長期運用と欠品に備えて各ゴム部品を揃えているところだが、保管中でもゴムの劣化そのものは抑えることができない。ゴムは酸素(オゾン)や紫外線、温度によって劣化してしまうので、これらの物質から如何に遠ざけることができるかが、保管における鮮度のカギを握る。
例としてB16Bエンジンに使われている、冷却水用のゴムホース。冷却水用のゴムホースというと、ラジエターと接続されるアッパーホース、ロアホースが思い浮かぶが、これら小さいホースもあちこちに使われている。
こういったゴム部品を将来使うときに、既に劣化しており、使用開始後に短時間でダメになった…というようでは、なんのためにストックし続けていたのか分からなくなってしまう。そこで保管中には劣化しないよう、手段を講じることになる。
各劣化物質から部品を守るには
温度、紫外線については、適当なストックケースを用意して、クローゼットや扉のある棚に放り込んでおけば暗所保管となる。酸素(オゾン)はアルミ袋を使うことで、遮断することができる。
身近なものではレトルトカレーのアルミ袋で、プラスチックフィルムをベースにアルミ箔を組み合わせている。このアルミ袋は空気(酸素やオゾン)、水分、光(紫外線)を遮断して内部のカレーを密封することで、長期保存が可能になっている。
しかも、遮光性がある袋を使った食品にのみ「レトルトパウチ食品」と表記できるそうで、アルミ袋としては高性能だろう。しかし、 加齢臭 カレー臭のするアルミ袋を洗ってまでゴム部品のストックに使うとは、どう考えてもスマートではない。開封したらカレーのニオイがするゴムパーツというのも、異様でしかない。
アルミ袋を集めてみる
食品に限らず、長期保管中の劣化を考慮するならば、アルミ袋で密封することが望ましいと捉えることができる。この特性から、市販されている飴玉のアルミ袋を使って、ゴム部品のストックを実践しているレポート
が公開されていて、参考事例として大いに活かせる。
このレポートのとおりに、まずは飴玉のアルミ袋をチェックしてみた。職場で、息抜き用に振舞ってくれる飴玉の袋をいただいたもの。タイミングよくコーヒー粉の袋も出てきたので、こちらもサンプルになる。まずは左側、栄養管理士推奨とされる珈琲茶館という商品名の飴玉アルミ袋。内部を見てみると。
アルミ袋としては完璧だが、あちこちに傷が入っていた。工場で飴玉が収められて一括運搬、店舗で陳列されて販売、購入後の持ち運び…と移動の度に袋へのストレスが掛かり、こうして傷になってしまうようだ。長期保管の観点では、こういった傷から空気(酸素)が入ってくるので、使用には向かない。
次に中央、青いソーダキャンディー。透明なプラスチック部分が存在し、向こう側が見えることから、完全なアルミ袋ではないため使用不可能と判断した。
ではコーヒー粉の袋はどうか。酸素に弱いコーヒーだけに、アルミ袋もしっかりしたものと思っていたら、透明部分があった。意外とヤワな構造に驚きがあり、ついでにコーヒーの香りが強く、この点でも使うことはできない。
コーヒーの袋は、コーヒーが発する二酸化炭素で袋が必要以上に膨張しないよう、空気穴が開けられていることが多い。空気穴部分まで袋を短くすると、今度は全長が短くなってしまう。
以上、食品用のアルミ袋を調査してきたが、ゴム部品の長期保管用としては再利用しにくいことが分かった。先の飴玉レポートにも書いてあるとおり、はじめからラミジップというアルミ袋を使ったほうがよさそう。ラミジップを手配後、改めてチェックすることになった。
ラミジップで密封、長期保管に向けて
購入したラミジップはAL-Gでチャック付き。チャック下200mm、袋巾140mmで50枚入り。1,700円程度。
袋巾140mmにゴム部品と脱酸素剤を詰めると、袋が膨らむことによって幅はより短くなることから、実際はOリングや細いホースといったの小さなゴム部品しか入らない。サスアームのブッシュ、ホース類を保管するとなれば、十分に余裕のあるサイズをチョイスする必要がある。
長期保管のサンプル品は、ブリーザーチャンバー用のゴムホース、11856-P30-000 チューブB,PCVとした。複数本のストックがあるので、EK9の運用が終わった後も追跡調査用として廃棄せず、保管し続ける予定。
手前の使い捨てカイロはサイズ比較用ではなく、脱酸素剤の代用。先の飴玉レポートでの脱酸素方法をそのまま踏襲した。エージレスで有名な脱酸素剤は、手早くセッティングしないと大気中の酸素を吸ってしまうし、入手性を考えれば使い捨てカイロが有利。
密封用ヒートシーラーについて
袋を密封するヒートシーラーは数多く発売され、100円ショップでも電池式タイプが売られているらしい。ただしアルミ袋を密封するとなれば、熱伝導の都合からそれなりの性能が必要のようだ。
普段は職場の業務用大出力シーラーを使っていて、分厚い袋を片っ端からシールしており、アルミ袋も問題なくシールする。しかし業務用で高価、かつ巨大なシーラーを家で使うにはオーバースペックでしかない。数ある製品から、アルミ袋が使えて安価、台所でも使えそうな機種を探す。
SHIELD LITE DS90なるヒートシーラーを選んだ。キャッシュレスのポイント還元でカバーできて、不満があれば躊躇せず捨てられる価格だったため。ここで取り上げたのだから、結果としてはアルミ袋のシールが可能だ。
消費電力等を記載したステッカー。よく見ると『圧』と『費』が中国語なので、実態は中華製品そのもの。一応PSEマークが入っているので、モノとしては法律と規制の範囲内に収まっていると判断するしかない。
ヒーターの出力は調整できず一定で、圧着時間でシール具合を調整する。SHIELD LITE DS90でラミジップをシールする場合、最長の9に設定、加熱は2回行うとしっかり密着するようだ。
いきなりゴム部品をシールするのではなく、空袋を使って何度か練習して加熱時間の調整、シール具合をチェックする。空袋をシールしたら、水を入れてみて漏れがないか。これで感覚が掴めると思われる。
実際にシール、長期保管スタート
ラミジップにパッケージに包まれた状態のゴムホースを入れて、次に脱酸素剤代わりのカイロを入れる。カイロを包んでいる袋は酸素を通さないので、通気用の穴を少し開けて袋内部の酸素を吸えるようにする。
カイロの袋の隅を切り、通気口とする。カイロを袋から出して使わない理由は、少しずつ酸素を吸わせることで、急激な温度上昇を抑え、脱酸素剤としての寿命を考慮したためだろうか。地球上の空気は8割が窒素なので、密封されたアルミ袋内の酸素を吸い尽くしたら、自然と窒素封入状態での保存となる。酸化防止と不活性化が両立する。
もたもたしているとカイロの発熱が始まるので、ゴム部品とカイロをアルミ袋に詰めたら、素早くヒートシールを行う。2回の加熱を行ったことで、溶着範囲が広がっている様子。
ゴム部品が密封された。開封するときは袋上部のチャック部分からとなり、すぐに使うことができる。見た目はレトルト食品そのもの。珈琲茶館の袋のダメージ状況から、アルミ袋を傷つけないように安定した暗所に保管することが必須となる。
アルミ袋に包まれてしまえば、部品の形状や部品番号が分からなくなるので最低限、部品番号は表記しておく。テプラを使ってみたが、業務用を思わせる印象になって、これはこれで悪くはない。燃圧レギュレーターは、長期保管用のサンプルとして封入した。
メーカーで在庫されているゴム部品は、空調が効いて恵まれた環境で保管されている。一方、各個人の素人保管となれば、ゴム部品には不利な環境となってしまう。旧い車のゴム部品がいつでも購入できれば、保存中の劣化問題もなくなるだろうが、現実的にはそうもいかない。
数年レベルの保管なら、大気中の暗所保管でもOK。現車で使われているゴムホースが、現時点で22年を超えている箇所がいくつもあるためだ。二桁年レベルの保管を考え、なるべく鮮度は維持したいとなれば、ちょっとした工夫が必要になってくる。