2013年3月(172,000km少々)、ブローバイガス等の汚れをチェックするため、スロットルバルブを取り外している。このときには、バタフライバルブの裏側を含めて黒い汚れは多くは付着していなかった。

やはりホンダのエンジンだ、過走行状態においても抜群のコンディションを保っているぞ!と関心しながら改めてよく見ると、バタフライバルブの周囲に黒いリング状の筋があった。汚れじゃあるまいな?と触れてみるとポロポロ落ちていく。ワケも分からずにすっかり落としてしまい、これがバタフライバルブの密着状態を保つ、モリブデンコートだったことを後々知る。

モリブデンコートがない状態ではバルブが全閉にならないので、二次エアを吸ってしまい、アイドリングが不安定になって回転数が上下するハンチングや、アイドリング時の回転が普段とは違うという症状が出ることがある。

モリブデンコートを失った結果、目に見える不調といえば、エンジンブレーキを使ったとき。エンジンブレーキを使用すると、負圧は-75kPaを一瞬越えるが、すぐにアイドリング時の数値(-71~73kPa)に戻るようになった。負圧を正常に維持できないと、減速力が弱くなり、ブローバイガスの処理系統も機能しなくなる。

原因はモリブデンコートが無いことによる、二次エアの吸い込みかもしれない…と予測が立ったことから、洗浄、モリブデンコートの再塗布を行うことになった。

剥がしたモリブデンコート

剥がしたモリブデンコートの例。赤い丸で囲った右側の部分はモリブデンコートがわずかに残っているが、それ以外の部分は剥がしてしまい、失われた。本来はモリブデンコートがあった部分なので、周囲と比べても金色の輝き具合がはっきりと異なっていた。

バルブの隙間

モリブデンコートが無くなり、バタフライバルブとスロットルボディのボア内に生じた隙間。全周に渡って隙間が生じているので、スロットルが全閉状態となっていても、実際は空気がどんどん吸われている。

スロットルが閉じていると信号を受けても、吸気圧力が変わっている以上、応じて燃料の噴射量が変化し、燃焼状態も変わる可能性がある。EACVによる制御があっても、予定外の場所から空気を吸えば、アイドリングも安定しなくなってしまう。

スロットルボディの取り外し

スロットルボディの脱着は、冷却水のホースにアクセスする必要があるため、冷却水が完全に冷えて圧力が掛かっていないことが大前提となる。そして作業性を向上するため、フロントタワーバーも取り外しておく。

ホースとコネクタ

黄色のコネクタは、吸気圧力を計測するマップセンサーに接続するハーネスのコネクタ。赤色のバンドクリップは、チャコールキャニスターとスロットルボディを接続しているホースの固定用。ハーネスとホースをそれぞれ外す。

スロットルワイヤーのブラケット

スロットルワイヤーを外す際は、ケーブルの調整具合を変えないために、サージタンク部に設けられているワイヤーブラケットから外す。スロットルワイヤーは、スロットルバルブに巻きつくようにして取り付いているので、強引に外す等して折り曲げ等のダメージを与えないように注意する。

続いて地味に難易度の高い、エアフロチューブの取り外し。エアフロチューブをグニグニと曲げながら外すことになるためで、経年でジャバラ部分がヒビ割れてしまう恐れがあり、注意が必要。厄介なことに、2018年7月の調査では新品は出ないようだ。

エアフロチューブの固定位置

まずエアフロチューブに繋がる、黄丸のブローバイガスパイプを外す。次にエアフロチューブをスロットルボディに固定している、赤丸のバンドねじを緩めておく。なお、エアクリーナーボックス側はスプリングバンドで軽く締められているだけで、特に緩める作業はなし。

オレンジ色の矢印部分にチャコールキャニスターからの細いホースがくくり付けられているので、忘れずに外す。

これでエアフロチューブを取り外す準備ができたが、注意点はまだある。

サイドブランチチューブとブレーキ配管が近い

赤枠で囲ったように、エアフロチューブからぶら下がっているサイドブランチチューブが、ブレーキマスターシリンダーからの伸びるブレーキパイプのすぐ横に位置している。エアフロチューブは固着気味だったりするので、強く引っ張ったり押した勢いで、金属製のブレーキパイプを曲げたり折ったりしないよう、慎重に取り外すこと。

スロットルポジションセンサー

スロットルポジションセンサーのコネクタを外す。ここも配管が多く、周囲へのダメージや手の負傷に注意。

冷却水ホースと下部固定ボルトとナット

いよいよ冷却水ホースの取り外し。黄色のバンドクリップを緩めてズラし、スロットルボディに接続するホースを取り外す。このとき、冷却水が少々出てくるが、外したホースをなるべく高い位置まで上げておくと、流出は止まる。冷却水のホースが外せたら、インマニサージタンクからスロットルボディを外し、赤色の丸のボルトとナットを外す。

上部固定ボルトとナット

スロットルボディの上にある、固定用のボルトとナットを外す。

取り外し完了

これでスロットルボディを取り外すことができた。スロットルボディとインマニサージタンクの間にガスケットは紙製で、ブローバイガス等の汚れで貼りついていることが多く、無理に剥がすと毛羽立ったり破れることも。高い部品ではないので、使い捨て感覚で交換するのがベスト。

組み立ては逆の手順となる。スロットルボディの固定ボルト及び固定ナットの締め付けトルクは、22N・m(2.2kgf・m)となる。ちなみに、冷却水のホースを脱着したことで冷却水の流出と空気が混入することになるが、冷却水は水道水の少量補充で間に合い、空気もリザーブタンクを通じて自然と排出されるので、エア抜きは行っていない。

スロットルボディの洗浄

バタフライバルブの裏側

真っ先に確認したのが、バタフライバルブの裏側。バタフライバルブに沿うようにして空気が流れるので、ブローバイガスが多ければ、この面が激しく汚れていく。

172,000km少々の時点で一旦清掃しているが、それから52,000km少々乗ってこの程度の汚れ方なので、ブローバイガスの増加=ピストンとシリンダーのクリアランス拡大、いわゆるオイル上がりといった、明らかな経年摩耗の症状は出ていないことが分かる。レポート冒頭の写真で示したように、バタフライバルブとスロットルボディの間には、目に見える隙間が発生していた。

バタフライバルブの表側

こちらはバタフライバルブの表側。バルブの上部がテカテカしてよく目立つ。チャコールキャニスターからのガソリン蒸気がココに当たり続けたことで、バルブ表面が変質したようだ。吸引される側なので、バタフライバルブとスロットルボディのボアの隙間に付着する汚れは、それほど多くは無い。

オイル汚れがほとんどなので、洗浄剤としてパーツクリーナーを使い、傷をつけないように柔らかいウェスで拭いていく。このとき、パーツクリーナーでマップセンサーを壊さないよう、忘れずに外しておく。アイドリング調整用スクリューは、後述の(点火時期も関わる)アイドリング調整作業を行いたくないなら触らないこと。

清掃完了その1

汚れを洗浄した裏側。残っている黒いスジは古いモリブデンコーティングで、がっちりと固着していた。これ以上深追いすると、スロットルボディに傷を入れてしまう恐れがあり、洗浄作業はここで止めた。

清掃完了その2

表側もできる限り洗浄する。ボア上部にある2つの小さな穴は、チャコールキャニスターからガソリン蒸気が吸引される部分。バタフライバルブ側(奥)の穴は汚れで完全に詰まっており、エアクリ側(手前)の穴も汚れが次々に出てきた。これでも大気汚染防止機能は生きていたが、汚れによる目詰まりを放置していたら、将来的にトラブルを誘発していたかもしれない。

東名パワード スロットルコートを塗布

失われたモリブデンコートを元に戻すため、東名パワードのスロットルコートを塗布する。二硫化モリブデンをベースにした乾燥潤滑剤で、バタフライバルブのシーリングに使える。この手のメンテナンスでは、頻繁に使われる有名なもの。

東名パワード スロットルコート

ニオイは嗅ぎ覚えがあり、工事現場での遭遇率が高い。キャップに付属している筆は大きすぎて使えたものではなく、別途プラモ用の細い筆を用意した。主成分の二硫化モリブデンは缶の底に固まって沈殿しており、振っても撹拌されない。そこでアイスの棒を使って、時間を掛けて満遍なくかき混ぜておく。混ぜるのを止めると再び缶の底に沈んでいくので、素早く塗らなければならない。

マスキング作業

バタフライバルブはマスキングしておき、モリブデンコートが余計な部分へ付着しないように防いでおく。実際に塗る部分は、バタフライバルブ、スロットルボディボア共々3mm程度を目安にする。

塗布終了

マスキングのおかげで、いくらか気楽な塗布作業になった。モリブデンコートはバタフライバルブを閉じたまま縁に沿って塗り、すぐに何度か開閉する。これで自然に、スロットルボディボアとの隙間をシールするように流れていく。ちなみに厚塗りすると、今度は固着気味になって開閉しづらくなるので、あっさり塗る程度で間に合うようだ。乾燥は早いほうだが、塗布後できるだけ一昼夜、乾燥させる必要があるとのこと。

マスキングを剥がす

乾燥したらマスキングを剥がして、出来栄えをチェックする。思った以上にキレイに塗れたようだ。この写真は太陽にかざして撮影しており、作業前にあったバタフライバルブとスロットルボディボアとの隙間が完全に埋められていることが分かる。開閉動作もスムーズで、引っかかるような感じは無い。

開閉動作を繰り返すと、残った塗料カスやバリが剥がれ落ちていく。ピンセット等を使って、手作業でも除去しておく。これで洗浄と、スロットルコートの塗布が終了。ここからは折り返しで、エンジンに取り付けるだけとなって、アイドリング調整を残すのみとなった。

使用部品

マップセンサーの固定ネジが固着しており、緩めようとした際に頭をナメてしまった。ついでにOリングは潰れて破損。アイドリング調整用スクリューは、Oリングに亀裂が入って気密性が確保できそうになかった。さらにエアクリーナーボックスとスロットルボディを繋ぐエアフロチューブに至っては、長年の熱と振動のストレスによりクラックが入って、これまた再使用は不可能だった。この程度の損傷は、もう仕方ないのかもしれない。

使用部品
1.  16016-P2M-A01  スクリューセット  496円  1個
3.  16075-P07-000  Oリング 9.8X1.9  162円  1個
7.  16080-P07-000  スクリューワッシャー 4X16  290円@145円  2個
8.  16176-P2T-004  ガスケット,スロットルボディ  410円  1個
10.  17228-P7J-000  チューブ,エアーフロー  3,380円  1個
26.  17315-P5K-000  クランプ,エアーフローチューブ  291円  1個

※1
16番(スプリングバンド)、24番(サイドブランチチューブ)、25番(クランプバンド)は再使用した。

アイドリングの調整

アイドリングの調整方法について。再調整時の状況によっては、点火時期の確認まで行わなければならず、こうなるとタイミングライトとSCSショートカプラが必要になるので注意。

アイドリング調整の前提条件として、エンジンを始動後暖気が終了、ラジエターファンが2回動作、さらに無負荷で3,000rpmで2分以上の暖機運転を行う。

EACVのカプラ

エアコン、デフロスター、ライト、オーディオなど電気系統の負荷がエンジンに掛かっていないことを確認。エンジンを止め、EACVに繋がるカプラを抜く。

そしてエンジンを再始動するが、エンジンが掛かりにくければ、アクセルを少し踏み込んで始動する。アイドリング回転数がストールしそうなほど極端に落ちてしまう場合は、アクセルを小刻みに踏みながら止めないようにする。

このとき、エンジンチェックランプが点灯したままになるが、これは『EACVのカプラが接続されていないことを検知した』という表示なので、気にせず作業を続行する。

アイドリング調整用スクリュー

スロットルボディのアイドリング調整用スクリューを回して、500+-50rpmに回転数を調整する。回転数は反時計周りで上がり、時計周りで落ちる。回転数がセットできたらエンジンを止めて、EACVのカプラーを接続する。

※エンジンに負荷が掛かって、回転が極端に下がった場合、点火時期が不安定になることがあるため、点火時期を確認する。基準値を外れる場合は、900rpm以上まで上げてからゆっくりと回転を下げ、正規の点火時期になっていることを確認し、アイドリング調整を再度行う。

バックアップヒューズ

先ほど、EACVのカプラを抜いたままエンジンを始動したことで、エンジンチェックランプが点灯しECUのメモリにトラブルとしての記録が残ってしまう。そこで、エンジンルーム内のヒューズボックスにあるバックアップヒューズ(7.5A)を10秒以上抜いて、ECUのメモリをリセットする。

いよいよエンジンを始動。暖気が完全に終わり、電気系統の負荷がエンジンに掛かっていないことを確認して60秒経過後、エンジン回転数が800+-50rpmになっていることを確認。ヘッドライトをON(ロービーム)にして60秒経過後、900+-50rpmになることを確認。最後にエアコンをONにし、コンプレッサーが作動した状態で60秒経過後、1,050+-50rpmになることを確認。ここまでのプロセスをこなし、アイドリング調整は終了となる。

※上記はB16Bエンジンでの数値であり、B16A、B18Cは調整回転数が異なるので注意。

作業を終えて、さっそく試運転。加速は全く問題なくスムーズで、レスポンスなど普段の使い心地は変わらなかった。

懸念材料のエンジンブレーキによる減速では、-80kPaというかなり低い数値を保っていて、数値のブレが落ち着いた。こんな数字は今まで見たことがなかったことから、スロットルバルブの隙間が閉じられ、正しい負圧が作り出せているようだ。エアフロチューブまで交換したことで、一部だけだが吸気系統が新品特有の美しさに戻り、見た目も良くなった。

エアコンの使用でも変化があり、コンプレッサーが動作すると、正しくアイドルアップするようになった。今まではアイドルアップせずに800rpmのままだったので、エンジンから苦しそうな音が鳴っていたが、それが無くなった。このことから、二次エアの吸い込みは悪影響が大きくばかり。

ガスケットさえあれば、スロットルボディの脱着はすぐに行えるので、今後もスロットルバルブの裏側やインマニサージタンク内のブローバイガスの状況はチェックし続けたい。

走行距離:225,033km

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