので、エンジンキーの回し心地が軽く、感触が良くなった。

走行距離:283,007km

Post