車が使う電気は12Vのバッテリー、エンジンが回転中であればオルタネーターから供給される。そこで気になったのが、どれくらいの電流となっているのか。クランプメーターという、ケーブルを通せば電流測定ができる機器を使って、実際の状況を調べてみることにした。
トラスコ中山のプライベートブランドで発売されている、TRUSCO AC/DCクランプメーター TC-03を使用した。同一品がモノタロウやカスタムから販売されており、実売価格はどれも一万円と少々となっている。
クランプ部分を開き、測定したい部分のケーブルを1本だけ通し、液晶画面に表示される数値を読み取るだけで測定ができる。
測定はプラス側からマイナス側に向かう直流を測定するので、クランプ部分のプラス表記か矢印表記を見て向きを正しくする。逆向きにケーブルを通す、もしくは電気が逆流している場合、測定数値はマイナス表示となる。
車での電流測定は、エンジンは完全に暖機が終わってアイドリングが安定していること、バッテリーは充電されていることといった細かい条件があったりする。各車のサービスマニュアルを参考にして、測定条件を整えておく。
測定部分を決める
クランプメーターを通す部分は、リレーボックスに繋がる2本のケーブルとした。
試しにクランプを通すと、すぐに3Aと数値が表示された。ここで電流を測る。
リレーボックス内の接続先。T-1端子はバッテリーに繋がっており、充電と放電では電流の向きが変わってくる。オルタネーターのB端子(T-102)から出たケーブルはT-101端子に接続され、車が必要とする電力は全てここから供給される。
1.バッテリー充電時の回路構成は…
オルタネーターB端子からT-101端子→80Aヒューズ→T-1端子→バッテリープラス端子→アースとなる。
2.バッテリー放電時の回路構成は…
バッテリープラス端子→T-1端子→80Aヒューズ→各装置→アースとなる。
エンジン動作状態で測定
クランプメーターにT-101端子側のケーブルを通す。エンジンが回転している状態で、ヘッドライト(ハイビーム)を点灯、リアデフロスタON、ブロアモーターをMAX、エアコンON、ドラレコとETCを含めたナビ(オーディオ)を動作させ、電気負荷が高まるよう設定してみる。
55.5Aと表示されている。ラジエターやコンデンサの電動ファンの回転状態によっても電流値は大きく変わり、常に変化し続けるのでなかなか撮影しにくい。
ウィンカーの動作やブレーキペダルを踏むと、これまた数アンペアレベルで数値が瞬時に変わる。ワイパーを動かしていないので、さらに電流値を増やす余地は残っていたりする。
エンジンの回転数を上げていくと、応じて電流は増えていく。参考値としてEKシビックのB型エンジン搭載車は45A以上が判定ラインなので、オルタネーターの発電状況は良好と判断できる。ちなみに電気負荷が高く、エンジンがアイドリングのときはバッテリーはどうなっているかといえば。
マイナス表示が出て、-1~-3Aで振れていた。バッテリーから電力が供給されており、充電されるどころか放電している状態を示している。
夏になるとバッテリーがダメになりやすい理由はここにある。電気負荷が高い状態で渋滞にハマることを繰り返し、ちょい乗りがメインになっていると、バッテリーは充電されずに放電される一方となってしまう。ときどき長時間の連続運転をするといいとアドバイスが出る背景には、エンジンの調子を維持するだけでなく、バッテリーの充電も行う意味も含まれてくる。
アポロ13号の電力節約工程の如く、電気負荷を順次減らしていき、最終的にナビ系だけが動作している状態に戻していく。
11.3Aとなった。エンジンの動作に必要な電装系を動かし、さらにブレーキやエアバッグの機能維持で、だいたい10A以上は流れているようだ。
バッテリーへの充電電流を測定
続いてバッテリーの充電電流をチェックするため、クランプメーターにT-1端子側のケーブルを通す。
アイドリング状態では、僅か0.5Aしか電流が流れていない。世間でよく見られる「アイドリング状態ではバッテリーは充電されない」との記述に近くなる。エンジンの回転数を上げても電流は増えることなく、1A未満を保っていた。
電気負荷を少しずつ高めてやると、アイドリング状態でも充電がスタートする。
充電電流が13.3Aになった瞬間もあった。エンジン始動直後等、バッテリーに充電されている電力を大きく使って電圧が落ちた場合、かなりの充電電流が流れるようだ。
バッテリーが満充電に近ければ充電されず、放電した電力に応じて補充電される定電圧充電方式の一種。その他、電気負荷に応じて、オルタネーターの発電電圧を切り替える制御も行っている。20年以上前の車ながらも、既に充電制御システムを装備していたことが分かる。
バッテリーの放電電流を測定
エンジンを止めた状態で、イグニッションキースイッチをI(ACC)、II(ON)にしたときの電流を測定する。
キーをI(ACC)に回す。ナビの起動プロセスがスタートし、ドラレコやETCが正常に認識され、完全に立ち上がるまで待つ。
ナビの画面がマップ表示になり、落ち着いたタイミングになると3.3Aとなった。使用しているバッテリー(Panasonic caos N-60B19R/C7)の5時間率容量は36Ahとなるので、12時間で充電されている電力は完全に尽きてしまう。バッテリーはフル充電で温度環境も良く、ロスもないという実態から大きく外れた机上計算なので、使える時間はより短くなることに注意。
キーをII(ON)へ回すが、エンジンは始動させない。エンジンの制御系をはじめ、全ての電装系に通電が開始され、始動準備が整う。
5.4Aに上昇。燃料ポンプが一瞬動いたタイミングでは、さらに高い数値が表示されていた。各コンピュータがスタンバイ状態であっても、かなりの電力を消費している印象を抱いた。
注意
撮影したクランプメーターは1秒間に3回表示が更新されるので、常に同じ数値を示しているわけではない。電装系装備の違い、各コンピュータで何かしらの演算イベントが起きたり、クランプメーターの位置を動かしただけで、数値は大きく異なってくる。オルタネーターやバッテリーのコンディションによっても大きく左右されることから、ここで取り上げたクランプメーターの表示は絶対に参考にしないこと。
〆
電流が数値として見えるのが面白く、動作している機器に応じて大きく変化する様子はけっこうな驚きがあった。例えば、テールランプやウィンカーも小さなランプながら数が多いためか、けっこうな電力食いだ。イマ車のランプ類がLED化している背景は、デザインの都合だけでなく、消費電力を抑えて低燃費化に寄与することも含まれているそうな。